フェティッシュ・ファッションとは、過激で露出度が高く、スケスケで挑発的な、フェティッシュな観点で作られた衣服やアクセサリーの一種のスタイルや外観のこと。定義上、ほとんどの人はこれらのスタイルを身につけません。もし誰もが身につけるアイテムであれば、フェティッシュで特別な性質を持つことはありえないからです。
通常、レザー、ラテックスや合成ゴム、プラスチック、ナイロン、PVC、スパンデックス、フィッシュネット、ステンレスなどの素材で作られています。フェティッシュなファッション・アイテムには、ピンヒールの靴やブーツ(とくにバレエ・ブーツ)、ホブル・スカート、コルセット、首輪、全身ラテックスのカチューシャ、ストッキング、ミニスカート、股の開いた下着、ジョックストラップ、おむつ、ガーター、錠前、指輪、ジッパー、眼鏡、手錠、伝統的な衣装をベースに様式化されたコスチューム(例えばほとんど透けないレースのウェディング・ドレスや男性用のランジェリーなど)があります。
フェティッシュ・ファッションをコスチュームと混同してはなりません。どちらも衣服に関係し、イメージを提示することを意図していますが、コスチュームは定義上、性的な意味合いを伴わない人前で見られるもの。これに対し、フェティッシュ・ファッションは通常、親密な場でのものであり、性的な意味合いをもちます。
フェティッシュ・ファッションは通常、コスプレに使われる衣服とは別物であると考えられており、これらのエキゾチックなファッションは、単に着用するためではなく、特定の状況を演出するためのコスチュームとして特別に使用されます。しかし、この2つの分野が重なることもあります。例えば日本では、ラテックス製のスーツ、様式化されたフレンチメイドやプレイボーイバニーの衣装などを着たウェイトレスがいるテーマ・レストランがあります。
専門のフェティッシュ・モデルは、ファッショナブルな衣服のモデルを務めることが多いです。
女性が日常的に外見を磨くために身につける衣服のなかには、コルセットやハイヒールなど、エロティックと考えられてフェティッシュ・ウェアとして認められるものもあります。ほとんどのフェティッシュ・ウェアは、日常的に着るには実用的ではありませんが。女性が着用するフェティッシュ・コスチュームの例としては、ドミナトリクスの衣装があります。このコスチュームは通常、コルセットやビスチェ、ストッキング、そして支配的な外見を強調するための太ももまであるブーツなどのヒールの高い履物など、黒やダークカラーの衣服で構成されています。鞭や乗馬鞭のようなアクセサリーを携帯することも多いです。
歴史
フェティッシュ・ファッションに特定の起源はありません。というのも、特定のサブカルチャーの一部として着用されたり、自分自身のために特別に評価されたりするファッションは、衣服の黎明期から注目されてきたからです。マイケル・ヘイワースのように、19世紀後半のコルセットとホブルスカートの使用がフェティッシュ・ファッションの最初の主流だと主張する学者がいます。これらのアイテムは、それ自体(つまり、女性単体ではなく、コルセットを着けた女性を好きな人)が特別に評価されたのです。
1914年、第一次世界大戦の数週間前、L.リシャールとその妻ナティヴァは、パリにランジェリー会社イヴァ・リシャールを設立しました。オーダーメイドのユニークな作品は、ますます大胆で前衛的なものとなり、1920年代後半には、国際的な通信販売ビジネスで大成功を収めました。リシャールはカタログ用の写真のほとんどを撮影し、ナティヴァがフェティッシュ・モデルを務めることもありました。
彼らの最も象徴的なデザインのひとつは、スタッズをあしらったスチール製の円錐形のブラジャーと貞操帯に、羽飾りをつけたものでした。彼らの成功は、エロティックな書店チェーンを経営していた仕立屋のレオン・ヴィダルに、ダイアナ・スリップという豪華なランジェリー・ブティックをオープンするよう促しました。
レザー・サブカルチャーは、米国のアンダーグラウンドなゲイ・コミュニティのなかに出現し、1958年にはシカゴに最初のゲイ・レザー・バーが開店。この文化は瞬く間に世界中に広まり、1960年代にはロック・ミュージシャンや、『アベンジャーズ』のダイアナ・リグやオナー・ブラックマンなど、全身レザーのカチューシャをつけ、四肢を覆うレザーやラテックスのグローブやブーツを身につけたTV出演者の影響で、より主流になりました。
多くのファッション・デザイナーは、フェティッシュなサブカルチャーの要素を作品に取り入れたり、主流が受け入れない要素に基づいた商品を直接作ったりしています。マルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウエストウッドは、1970年代のパンク・サブカルチャーのために、BDSMにインスパイアされたパンク・ファッションの緊縛的な服をいくつか作りました。最近のフェティッシュ・ウェア・メーカーであるハウス・オブ・ハーロット、トーチャー・ガーデン・クロージング、英国ロンドンのブレスレス、ヴェックス・ラテックス・クロージング、米国カリフォルニアのマダムSは、ラテックスやレザーをアクセサリーとしてではなく、作品のベース素材として使用することに重点を置いています。
出版物
フェティッシュ・ファッションは、『ビザール』などの書籍や雑誌、その他多くのアンダーグラウンドな出版物を通じて、1950年代にアメリカで広まりました。『Skin Two』は、世界的なフェティッシュ・サブカルチャーの様々な側面をカバーする、現代のフェティッシュ雑誌です。その名前は、第二の皮膚としてのフェティッシュ・ウェアにちなんでいます。
主流
フェティッシュ・ファッションは、ランウェイの上でも外でも、主流のファッションに影響を与えてきました。多くの有名デザイナーがフェティッシュ・ウェアをインスピレーションの源とし、ディテールを借りたり、ラテックス、PVC、レース、ビニール、パテントレザーなどの素材を取り入れたりしています。このようなデザイナーには、ティエリー・ミュグレー、ジョナサン・サンダース、アレキサンダー・マックイーン、クリスチャン・ディオール、シャネル、ニコラス・カークウッドなどがいます。アレキサンダー・マックイーンの2016年秋冬プレタポルテ・コレクションは、フェティッシュ・ファッションに影響を受けており、ハーネスやコルセットといった素材やアイテムのインスピレーションがほとんどのルックに見られます。
フェティッシュ服のラグジュアリー市場のために特別に作られたブランドもあります。イリヤ・フリートとレシャ・シャルマの夫妻が率いるFleet Ilyaは、ファッションとBDSMの共存をコンセプトとして宣伝しはじめました。2006年にシエナ・ミラー、2009年にリアーナがFleet Ilyaのレザーハーネスを着用したことがきっかけとなり、2009年秋冬コレクションでは、ファッション・アイテムとボンデージ・ツールを同時に発表。2010年には、ランキンとのコラボレーションによるRestraint by Fleet Ilyaの展示会とポップアップショップが開催されました。その後、コム・デ・ギャルソン、ジョナサン・サンダース、ディオン・リーなど、主流ブランドとのコラボレーションを行い、ハイファッションとフェティッシュ・ウェアの境界線を曖昧にするFleet Ilyaの献身的な姿勢を確立。
ニューヨークを拠点とするポストフェティッシュ・レザーブランドのザナ・ベインは、2010年にザナ・ベインが設立したブランド。彼の作品は、ビヨンセやレディー・ガガなどのセレブリティが着用しています。ザナ・ベインはマーク・ジェイコブスやコム・デ・ギャルソンなどのブランドともコラボレーションも行なっています。トッド・ペンドゥはコム・デ・ギャルソン時代にザナ・ベインと仕事をはじめ、2012年にザナ・ベインのフルタイムのクリエイティブ・パートナーとなっりました。アツコ クドウ(工藤亜津子)もまた、フェティッシュ・ファッションの影響を明確に受けたブランドで、ラテックスゴムのみで作られたレディス・ウェアをデザイン・製造しています。
ストリート・ファッションもフェティッシュ・ファッションの影響を受けています。2016年後半から2017年にかけて、いくつかのフェティッシュ・ファッションの要素が世界中の既製服やストリートウェアに登場しました。これらの要素には、チョーカー、フィッシュネット(網タイツ)、コルセット、腿まであるブーツなどのアイテムをはじめ、ストラップ、バックル、ピアスリング金具、チェーンなどのディテール、パテントレザーやビニールなどの素材を含んでいます。
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