カーネギーメロン大学（Carnegie Mellon University、略称CMU）は、1900年にアンドリュー・カーネギーによって設立された私立研究大学。1967年にメロン研究所と合併し、現在の形となりました。ピッツバーグに本拠を置き、工学、コンピュータ科学、芸術、ビジネスなどの分野で世界的に高い評価を得ています。革新的な教育と研究で知られ、ノーベル賞受賞者やトニー賞受賞者を多数輩出しています。
歴史
カーネギーメロン大学の歴史は、19世紀末のアメリカ産業革命の時代に遡ります。1900年、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは、労働者階級の若者たちに実践的な技術教育を提供することを目的として、ピッツバーグにカーネギー技術学校（Carnegie Technical Schools）を設立しました。この学校は、当初、1年程度の職業訓練プログラムを中心に据え、プラット工科学校のモデルを参考に設計されました。カーネギーのビジョンは、教育を通じて社会の機会均等を実現するというものでした。
1912年、学校はカーネギー工科大学（Carnegie Institute of Technology、CIT）と改称され、4年制の学位プログラムを導入しました。この頃、美術応用学校やマーガレット・モリソン・カーネギー女子学校などの専門部門が加わり、女性教育にも力を入れるようになりました。マーガレット・モリソン・カーネギー学校は、女性のための総合教育機関として1913年に設立され、家庭科から科学まで幅広いカリキュラムを提供しました。これにより、CITは工学だけでなく、芸術や人文科学の分野でも発展を遂げました。
一方、メロン研究所（Mellon Institute of Industrial Research）は、1913年にアンドリュー・メロンとリチャード・B・メロン兄弟によって設立されました。当初はピッツバーグ大学の一部として機能していましたが、1927年に独立し、1937年に象徴的な建物が完成しました。この研究所は、産業研究の先駆けとして、化学や工学の応用研究を推進しました。メロン兄弟の寄付は、基礎研究と実用化の橋渡し役を果たしました。
1967年、CITとメロン研究所の合併が実現し、カーネギーメロン大学が誕生しました。この合併は、ポール・メロンの支援により推進され、工学・科学・芸術を統合した総合大学への転換を象徴します。合併直後、大学は急速に拡大し、1973年にはマーガレット・モリソン・カーネギー・カレッジのプログラムを本大学に統合しました。これにより、女性学生の割合が増加し、多様な教育環境が整いました。
1972年から1990年までのリチャード・サイアート学長時代は、研究予算の大幅な増加と革新の時期でした。1980年代中盤には、アンドリュー・コンピューティング・ネットワークの開発により、コンピュータ科学の分野で世界をリードする存在となりました。このネットワークは、現代のインターネットの基盤を形成する重要な役割を果たしました。また、サイアート時代にロボット工学や人工知能の研究が加速し、大学は技術革新の中心地となりました。
1990年代以降、カーネギーメロン大学は学際的研究を強化しました。計算ファイナンスやヒューマン・コンピュータ・インタラクションなどの新分野で国際的な評価を得ています。2003年の「Insp!re Innovation」キャンペーンでは、11億9千万ドルの資金調達に成功し、施設の拡充を図りました。2011年には、2億6,500万ドルの寄付により、人文社会科学カレッジがディートリッヒ・カレッジと改称されました。また、2022年には、マスターカード財団との2億7,570万ドルのパートナーシップにより、アフリカのルワンダ・キガリにキャンパスを設立し、グローバル教育を推進しています。
今日のカーネギーメロン大学は、21人のノーベル賞受賞者、13人のチューリング賞受賞者を輩出するなど、研究の質の高さを誇ります。映画や演劇のロケ地としても知られ、社会への影響力を広げ続けています。この歴史は、教育の民主化からグローバルイノベーションへの進化を物語っています。
教育
カーネギーメロン大学の教育は、理論と実践の融合を重視し、学生が複雑な問題に創造的に取り組む力を養うことを目的としています。大学は7つの主要カレッジから構成され、各々が独自の強みを活かしたプログラムを提供します。入学は競争率が高く、学部生の受け入れ率は約10%前後ですが、多様なバックグラウンドの学生を歓迎する包括的なアプローチを取っています。
まず、カレッジ・オブ・エンジニアリングは、化学工学から電気コンピュータ工学まで7つの部門と2つの研究所を擁します。学生は基礎科学を基盤に、持続可能なエネルギーやバイオエンジニアリングなどの応用分野を学びます。プロジェクトベースの学習が中心で、企業との共同研究を通じて実務経験を積みます。大学院プログラムは、Ph.D.候補者が先端研究に携わる機会を豊富に備えています。
スクール・オブ・コンピュータ・サイエンスは、世界トップクラスの評価を受けています。ロボット工学、機械学習、ヒューマン・コンピュータ・インタラクションなどの部門で、学部から博士課程までをカバーします。B.S. in Computer Scienceプログラムは、プログラミングからAI倫理までを包括的に扱い、インターンシップやハッカソンなどの課外活動が教育を補完します。共同学位プログラム（BCSA: Bachelor of Science in Computer Science and Artなど）は、他のカレッジとの連携を促進します。
ディートリッヒ・カレッジ・オブ・ヒューマニティーズ・アンド・ソーシャル・サイエンスは、リベラルアーツの伝統を現代的に再解釈しています。英語、心理学、歴史学などの部門で、グローバルな視点から社会問題を分析します。BHA（Bachelor of Humanities and Arts）のようなインターディシプリナリープログラムは、芸術と人文科学を統合し、学生の創造性を刺激します。大学院では、公共政策や認知科学のマスターズが人気です。
テッパー・スクール・オブ・ビジネスは、分析力とリーダーシップを重視した教育で知られます。MBAプログラムは、ファイナンスやオペレーションズを専門とし、ケーススタディとデータ分析を活用します。学部レベルのB.S. in Business Administrationは、起業家精神を育むカリキュラムを採用しています。テッパーは、テック業界とのつながりが強く、シリコンバレーのインターンシップを支援します。
カレッジ・オブ・ファイン・アーツは、1912年以来の伝統を持ち、建築、音楽、デザイン、ドラマ、アートスクールを包括します。ドラマスクールはハリウッド・レポーターで世界3位にランクされ、BFA in Actingプログラムは、シェイクスピアから現代劇までを網羅します。IDeATe（Integrated Design + Arts + Technology）イニシアチブは、芸術と技術の融合を推進し、メディアデザインやゲーム開発のコースを提供します。
メロン・カレッジ・オブ・サイエンスは、生物科学から物理学までをカバーし、神経科学やナノテクノロジーの研究に注力します。学部生はラボワークを通じて実験スキルを磨き、大学院生はNSFグラントを活用したプロジェクトに参加します。ハイア・ジョン・ハインズIIIカレッジ・オブ・インフォメーション・システムズ・アンド・パブリック・ポリシーは、情報技術と政策の交差点を扱い、サイバーセキュリティやデータサイエンスのマスターズでトップランクです。
大学全体の教育の特徴は、学際性です。BXAプログラム（BSA, BHA, BESA, BCAなど）は、科学・芸術・人文の境界を越えた学位を授与します。また、Pre-Collegeプログラムは高校生向けのサマースクールで、Open Learning Initiativeは無料のオンラインコースを提供し、生涯学習を支援します。学生支援として、奨学金やメンターシップが充実し、卒業生の就職率は95%以上です。この教育アプローチは、学生を単なる知識の消費者ではなく、イノベーターとして育てます。
出身女性アスリート
- Rebecca Berty（旧姓Fruehan）：1996年のNCAA水泳選手権で100ヤードおよび200ヤード自由形で優勝したカーネギーメロン大学の唯一の女性全国チャンピオンです。在学中、11回のオールアメリカン栄誉を獲得し、1994年、1995年、1996年にUAAカンファレンスのスイマー・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。彼女の活躍は、大学アスレチックスの歴史に輝かしい一ページを刻んでいます。
- Lauren Schmidt：2003年にNCAAペンシルベニア・ウーマン・オブ・ザ・イヤー賞を受賞したテニス選手です。2001年と2002年に2度のオールアメリカン、1999年から2002年まで4度のオールUAA選出、2001年にカンファレンスのプレーヤー・オブ・ザ・イヤーを獲得しました。チームメイトの支援のもと、卓越したパフォーマンスを発揮しました。
- Carolyn Lowe：1992年のNCAAディビジョンIII 10,000メートル走で全国チャンピオンとなったトラックアンドフィールド選手です。彼女の勝利は、大学の中距離・長距離走の伝統を確立し、後輩たちに影響を与えました。
- Molly Evans：2011年卒業の女子水泳選手で、アスレチックス殿堂入りした一人です。大学時代に複数の記録を樹立し、UAAでの活躍が目覚ましく、卒業後もコーチングやコミュニティ活動に貢献しています。
- Gemma Jefferson：女子サッカー選手で、2024年にトップ・アカデミック・アスリートとして表彰されました。フィールド内外でのリーダーシップを発揮し、大学のアスレチックス文化を体現しています。
これらの女性アスリートたちは、カーネギーメロン大学のNCAAディビジョンIIIスポーツで活躍し、学業とスポーツの両立を象徴します。大学はTartansとして知られる17の男子・女子チームを擁し、UAA（University Athletic Association）の創設メンバーです。女性アスリートは全体の約半数を占め、多様なスポーツで貢献しています。
出身女優
- ホリー・ハンター：1980年卒業のドラマ専攻。映画『ピアノ・レッスン』（1993年）でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、『インクレディブルズ』でエラジガールの声を担当。南部ゴシック劇の舞台経験からハリウッドへ進出、CMUの演劇教育の成果を世界に示しました。
- アビー・ブラメル：CMUのドラマスクールに通い、2001年に大学の演劇科を卒業。CBSのアクションドラマ『The Unit』（2006年～2009年）でのティフィー・ゲルハルト役で広く知られている。
- ミン・ナ：『ムーラン』の声優や『エージェント・オブ・シールド』のメリンダ・メイ役で知られる。CMUで演技の基礎を徹底的に学び、舞台やスクリーンでの表現力を磨く。
- モリー・グリッグス：演技の学士号を取得。ブロードウェイデビューは2018年の「ハロー、ドリー！」、2025年には「John Proctor is the Villain」に出演。テレビでは「Dr. Death」「Servant」など多数の作品で活躍。
- ローラ・サン・ジャコモ：1984年卒業。『プリティ・ウーマン』や『セックス、リエズ、アンド・ビデオテープ』で知られ、TVシリーズ『ジャスト・シュート・ミー！』で活躍。CMUのドラマスクールで培った即興演技が、彼女の多様な役柄を支えています。
- ジュディス・ライト：『Who’s the Boss?』や『Ugly Betty』で人気を博し、2012年と2013年にトニー賞を連続受賞。ブロードウェイの『Other Desert Cities』などで輝き、CMU在学中の演劇訓練が基盤です。
- ケイティ・ミクソン：『Eastbound & Down』や『マイク＆モリー』で主演。HBOコメディでの突破役が有名で、CMUの音楽劇専攻で磨いた歌唱力と演技力が融合したキャリアを築きました。
- コート・デ・パブロ：『NCIS ネイビー犯罪捜査班』でジバ・ダネル役を演じ、ラテン系女優の代表格。CMUのCollege of Fine Artsで学んだ多文化演技が、国際的な成功を支えています。
- パトリシア・トールマン：『バビロン5』でリタ・アレクサンダー役、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』（1990年リメイク）でバーバラ役。スタントウーマンとしても活躍し、CMUの身体表現教育の賜物です。
- レネイ・エリース・ゴールズベリイ：1993年卒業。ミュージカル『Hamilton』でトニー賞主演女優賞受賞。ブロードウェイの『Pippin』でも輝き、CMUの声楽トレーニングが彼女の歌唱力を高めました。
- サットン・フォスター：1992-93年在籍。『Thoroughly Modern Millie』（2002年）と『Anything Goes』（2011年）で2度のトニー賞受賞。CMUの短期プログラムが、彼女のミュージカルスターへの道を開きました。
カーネギーメロン大学School of Drama（ドラマ学校／公式サイト）は、世界トップレベルの演劇教育機関で、卒業生はブロードウェイやハリウッドで活躍します。これらの女優たちは、CMUの厳格なトレーニングを通じて、感情表現と技術を磨き、多様なエンターテイメント業界に貢献しています。大学はトニー賞を64回、アカデミー賞を13回受賞するなど、芸術分野の強さを誇ります。
レビュー 作品の感想や女優への思い