見どころ
チェコのアカデミー賞といわれるチェコ・ライオン賞や数々の映画祭でノミネートされた話題作。元オリンピック選手がポルノ業界のトップに昇り詰めるまでを綴る。
あらすじ
高飛び込みのチェコ選手権で優勝し、オリンピックの代表に選出されたアンドレア・アブソロノバ。しかし、練習中に脊椎を損傷し、スポーツ選手としてのキャリアを強制的に終了させられます。失意のどん底にいたアンドレアは、恋人の影響でポルノ業界に入り込みます。
感想
1996年、チェコのダイバー、アンドレア・アブソロノヴァは大成功を収める運命にありました。彼女は国内大会で優勝を重ね、オリンピック出場を決めていた。しかし、飛び込みのアクシデントで脊髄を損傷。彼女は打ちのめされ、目標を失ってしまいます。そんな時、ボーイフレンドが彼女にアダルト・ビデオを作るよう説得します。
アンドレア・アブソロノヴァの実話を基にした『リア ポルノの女王』は、可能性を秘めた作品ですが、結局のところ深みもなく、印象にも残りにくいです。スポーツ選手としての名声から、何もない大人の映画スターとしての名声へという弧は、誰も共感できないし、共感したくもありません。自分を奮い立たせることについては賞賛に値するのですが、もしそれが物語の教訓だとしたら、脚本家兼監督はその教訓のために奇妙な題材と結末を選んだことになります。
AV業界の汚い部分を見せるのが目的かと思ったら、それはまったく検証されていません。その結果、何の収穫もない単純な歴史レッスンのような、極めて直線的で何の発見もないものになってしまっています。チェコとスロバキアでは衝撃作となっても、先進国の枯れた人たちにとっては、どこにでも転がってる話ともいえるわけです。
それでも、中々面白いです。アンドレア・アブソロノヴァはそれなりに魅力的なキャラクターで、ナタリア・ジェルマーニは彼女を演じて堅実な演技を見せてくれます。興味深い小ネタもいくつかあります。もっとも、どれもこの映画の画一的な印象を払拭するほどの内容ではありませんが。
解説
感想では厳しく述べたので、もう少し冷静に『リア ポルノの女王』を解説します。そもそも 邦題がエロ釣りになっていて、原題のチェコ語(Její tělo)も英題(Her Body)も意味するものは彼女の身体なんですね。
1996年、19歳のチェコ人ダイバー、アンドレア・アブソロノヴァは、チェコ高飛び込みナショナルチームの一員でしたが、1996年アトランタ・オリンピックの練習中に脊椎を損傷。1999年、怪我から回復した彼女は、2000年シドニー・オリンピックの出場権を得られなかったため、ハードコア・ポルノに転向し、レア・デ・メイとして再起を図ります。
『リア ポルノの女王』は、野心と社会的期待の複雑さを巧みに織り交ぜながら、アイデンティティと自律性を探る説得力のある作品。ナターリア・ジェルマーニの見事な演技は、自分の存在の二面性を操る女性の内なる苦悩を伝えています。そのうえ、チーサゾフスカーの演出は、この映画の知的な底流を強めています。アスレチックとアダルト映画の組み合わせは、女性が自分の身体とアイデンティティを取り戻すために経験する葛藤の力強いメタファー。この映画は挑戦と刺激を与え、クレジットが流れた後も長く残る忘れがたい印象を残してくれます。
『リア ポルノの女王』の公開は2023年11月16日。15歳以上を対象とした検閲版と18歳以上を対象とした無修正版の2種類が公開されました。
キャスト
- ナタリア・ジェルマーニ(アンドレア・アブソロノヴァ役)
- デニサ・バレショヴァー(ルーシー・アブソロノヴァ役)
- ズザナ・マウレリー(アブソロノヴァの母親役)
- マーティン・フィンガー(アブソロノヴァの父親役)
- ズザナ・スティヴィノヴァ
- シリル・ドブリー
- マルティナ・ムラクヴィオヴァ
レビュー 作品の感想や女優への思い