パク・チアは韓国の実力派女優として知られ、映画やドラマ、舞台で幅広い活躍を見せた人物です。1972年2月25日生まれで、2024年9月30日に脳梗塞による闘病の末、52歳で惜しまれながらこの世を去りました。彼女は特に、キム・ギドク監督の作品やNetflixの人気ドラマ「ザ・グローリー」での強烈な演技で知られ、観客に深い印象を残しました。パク・チアはその独特な存在感と感情表現の深さで、脇役ながらも作品に欠かせない存在として高く評価されました。彼女のキャリアは、劇団での活動から始まり、映画、ドラマ、そして舞台まで多岐にわたり、韓国エンターテインメント業界において独自の地位を築きました。
プロフィール
- 名前：パク・チア（박지아）
- 生年月日：1972年2月25日
- 出生地：韓国ソウル市
- 没年月日：2024年9月30日没（享年52歳）
- 死没地：韓国ソウル市
- 別名：パク・ジア
- 学歴：ソウル芸術大学（芸術学士）
- 職業：女優
- 活動期間：1998年～2024年
- 所属事務所：Jflex
各種表記
- 韓国名（ハングル）：박지아
- ローマ字：Park Ji-ah
生い立ちと教育
パク・チアは1972年2月25日、韓国で生まれました。彼女の父親は、元韓国サッカー国家代表選手であり、後にKリーグの浦項製鉄（現・浦項スティーラーズ）の監督を務めたパク・スイル氏でした。このような家庭環境の中で育ったパク・チアは、幼少期からスポーツや競技に関連する強い精神力や規律を身につけた可能性があります。彼女の生まれ年である1972年は、韓国が高度経済成長期にあった時期であり、文化的にも新しい表現が模索されていた時代です。
教育面では、パク・チアはソウル芸術大学（ソウル芸術専門大学、現在のソウル芸術大学）の演劇科に1990年に進学しました（90学番）。当時、ソウル芸術大学は演劇や芸術分野で優れた人材を輩出する名門校として知られており、彼女はここで演技の基礎を学び、舞台女優としてのキャリアの第一歩を踏み出しました。大学での学びは、彼女の後の劇団活動や映像作品での演技に大きな影響を与え、特に感情の深い表現やキャラクターへの没入力を磨く土台となりました。彼女の教育背景は、演技に対する真摯な姿勢と、舞台やスクリーンでのプロフェッショナリズムを支える重要な要素でした。
経歴
パク・チアの俳優としてのキャリアは、劇団「チャイム（差異無）」での活動から始まりました。1990年代後半、彼女は舞台女優としてキャリアをスタートさせ、1997年に映画『死に花（죽이는 이야기）』や『マリアと宿屋（마리아와 여인숙）』などの作品で小さな役を演じながら映像界に進出しました。これらの初期の経験は、彼女が多様な役柄を演じるための基盤を築きました。
彼女のキャリアにおける転機は、2002年のキム・ギドク監督の映画『海岸線』への出演でした。この作品で彼女は重要な役を演じ、キム・ギドク監督との縁が始まりました。その後、『春夏秋冬そして春』『空き家』『息』、『悲夢』と、キム・ギドク監督の5作品に出演し、彼の独特な世界観を体現する女優として注目されました。特に『息』では、死刑囚と愛に落ちる女性「ヨン」を演じ、批評家から「素晴らしい（terrific）」や「見ていて楽しい（a joy to watch）」と高く評価されました（Variety、Twitch Film）。
2007年のホラー映画『奇談』では、幽霊役として強烈なインパクトを残し、彼女の名を一躍広めました。この作品での彼女の演技は、韓国ホラー映画史において語り継がれるほどの恐ろしさと存在感を放ち、「奇談の母親の幽霊」と聞けば多くの観客が彼女を思い浮かべるほどでした。2018年の『コンジアム』でも同様に、院長の幽霊役で観客を恐怖に陥れ、ホラー映画における彼女の地位を確固たるものにしました。
2022年から2023年にかけて公開されたNetflixのドラマ『ザ・グローリー（더 글로리）』では、主人公ムン・ドンウン（ソン・ヘギョ）の母親チョン・ミヒ役を演じ、圧倒的な演技力で注目を集めました。短い出演シーンにもかかわらず、彼女の演じる母親像は物語の核心に迫る深い影響を与え、視聴者に強い嫌悪感と同時に共感を呼び起こす複雑なキャラクターを見事に表現しました。この役で、彼女は「シーン・スティーラー（場面を奪う俳優）」として広く称賛されました。
パク・チアはその後も精力的に活動を続け、2024年6月に公開された映画『ハイジャック』や、遺作となったENAドラマ『サロン・ド・ホームズ』に出演。『サロン・ド・ホームズ』では、マンションの婦人会長チェ・ソンジャ役を演じ、最後まで情熱的な演技を見せました。彼女の所属事務所ビリオンズは、彼女の死去に際し、「最期まで演技を愛した彼女の情熱を永遠に記憶する」と述べました。
私生活
パク・チアの私生活については、彼女が公に多くを語らなかったため、限られた情報しかありません。知られているところでは、彼女は結婚しておらず、夫や子供はいなかったとされています。彼女の葬儀では、弟が喪主を務めたことが報じられており、家族構成としては両親と弟がいたことが推測されます。また、彼女は同僚の女優ヨム・ヘランと特に親しい関係にあったと言われ、ヨム・ヘランはパク・チアが闘病中にも何度も病院を訪れ、看病を行ったとされています。ヨム・ヘランは2024年のアジアコンテンツアワード＆グローバルOTTアワードで、助演女優賞の受賞スピーチ中にパク・チアへの追悼のメッセージを伝え、彼女への深い友情を示しました。
パク・チアは私生活では控えめで、演技に全力を注ぐ姿勢が知られていました。彼女の同僚やファンからは、常に謙虚で作品に真剣に取り組む姿勢が尊敬されていました。『サロン・ド・ホームズ』の監督ミン・ジンギは、彼女を「一瞬のために絶え間なく努力した俳優」と評し、闘病中もその情熱を失わなかったと語っています。
出演作品
パク・チアの出演作品は、映画、ドラマ、舞台と多岐にわたります。以下は代表的な作品の一部です。
映画
- 海岸線（2002年）：キム・ギドク監督作品で、彼女のキャリアにおける重要な一歩。
- 春夏秋冬そして春（2003年）：キム・ギドク監督作品。
- 奇談（2007年）：幽霊役で強烈な印象を残し、韓国ホラー映画の名シーンを生み出した。
- 息（2007年）：キム・ギドク監督作品で、死刑囚と恋に落ちる女性ヨンを演じた。
- コンジアム（2018年）：院長の幽霊役で再びホラー映画での存在感を示した。
- ハイジャック（2024年）：晩年の出演作。
- サロン・ド・ホームズ（2024年、遺作）：チェ・ソンジャ役。
TV
- ザ・グローリー（2022-2023年）：Netflixドラマで、ムン・ドンウンの母親チョン・ミヒ役。
- 力の強い女カン・ナムスン（2023年）：脇役で出演。
- タングム（2023年）：短い出演ながら印象的な演技。
舞台
- マリアと宿屋：初期の舞台作品。
- 見に来て：舞台女優としての力量を発揮。
- ワイフ（2024年）：最後の舞台出演。
まとめ
パク・チアは、舞台から映画、ドラマまで幅広い分野で活躍した韓国を代表する実力派女優でした。ソウル芸術大学での学びを基盤に、劇団チャイムでの経験を通じて演技力を磨き、キム・ギドク監督作品や『ザ・グローリー』でその才能を広く知らしめました。彼女の演技は、短いシーンでも観客の心をつかむ力を持ち、特に『奇談』や『ザ・グローリー』での役柄は多くの人々の記憶に残っています。私生活では控えめながらも、演技に対する情熱は誰よりも強く、最期までその姿勢を貫きました。2024年9月30日、脳梗塞により52歳の若さで亡くなった彼女ですが、彼女の作品は今後も多くの人々に愛され続けるでしょう。彼女の遺した演技の足跡は、韓国エンターテインメントの歴史に深く刻まれています。
レビュー 作品の感想や女優への思い