『みんなの恋愛映画100選』は、前作『みんなの映画100選』の続編として、恋愛をテーマにした名作映画100本を厳選した書籍です。イラストレーターの長場雄氏が描き下ろしたシンプルで魅力的な黒い線画による映画のワンシーンと、カルチャーライターの山瀬まゆみ氏、小川知子氏、中村志保氏が選んだ印象的なセリフおよびその解説から構成されています。
本書は、絵本のような視覚的な楽しさと、セリフの文脈を深掘りするテキストを融合させた形式が特徴で、恋愛映画の多様な側面（ロマンティック・コメディ、ドラマチックな恋、禁断の愛など）を網羅します。読者は、馴染みの作品の記憶を蘇らせたり、新たな恋愛映画を発見したりする機会を得られ、映画鑑賞のきっかけとなる一冊として位置づけられています。全体として、ライトな読み物ながら、恋愛の喜びや苦しみを再考させる文化的価値を有しています。
出版状況・体裁
本書はオークラ出版から2018年2月21日に刊行されました。ISBNは978-4-7755-2742-9で、定価は2,750円（税込）です。体裁は単行本（ハードカバー仕様）で、サイズは縦20.9cm×横14.8cm（A5判相当）、ページ数は197ページとなっています。カバー付きのソフトカバーに近い形式で、イラストを活かしたカラフルなレイアウトが採用され、背の綴じ糸はピンク色という視覚的な工夫が見られます。
出版状況としては、初版以降好評を博し、2024年時点で5刷を達成する重版を重ねています。これは前作の人気を引き継いだ結果であり、流通はAmazon、楽天ブックス、紀伊國屋書店などの主要書店およびオンラインストアで入手可能で、在庫は安定しています。関連書籍として、前作『みんなの映画100選』が存在し、シリーズとしての継続性が評価されています。
評判
本書の評判は全体的に良好で、Amazonでの評価は4.4点（5点満点、20件のレビュー）であり、読書メーターやブクログなどのレビューサイトでも肯定的な意見が多数を占めています。読者からは「恋愛映画のセリフとイラストが絶妙で、観たくなる」「解説が軽快で初心者にもおすすめ」「長場雄氏の描き下ろしイラストが新鮮」との声が多く、視覚的な魅力とセリフの選出が評価されています。一方で、「解説が短めで深みが欲しい」「定番映画中心で意外性が少ない」といった指摘も一部にあり、多様な読者層に応じきれない点が挙げられます。X（旧Twitter）では、購入報告やおすすめ投稿が散見され、「恋愛映画の教科書」「バレンタインにぴったり」との好意的な反応が見られ、重版の多さからも長期的な支持がうかがえます。専門メディアやnoteのレビューでは、映画ファンから「出会えてよかった一冊」「映画内の恋愛を深く味わえる」と称賛されており、カルチャー好きの間で特に人気です。
目次
本書の目次は、年代ごとに分けられた恋愛映画100本のリストを中心に構成されています。各項目は映画タイトル、イラスト、セリフ、解説のセットで、目次自体は収録作品の目録として機能します。以下に主な収録作品をリストアップします（年代カテゴリ見出しは参考として付記し、リストは1層のみとします）。
1950－1980年代
- 紳士は金髪がお好き
- めまい
- ティファニーで朝食を
- 昼顔
- ロミオとジュリエット
- でんきくらげ
- 仁義なき戦い 広島死闘編
- マンハッタン
- 陽炎座
- 初体験／リッジモント・ハイ
- 時をかける少女
- すてきな片想い
- ベティ・ブルー／愛と劇場の日々
- プリティ・イン・ピンク／恋人たちの街角
- ビッグ
- トーチング・ソリロジー
- サムシング・ワイルド
- セイ・エニシング
1990年代
- ゴースト／ニューヨークの幻
- クライ・ベイビー
- プリティ・ウーマン
- 髪結いの亭主
- クーリンチェ少年殺人事件
- ポンヌフの恋人
- マイ・ガール
- 氷の微笑
- おこげ
- めぐり逢えたら
- リアリティ・バイツ
- ナチュラル・ボーン・キラーズ
- ビフォア・サンライズ 恋人までの距離（ディスタンス）
- 耳をすませば
- タイタニック
- チェイシング・エイミー
- ブエノスアイレス
- ユー・ガット・メール
- メリーに首ったけ
- 黒猫・白猫
- ノッティングヒルの恋人
- アメリカン・ビューティー
- 恋のからさわぎ
2000年代
- あの頃 ペニー・レインと
- ハイ・フィデリティ
- 花様年華
- ブリジット・ジョーンズの日記
- 愛しのローズマリー
- ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
- パンチドランク・ラブ
- 藍色夏恋
- トーク・トゥ・ハー
- ジョゼと虎と魚たち
- ラブ・アクチュアリー
- ロスト・イン・トランスレーション
- ブラウン・バニー
- エターナル・サンシャイン
- 50回目のファースト・キス
- イカとクジラ
- 40歳の童貞男
- エリザベスタウン
- ONCE ダブリンの街角で
- ホリデイ
- 接吻
- マイ・ブルーベリー・ナイツ
- ラブソングができるまで
- JUNO／ジュノ
- パリ、恋人たちの２日間
- ぼくのエリ ２００歳の少女
- セックス・アンド・ザ・シティ
- それでも恋するバルセロナ
- 息もできない
- フィリップ、君を愛してる！
2010
- インセプション
- ハートブレイカー
- スコット・ピルグリム VS 邪悪な元カレ軍団
- ワン・デイ 23年のラブストーリー
- 永遠の僕たち
- チキンとプラム ～あるバイオリン弾き、最後の夢～
- モテキ
- ウォールフラワー
- 世界にひとつのプレイブック
- ルビー・スパークス
- わたしはロランス
- セレステ&ジェシー
- フランシス・ハ
- 華麗なるギャツビー
- 鑑定士と顔のない依頼人
- アデル、ブルーは熱い色
- 百円の恋
- ラブ&マーシー 終わらないメロディー
- ぼくとアールと彼女のさよなら
- シング・ストリート 未来へのうた
- ラ・ラ・ランド
- ベイビー・ドライバー
SPECIAL
- ラストタンゴ・イン・パリ
- 愛のコリーダ
- ナインハーフ
- 赤い航路
- アイズ ワイド シャット
- ニンフォマニアック vol.1
- 愛の渦
注：実際の目次は作品順に並び、カテゴリ分けは参考です。全リストは本書に基づく。
あらすじ
本書は、恋愛映画の名シーンとセリフを軸にした紹介本であるため、伝統的な物語のあらすじではなく、全体のコンセプトが「あらすじ」に相当します。イラストレーター長場雄氏が100本の恋愛映画から象徴的なワンシーンを選び、黒い線のみのミニマリストなスタイルで描きます。
一方、山瀬まゆみ氏、小川知子氏、中村志保氏が各映画の印象的なセリフを抜粋し、その文脈や恋愛のテーマについての短い解説を加えます。読者はページをめくるごとに、映画のハイライトを視覚とテキストで味わい、恋愛の多様な形を再認識します。
冒頭に著者らの前書きがあり、恋愛映画の普遍性を語り、終わりには索引が付記されています。全体として、映画館やストリーミングサービスを訪れたくなるような、軽快でロマンティックな流れが特徴です。
解説
本書は、恋愛映画の魅力を凝縮したユニークなガイドブックとして機能します。長場雄氏のイラストは、黒い線一本で恋愛のエッセンスを表現するスタイルが秀逸で、例えば『タイタニック』の船首シーンや『ラ・ラ・ランド』のダンスの瞬間が、読者の感情を掻き立てます。これにより、映画の視覚的な記憶を呼び起こし、未視聴者には興味を喚起します。
一方、3名のライターによる解説は、セリフの選択が鋭く、各映画の恋愛観や文化的意義を簡潔にまとめています。例えば、『プリティ・ウーマン』の独立心の台詞は女性のエンパワーメントを、『アデル、ブルーは熱い色』の情熱の言葉は同性愛の深みを強調します。選定された100本は、クラシックから現代作まで年代を横断し、邦画（『モテキ』など）と洋画の両方をカバーしていますが、定番中心のため、映画通には懐かしく、初心者には発見の喜びを提供します。
評判の良さは、このイラストとテキストの融合にあり、恋愛の「忘れがたい瞬間」を共有するコミュニティ感を生み出しています。ただし、解説の短さが深い分析を求める読者には不足を感じさせる可能性があります。
前作と併せて読むことで、映画全体のテーマ探求が深まります。全体として、恋愛文化の普及に寄与する良質な書籍であり、日常のインスピレーションとして長く楽しめます。
レビュー 作品の感想や女優への思い