『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は1990年代のコギャル文化を背景に、女子高生グループ「SUNNY」の青春と、20年後の再会を描く青春音楽映画。韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のリメイクで、大根仁監督が日本独自のJ-POPとファッションを織り交ぜ、友情の輝きを蘇らせる。笑いと涙のエンタテイメント。
基本情報
- 原題:SUNNY 強い気持ち・強い愛
- 公開年:2018年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:118分
- ジャンル:ドラマ
- 青春配給:東宝
女優の活躍
本作は女性中心のキャストが光る作品で、特に篠原涼子と広瀬すずのダブル主演が印象的だ。篠原は40歳の専業主婦・奈美を演じ、日常の閉塞感から脱却する過程を繊細に表現。家族の影に隠れた内面的な葛藤を、静かな演技で体現し、クライマックスの感情爆発で観客を圧倒する。広瀬すずは高校時代の奈美を熱演し、明るく無邪気なコギャル姿でエネルギッシュに振る舞う。ダンスシーンや友情の喧嘩を自然にこなし、90年代の青春らしさを鮮やかに描き出す。二人は過去と現在のつながりを体現し、篠原が広瀬の演技を参考に調整したことで、シームレスな連続性が実現した。
小池栄子は裕子役で、シングルマザーとしての苦労をコミカルに演じつつ、根底の強さを発揮。ともさかりえは心役で、風変わりな個性をユーモラスに体現し、グループのムードメーカーとして活躍。渡辺直美の梅役は、派手な性格で笑いを誘いながら、過去のトラウマを深く掘り下げる。板谷由夏は芹香役で、余命わずかなカリスマ女性をクールに演じ、物語のきっかけを担う。
若手女優陣も輝きを放つ。池田エライザは奈々役で、大人びたミステリアスさを保ちつつ、高校時代はクールビューティーとしてグループのバランスを取る。山本舞香は芹香の高校時代を演じ、リーダーシップを発揮する活発さをリアルに表現。野田美桜の佳代子役は、内気ながらも友情に献身的な姿が心を打つ。田辺桃子の真希役と富田望生の玲役は、それぞれの個性を活かしたサポート役として、グループの多様性を豊かにする。
これらの女優たちは、過去と現在の対比でそれぞれの成長を示し、女性の人生の多面性を描き出す。全体として、女優たちのアンサンブルが友情の深みを強調し、観客に強い共感を呼ぶ。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の魅力の一つは、90年代コギャル文化の再現で、女優たちの衣装、化粧、髪型が時代を鮮やかに蘇らせる。高校時代パートでは、ルーズソックスがシンボルで、広瀬すずの奈美は短いスカートにルーズソックスを合わせ、スクールバッグをリュック風に背負うスタイル。髪型は茶髪のセミロングにゆるいウェーブをかけ、化粧はギャルメイクのベースにピンクのリップとアイラインを強調した派手めなもの。池田エライザの奈々は黒髪ロングにストレートヘアでクールさを出し、ミニスカートにブーツを合わせたモード系ファッション。山本舞香の芹香は金髪ショートボブで活発さを表し、ルーズソックスにオーバーサイズのシャツをレイヤード。野田美桜の佳代子は黒髪おかっぱ風に眼鏡をかけ、制服を崩さず清楚さを保ちつつ、グループに溶け込む。田辺桃子の真希はツインテールにリボン、富田望生の玲はポニーテールで可愛らしさを強調。全員に共通するのは、アムラー風の小物(ハンカチやネックレス)と、プリクラ風のアクセサリーで、青春のきらびやかさを演出。
現在パートでは、対照的に大人らしい装いが目立つ。篠原涼子の奈美はカジュアルなブラウスとパンツスタイルで、髪はストレートのミディアムボブ、化粧はナチュラル。疲れた主婦の現実味を出す。小池栄子の裕子はジャージ混じりのラフな服装で、ボブヘアに最小限のメイクがシングルマザーの日常を反映。ともさかりえの心は個性的な柄物ワンピースにショートヘア、派手なアイシャドウで変わらぬ風変わりさを。渡辺直美の梅はグラマラスなドレスに巻き髪、ボリュームメイクで派手さを保つ。板谷由夏の芹香はスーツ姿にロングヘアをアップにし、クールなリップでカリスマ性を強調。若手が演じる高校時代とのギャップが、時間の経過を視覚的に示す。衣装デザイナーの工夫で、過去の要素を現在にさりげなく取り入れ、ノスタルジーを喚起する。
あらすじ
1990年代中盤、日本中の女子高生がルーズソックスを履き、コギャルブームが沸き起こる時代。高校2年生の阿部奈美(広瀬すず)は、転校生の伊藤芹香(山本舞香)と出会い、すぐに意気投合する。芹香の明るさとカリスマ性に惹かれ、奈美は彼女の親友グループ「SUNNY」に加わる。メンバーは、クールな奈々(池田エライザ)、内気な佳代子(野田美桜)、活発な真希(田辺桃子)、おっとりした玲(富田望生)。6人はすぐに仲良くなり、放課後はカラオケやプリクラ、渋谷の街を闊歩し、J-POPに合わせてダンスを踊る。憧れの先輩バンドのライブに潜り込み、初恋のドキドキを共有する日々。リーダー芹香の影響で、皆が大胆に変わっていくが、友情の絆は揺るがない。
時は流れ、22年後。40歳になった奈美(篠原涼子)は、仕事熱心な夫と高校生の娘を持つ専業主婦として、何不自由ない生活を送るが、心のどこかで空虚を感じている。ある日、クラス会で久しぶりに再会した芹香(小池栄子)が、実は末期がんを患い余命わずかと告白される。「死ぬ前に、もう一度みんなに会いたい」。芹香の願いを胸に、奈美は疎遠になったメンバー探しを始める。シングルマザーの裕子(ともさかりえ)は経済的に苦しく、風変わりな心(渡辺直美)は過去の傷を抱え、派手な梅(板谷由夏)は表向き華やかだが孤独。皆がそれぞれの人生の苦難に直面している中、奈美はSNSや旧友のつてを頼りに連絡を取る。
再会した6人は、芹香の病室で高校時代の思い出を語り合う。過去のフラッシュバックが交錯し、青春の輝きが蘇る。しかし、芹香の病状が悪化し、皆は本当の気持ちを吐露。友情の再確認を通じて、失っていた自分を取り戻す。クライマックスでは、90年代のヒット曲に合わせたパフォーマンスで、強い気持ちと強い愛を表現。芹香の願いが叶い、グループは新たな絆を結ぶ。エンディングは、未来への希望を残し、観客に温かな余韻を残す。
解説
『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は、韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のリメイクとして、大根仁監督が日本独自の解釈を加えた作品だ。原作の友情と再会のテーマを継承しつつ、舞台を1980年代後半から1990年代中盤の日本に移すことで、コギャル文化を核に据える。ルーズソックスやアムラー・ファッション、プリクラ、カラオケといった当時の風物を詳細に再現し、ノスタルジーを喚起。監督自身がコギャル世代のファンとして、平成7年(1995年)から9年(1997年)を転換点に設定したのは、バブル崩壊後の青春のきらめきと、ミレニアムへの不安を反映するためだ。
物語構造は過去と現在の二重構造で、フラッシュバックを効果的に用い、観客をタイムスリップさせる。音楽は小室哲哉が手がけ、安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」や小沢健二の「強い気持ち・強い愛」など、11曲のJ-POPを挿入。サウンドトラックが感情を増幅し、ダンスシーンで青春のエネルギーを爆発させる。韓国版の政治的背景(民主化運動)を省き、代わりに日本特有のサブカルチャーを強調した点が特徴で、普遍的な友情の物語にローカルカラーを加味している。
テーマ的には、女性の人生の多層性を探求。高校時代の無敵感に対し、大人になっての挫折(離婚、病気、孤独)を描き、再会を通じて自己再生を促す。女優たちの年齢差を活かしたキャスティングが、時間の残酷さと美しさを強調。興行収入9.5億円を記録し、女性観客を中心にヒット。批評家からは、ご都合主義の指摘もあるが、エンタテイメントとしての完成度が高いと評価される。監督の過去作『モテキ』同様、ポップでスタイリッシュな演出が、世代を超えた共感を呼ぶ。最終的に、失われた輝きを「強い気持ち・強い愛」で取り戻すメッセージが、心に響く。
製作背景として、大根監督は原作に惚れ込み、企画を熱望。プロデューサーの川村元気は『君の名は。』のヒット後、本作で音楽とビジュアルの融合を狙った。キャストの豪華さも話題で、篠原涼子の報知映画賞受賞につながった。コロナ禍後の再評価も高く、友情の大切さを再認識させるタイムリーな作品だ。全体として、笑いと涙のバランスが絶妙で、何度でも観返したくなる魅力に満ちている。
キャスト
- 篠原涼子:阿部奈美(現在)
- 広瀬すず:阿部奈美(女子高生時代)
- 小池栄子:伊藤芹香(現在)
- ともさかりえ:伊藤芹香(女子高生時代)
- 渡辺直美:梅(現在)
- 板谷由夏:梅(女子高生時代)
- 池田エライザ:奈々(現在・女子高生時代)
- 山本舞香:佳代子(女子高生時代)
- 野田美桜:真希(女子高生時代)
- 田辺桃子:玲(女子高生時代)
- 富田望生:裕子(女子高生時代)
- 三浦春馬:高橋誠(セイジ)
- リリー・フランキー:阿部健司
- キムラ緑子:阿部和子
- 三田和代:梅の母
- 橋本じゅん:奈々の夫
- 坂口涼太郎:梅の夫
- 宮崎吐夢:奈美の娘
- 高田聖子:心の母
スタッフ
- 監督・脚本:大根仁
- 製作総指揮:山内章弘
- 企画・プロデュース:川村元気
- プロデュース:市山竜次、馬場千晃
- 音楽:小室哲哉
- 撮影:阿部智里
- 美術:種田陽平
- 編集:大関泰幸
- 録音:白取勝利
- 照明:田中幸治
- 衣装:伊藤さとみ
- ヘアメイク:梅田ミキ
- 制作会社:東宝映画、オフィスクレッシェンド
- 製作委員会:「SUNNY」製作委員会
- 配給:東宝
レビュー 作品の感想や女優への思い