セクストーション（Sextortion）とは、「性的な」という意味の「セックス（Sex）」と「脅迫・ゆすり」を指す「エクストーション（Extortion）」を組み合わせた造語で、性的な画像や動画を入手し、それらを公開または拡散すると脅して金銭やさらなる画像を要求する犯罪行為です。近年、SNSやインターネットの普及に伴い、特に若者を中心に被害が増加しています。以下では、セクストーションの実例と、このテーマを取り上げた映画について、詳しく解説いたします。
セクストーションの実例
セクストーションは、SNSやマッチングアプリ、メールなどを通じて行われることが多く、被害者は10代から20代の若者が中心ですが、小学生や男性も標的になるケースが増えています。以下に、具体的な実例を挙げて、セクストーションの手口や影響を説明します。
インスタグラムを介した高校生の被害例
2023年6月、15歳の男子高校生がインスタグラムに「暇な人、話そう」と投稿したところ、知らないアカウントからメッセージが届きました。最初は軽い会話で親しくなり、相手から「もっと親密になりたい」と性的な画像の送信を求められました。高校生が画像を送ると、相手は「この画像を友人に送る」と脅し、電子マネーでの金銭を要求。高校生は恐怖から要求に応じましたが、さらなる脅迫が続き、精神的苦痛を受けた。このケースは、SNSでの軽い接触から始まり、心理的な隙をつく典型的なセクストーションの手口を示しています。
大学生の被害例
2023年10月、20代の大学生（仮名：コウスケさん）が、インスタグラムで知り合った女性を装ったアカウントからメッセージを受け取りました。やり取りの中で、相手から性的な動画の交換を提案され、信頼して動画を送ったところ、「動画をネットに公開する」と脅迫され、金銭を要求されました。コウスケさんは恥ずかしさから誰にも相談できず、支払いを続けたが、要求がエスカレートし、精神的に追い詰められました。このケースは、被害者が孤立しやすいセクストーションの特徴を浮き彫りにしています。
国際的な犯罪組織による被害
セクストーションは個人だけでなく、組織的な犯罪グループによるものも多いです。2022年、インターポールは香港やシンガポールを標的としたセクストーションの犯罪組織を摘発。ナイジェリアやフィリピンを拠点とするグループが、SNSで偽のアカウントを使い、被害者に性的画像を送らせ、30件以上の被害で総額47,000米ドルの損害を引き起こしました。被害者は画像の拡散を恐れ、心理的に追い込まれ、一部は自殺に至るケースも報告されています。この例は、セクストーションが国際的なサイバー犯罪として深刻化していることを示しています。
ウェブカメラのハッキングによる被害
一部のセクストーションでは、被害者のデバイスをハッキングし、ウェブカメラを通じて盗撮した映像で脅迫するケースがあります。例えば、被害者がアダルトサイトを閲覧中にマルウェアに感染し、ウェブカメラが遠隔操作されて裸の映像が撮影されたと主張するメールが送られてきます。攻撃者は「映像を公開する」と脅し、ビットコインなどの暗号通貨を要求。この手口は、実際には映像が存在しない場合も多く、被害者の不安を煽る「はったり」が使われることもあります。
NPO法人ぱっぷすに寄せられた相談
NPO法人「ぱっぷす」によると、2022年秋頃からセクストーションの相談件数が増加し、月120件のデジタル性暴力相談のうち約3割がセクストーション関連です。相談内容には、交際相手に撮影された性行為の動画をアダルトサイトに公開すると脅されたリベンジポルノや、SNSで知り合った相手に誘導されて送った画像を元に繰り返し脅迫されるケースが含まれます。特に若者は性被害に関する教育が不足しており、被害に遭っても相談しにくい環境が、さらなる孤立を招いています。
小括
これらの実例から、セクストーションは被害者の羞恥心や恐怖心を巧みに利用し、心理的・経済的なダメージを与える犯罪であることがわかります。FBIやインターポールも警告を発しており、特に夏休みなど子どもがスマートフォンを長時間使用する時期に被害が増える傾向があります。
セクストーションを取り上げた映画
セクストーションを直接的にテーマにした映画は限られていますが、性的脅迫やデジタル性暴力に関連するテーマを扱った作品はいくつか存在します。以下に、セクストーションや類似のテーマを描いた映画を紹介します。なお、セクストーションそのものを明確に描いた映画は少ないため、関連するテーマ（性的脅迫、プライバシー侵害、サイバー犯罪など）を扱った作品も含めます。
トラスト/裏切りの果て（2010年、アメリカ）
監督：デヴィッド・シュワイマー。14歳の少女アニーが、オンラインで知り合った男性とチャットを通じて親しくなりますが、相手が実は成人男性で、性的な目的で近づいていたことが判明。アニーは性的被害を受け、家族との関係や精神的なダメージに苦しみます。この映画は、セクストーションそのものではないものの、オンラインでの信頼関係を悪用した性的搾取を描いており、セクストーションの初期段階の手口（親しくなるための会話から性的な要求へ）に類似しています。SNSの危険性と若者の被害をリアルに描写し、教育的メッセージも込められています。
ハード・キャンディ（2005年、アメリカ）
監督：デヴィッド・スレイド。14歳の少女ヘイリーが、オンラインで知り合った30代の男性ジェフと会うが、実はヘイリーが男性を誘い出し、性的搾取の疑いのある彼を追及する逆転劇。セクストーションそのものを描くわけではありませんが、オンラインでの出会いから性的な危険に発展する可能性や、被害者が反撃する姿を描いており、セクストーションの心理的側面に通じるテーマが含まれます。エリオット・ペイジの迫真の演技が話題となりました。
サイバーブリー（2011年、アメリカ・カナダ）
監督：チャールズ・ビナミール。テレビ映画として制作されたこの作品は、17歳の少女テイラーがSNSでのいじめやオンライン上の脅迫に苦しむ物語です。直接的なセクストーションではありませんが、SNSを通じてプライバシーが侵害され、精神的ダメージを受ける点で、セクストーション被害の影響に似たテーマを扱っています。デジタル時代の若者の脆弱性を描き、サイバー犯罪の危険性を訴える作品です。
アンライクリー（2014年、アメリカ）
監督：レオ・ガブラッド。高校生のグループがビデオチャット中に、亡魂とされる存在から脅迫を受け、過去の秘密や性的な動画の公開を恐れるホラー映画。セクストーションの典型的な手口（性的な動画を拡散すると脅す）を取り入れ、SNSやウェブカメラを通じたプライバシー侵害をテーマにしています。ホラー要素が強いものの、デジタル空間での脅迫が若者に与える恐怖をリアルに描写しています。
メン、ウーマン＆チルドレン（2014年、アメリカ）
監督：ジェイソン・ライトマン。インターネットとSNSが人間関係に与える影響を描いた群像劇で、複数の登場人物がオンラインでの性的な問題に直面します。ある女子高生が自分の性的な画像をオンラインで共有し、それが拡散して脅迫につながるエピソードが含まれます。セクストーションを直接的に描くわけではありませんが、性的画像の拡散による被害や、デジタル時代のプライバシー問題を扱っており、セクストーションの背景に通じるテーマが含まれます。
小括
これらの映画は、セクストーションを直接的に扱うものは少ないものの、SNSやインターネットを通じた性的搾取や脅迫、プライバシー侵害といった関連テーマを描いています。特に『トラスト/裏切りの果て』や『アンライクリー』は、セクストーションの手口や影響に近い要素を含んでおり、視聴を通じてこの犯罪の危険性を理解する助けになります。ただし、セクストーションを明確にテーマにした映画はまだ少なく、ドキュメンタリーや短編映画で取り上げられるケースが多いのが現状です。
まとめ
セクストーションは、SNSやインターネットの普及に伴い、若者を主な標的とした深刻なサイバー犯罪として世界的に広がっています。実例からは、被害者が心理的な恐怖や羞恥心により孤立し、適切な対処が難しい状況が明らかです。一方で、映画ではセクストーションそのものを直接描いた作品は少ないものの、関連するテーマを通じてその危険性を訴える作品が存在します。被害を防ぐためには、知らない相手からのメッセージを無視する、性的な画像を送らない、被害に遭った場合は警察や相談機関（例：警察相談専用電話 #9110、性暴力被害相談電話 #8103）に連絡するなどの対策が重要です。
今後、セクストーションを直接テーマにした映画やドキュメンタリーが増えることで、社会的な認知度がさらに高まり、予防教育が進むことが期待されます。インターネットを利用する際は、常に警戒心を持ち、安全な使い方を心がけることが大切です。
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