2015年製作の韓国映画『ミス・ワイフ』(原題:미쓰 와이프)は、キャリアウーマンが事故をきっかけに子持ち主婦に変身し、家族愛を学ぶハートフルなラブコメディ。オム・ジョンファとソン・スンホン主演で、笑いと感動が交錯する逆転人生を描く。監督はカン・ヒョジン、124分。
基本情報
- 邦題:ミス・ワイフ
- 原題:미쓰 와이프
- 英題:Wonderful Nightmare
- 公開年:2015年
- 製作国:韓国
- 上映時間:124分
- ジャンル:コメディ
見どころ
逆転人生にパニクりながらも家族愛に目覚めていく主人公を、ラブコメクイーンのオム・ジョンファが快演。対する無駄にハンサムな夫を、ソン・スンホンが自然体で見せる。
女優の活躍
『ミス・ワイフ』の主演を務めるオム・ジョンファは、韓国芸能界で「ラブコメ・クイーン」として知られる国民的スターであり、歌手としても女優としても長年活躍しています。本作では、勝訴率100%の敏腕弁護士ヨヌと、突然子持ち主婦に変身する二つの対極的な役柄を見事に演じ分け、観客を引き込みました。ヨヌの冷徹で自信に満ちたキャリアウーマンの姿から、平凡で少しだらしない主婦としてのコミカルな表情まで、彼女の演技の幅広さが際立っています。特に、戸惑いながらも家族との絆を深めていく過程での感情の変化は、観客に笑いと涙を提供し、彼女の演技力が作品の感動を一層深めています。オム・ジョンファは、コミカルなシーンでは軽快なテンポで笑いを誘い、感動的な場面では繊細な感情表現で心を打ちます。彼女の存在感は、物語のファンタジー要素と現実的な家族愛のバランスを保つ鍵となり、批評家や観客から高い評価を受けました。
脇を固める女優では、ラ・ミランがヨヌの主婦仲間ミソン役で登場し、ユーモラスで温かい演技で作品に彩りを添えています。ラ・ミランは、韓国映画やドラマで個性的な脇役として知られ、本作でもその存在感を発揮。ミソン役では、町内の主婦たちとの井戸端会議でコミカルな掛け合いを見せ、ヨヌの新たな生活にリアリティを与えています。また、若手女優ソ・シネがヨヌの仮の娘ハル役を演じ、思春期の生意気な少女像を自然体で表現。オム・ジョンファとの母娘の掛け合いは、物語の感情的な軸の一つとなっています。
女優の衣装・化粧・髪型
オム・ジョンファ演じるヨヌの衣装、化粧、髪型は、彼女の二つの生活を象徴的に表現しています。キャリアウーマンとしてのヨヌは、洗練された都会的なスタイルが特徴です。シャープなスーツやタイトなドレス、ハイヒールといった衣装は、彼女のプロフェッショナルで自立した性格を強調。化粧は濃いめのアイラインとリップで、自信と威厳を漂わせ、髪型はタイトにまとめられたアップスタイルやストレートヘアで、スマートでクールな印象を与えます。これに対し、主婦としてのヨヌは一変し、ヨレヨレのTシャツやエプロン、動きやすいカジュアルな服装が登場。化粧はほぼスッピンに近く、ボサボサの髪やラフに結んだポニーテールが、慌ただしい主婦生活を象徴しています。この対比は、ヨヌの内面的な変化を視覚的に表現する重要な要素となっており、観客に彼女の混乱と成長を強く印象づけます。
ラ・ミラン演じるミソンは、カラフルで少し派手な花柄のブラウスやカジュアルなパンツスタイルで、庶民的で親しみやすい主婦像を体現。化粧は控えめで、日常的な生活感を強調しています。ソ・シネ演じるハルは、ティーンらしいカジュアルなTシャツやジーンズ、時折見せる派手なアクセサリーで、思春期の少女らしさを表現。彼女の髪型はルーズなポニーテールやカジュアルなダウンスタイルで、若々しさと反抗的な態度を反映しています。これらの衣装やスタイルは、キャラクターの個性や物語の状況を効果的に補強しています。
あらすじ
独身で勝訴率100%の敏腕弁護士ヨヌ(オム・ジョンファ)は、恋愛や結婚に興味を持たず、仕事一筋の生活を送っています。幼少期に父親を海難事故で、母親を病気で亡くし、天涯孤独となった彼女は、他人に頼らず自立することを選んだ結果、ソウル大学を卒業し高給取りの弁護士に。念願のニューヨーク本社への転勤が決まった矢先、居眠り運転の車を避けようとして交通事故に遭い、生死の境を彷徨います。そこで、怪しげな男イ所長(キム・サンホ)から提案を受けます。それは、1か月間、誰にも正体を見破られずに他人の人生を生きれば元の生活に戻れるというもの。渋々承諾したヨヌが目を覚ますと、彼女は2人の子持ちの主婦に変身していました。豪華なマンションから狭いアパートへ、華やかな独身生活から家事と育児に追われる生活へと一変。夫ソンファン(ソン・スンホン)と、思春期の娘ハル(ソ・シネ)、幼い息子ハヌルとの生活に戸惑いながらも、ヨヌは家族との絆を少しずつ築いていきます。最初は元の人生に戻ることだけを考えていたヨヌですが、家族愛の温かさに触れ、生きる意味を見出していく過程が描かれます。
解説
『ミス・ワイフ』は、ファンタジー要素を取り入れたラブコメディでありながら、家族愛や人生の価値について深く考えさせるハートフルな作品です。物語の核となる「人生の入れ替わり」という設定は、ヨヌが自分の価値観を再評価するきっかけを提供し、観客にも「本当に大切なものは何か」を問いかけます。ヨヌの冷徹な弁護士生活は、物質的な成功を象徴する一方で、孤独や心の空虚さを暗示。対して、主婦生活は経済的には貧しくとも、家族との絆や愛情の豊かさを教えてくれます。この対比は、現代社会におけるキャリアと家庭のバランスという普遍的なテーマを浮き彫りにします。
監督のカン・ヒョジンは、『花嫁はギャングスター』で培ったコメディのセンスを本作でも発揮。軽快なテンポとユーモラスなシーンで物語を進めつつ、感動的な場面では丁寧な演出で観客の心を掴みます。特に、ヨヌと家族の関係が深まるシーンでは、細やかな感情の描写が光ります。オム・ジョンファとソン・スンホンのケミストリーも本作の魅力の一つ。ソン・スンホンは、これまでの硬派なイメージを脱ぎ捨て、温厚で愛妻家の公務員ソンファンを自然体で演じ、新たな魅力を披露しています。
物語のファンタジー設定は、ヨヌの成長を加速させる装置として機能。イ所長の存在や「中継所」という設定は、ウォーレン・ベイティ主演の『天国から来たチャンピオン』(1978年)に着想を得たと思われ、死と再生を通じて人生の意味を探るテーマが共通しています。終盤、ヨヌが元の人生に戻るか、家族との新たな生活を選ぶかの選択は、観客に深い余韻を残します。批評家からは、ありふれた設定ながらも、キャストの演技と巧みなストーリー展開で新鮮な感動を与える作品として評価されています。
キャスト
- ヨヌ:オム・ジョンファ(敏腕弁護士から主婦に変身する主人公。冷徹なキャリアウーマンとコミカルな主婦を演じ分ける)
- ソンファン:ソン・スンホン(ヨヌの仮の夫。区役所に勤める愛妻家の公務員)
- イ所長:キム・サンホ(ヨヌに人生の入れ替わりを提案する怪しげな男)
- ミソン:ラ・ミラン(ヨヌの主婦仲間。ユーモラスで温かい存在)
- ハル:ソ・シネ(ヨヌの仮の娘。思春期の生意気な少女)
- ハヌル:コ・スヒ(ヨヌの仮の息子。純粋で愛らしい幼稚園児)
ほかに、イ・ジュニョクなど。
スタッフ
- 監督:カン・ヒョジン(『花嫁はギャングスター』で知られるコメディの名手)
- 脚本:キム・ジェヨン
- 音楽:キム・エウニョン
- 製作:2015年、韓国
- 配給:クロックワークス(日本公開:2016年8月13日)
結論
『ミス・ワイフ』は、笑いと涙が交錯するハートフルなラブコメディであり、家族愛と人生の価値を再発見する物語です。オム・ジョンファの卓越した演技、ソン・スンホンの新たな魅力、そして巧みな演出が織りなす本作は、観客に温かい感動を与える一作です。衣装や髪型の変化が物語のテーマを視覚的に補強し、キャストとスタッフの力が結集した作品として、韓国映画の魅力を存分に味わえるでしょう。
レビュー 作品の感想や女優への思い