2016年の英国映画『ダッズアーミー』は、1968~1977年のBBC人気ドラマを基にしたコメディ。第二次世界大戦下、イングランドの国防義勇軍がスパイ疑惑と戦いながら巻き起こす騒動を描く。トビー・ジョーンズ、ビル・ナイ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズら豪華キャストが出演。監督はオリヴァー・パーカー。
基本情報
- 邦題:ダッズアーミー
- 原題:Dad’s Army
- 公開年:2016年
- 製作国:英国
- 上映時間:99分
女優の活躍
『ダッズアーミー』には、キャサリン・ゼタ=ジョーンズやサラ・ランカシャーなど、英国映画界を代表する実力派女優が出演し、作品に深みと魅力を加えています。特にキャサリン・ゼタ=ジョーンズは、謎めいたジャーナリスト、ローズ・ウィンターズ役で登場し、物語の鍵を握るキャラクターとして際立った存在感を示しています。彼女の演技は、魅惑的かつ狡猾な女性像を見事に体現し、コミカルな国防義勇軍の面々との対比で物語に緊張感とユーモアをもたらしました。ゼタ=ジョーンズは、過去の作品『シカゴ』(2002年)でのアカデミー賞受賞歴からもわかるように、強い個性と表現力で観客を引き込み、本作でもそのカリスマ性を遺憾なく発揮しています。
一方、サラ・ランカシャーはミセス・パイク役で登場し、家庭的ながらも芯の強い女性を演じています。彼女の演技は、戦時下の小さな町の日常生活に温かみを加え、コミカルなシーンでも感情的な深みを表現。特に、彼女のキャラクターが隊員たちと織りなす掛け合いは、物語の軽快なトーンを支える重要な要素となっています。ランカシャーは英国ドラマ『ハッピー・ヴァレー』などで知られる実力派で、本作でもその安定した演技力で脇を固めています。
また、アリソン・ステッドマンやアネット・クロスビーなど、ベテラン女優も脇役として登場し、ウォルミントン・オン・シーの町の雰囲気をリアルに描き出しています。これらの女優陣は、男性的な国防義勇軍のコメディを引き立てつつ、女性キャラクターの視点から戦時下の社会を映し出す役割を果たしました。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装、化粧、髪型は、1940年代の戦時下イギリスを忠実に再現しつつ、各キャラクターの個性を強調するデザインが施されています。キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じるローズ・ウィンターズの衣装は、都会的で洗練されたジャーナリストらしいスタイルが特徴です。彼女はタイトなスカートやエレガントなブラウス、トレンチコートを着用し、1940年代のファッションを現代的な魅力で表現。深紅や濃紺といった大胆な色使いが、彼女のミステリアスなキャラクター性を際立たせます。化粧は、赤い口紅と繊細なアイラインで強調されたクラシックな美しさが特徴で、髪型はゆるやかなウェーブのかかったショートヘアで、戦時下の女性らしい上品さを演出しています。
サラ・ランカシャー演じるミセス・パイクの衣装は、より家庭的で実用的なスタイルです。花柄のワンピースやエプロン、控えめなカーディガンが彼女の温かみのあるキャラクターを反映。化粧はナチュラルで、薄いファンデーションと軽い口紅が中心で、戦時下の質素な生活を表現しています。髪型はシンプルなアップスタイルや短めのボブで、日常的な雰囲気を強調しています。
その他の女性キャラクターも、1940年代の典型的な英国の田舎町のファッションを反映し、ウール素材のドレスや実用的な帽子を着用。衣装デザインは、戦時下の物資不足を意識しつつも、女性たちの個性や社会的役割を表現する工夫が施されています。全体的に、衣装とメイクは当時の時代背景を忠実に再現しつつ、コメディ映画としての軽快さを損なわないバランスが取られています。
あらすじ
1944年4月、第二次世界大戦下のイングランド、ウォルミントン・オン・シーを舞台に、連合軍のフランス侵攻を控えた国防義勇軍(ホーム・ガード)の小隊が活躍します。この小隊は、年配の男性や若者で構成され、銀行員のジョージ・メインウェアリング隊長(トビー・ジョーンズ)やその副官ウィルソン軍曹(ビル・ナイ)が率いています。彼らは、ドイツのスパイ活動に対抗するため、ドーバー海峡沿岸を警備する任務を担っています。
物語は、MI5のエージェントがドイツのスパイ、ルントを追跡するシーンから始まります。ルントが伝書鳩を使って情報を送ろうとしたところを射殺されますが、鳩は飛び去り、重要な情報が敵に渡る危機が迫ります。一方、ウォルミントン・オン・シーの小隊は、軍事的訓練不足やコミカルな失敗を繰り返しながらも、町を守る決意に燃えています。
そこへ、謎めいた女性ジャーナリスト、ローズ・ウィンターズ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)が現れ、隊員たちを取材すると称して町に滞在。彼女の魅力に小隊員たちは浮き足立ちますが、やがて彼女がスパイではないかという疑念が浮上します。隊員たちは、スパイの正体を突き止め、連合軍の作戦を守るため奮闘。女性たちも町の防衛活動に参加し、ユーモラスな騒動が巻き起こります。最終的に、小隊は一致団結し、危機を乗り越え、町の平和を守り抜きます。
解説
『ダッズアーミー』は、1968~1977年にBBCで放送された同名テレビドラマの映画化作品で、英国のコメディ文化を象徴する作品です。原作ドラマは、第二次世界大戦中の国防義勇軍のユーモラスな日常を描き、英国で広く愛されました。映画版は、このノスタルジーを現代に蘇らせつつ、豪華キャストと現代的な映像技術で新たな魅力を加えています。
本作の特徴は、戦時下の緊張感とコメディの軽妙さを絶妙に融合させた点にあります。国防義勇軍のメンバーたちは、軍事的な訓練や規律に欠けるものの、愛国心と仲間意識で結ばれており、彼らの不器用な努力が笑いを誘います。特に、トビー・ジョーンズ演じるメインウェアリングの真面目すぎる性格や、ビル・ナイの落ち着いた皮肉屋ぶりが、英国らしいユーモアを体現。キャサリン・ゼタ=ジョーンズの登場は、物語にサスペンスの要素を加え、単なるコメディに留まらない深みを与えています。
また、映画は1940年代の英国社会を丁寧に再現し、戦時下のコミュニティの絆や女性の役割の変化も描いています。女性キャラクターが積極的に物語に関与することで、現代的な視点も取り入れられており、特にローズのキャラクターは、時代背景と現代の観客の感性を繋ぐ役割を果たしています。
批評面では、Filmarksで平均3.2点とまずまずの評価を受けており、原作ファンを中心に支持を集めました。一方で、原作の雰囲気を完全に再現できなかったとの意見もあり、ノスタルジー重視の作品として賛否両論が存在します。それでも、豪華キャストと軽快なユーモアは、幅広い観客に楽しめる作品に仕上がっています。
キャスト
- ジョージ・メインウェアリング隊長:トビー・ジョーンズ – 真面目だが少し滑稽な小隊のリーダー。
- ウィルソン軍曹:ビル・ナイ – 冷静で皮肉屋の副官。
- ローズ・ウィンターズ:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ – 謎めいたジャーナリストで物語の鍵を握る。
- アーサー・ウィルソン:ダニエル・メイズ – 若々しくエネルギッシュな隊員。
- ゴッドフリー伍長:マイケル・ガンボン – 年配で穏やかな隊員。
- ミセス・パイク:サラ・ランカシャー – 温かみのある町の女性。
- フランク・パイク:ブレイク・ハリソン – 若い隊員でミセス・パイクの息子。
- カミンガム少佐:マーク・タンディ – MI5のエージェント。
- ミークス大尉:アンドリュー・ハヴィル – カミンガムの相棒。その他、アリソン・ステッドマン、アネット・クロスビー、フェリシティ・モンタギューらが脇を固め、英国のベテラン俳優陣がコメディを盛り上げます。
スタッフ
- 監督:オリヴァー・パーカー – 『オセロ』(1995年)や『理想の夫婦の作り方』(1999年)で知られる英国の名監督。
- 脚本:ハミッシュ・マコール – 英国コメディのトーンを巧みに再現。
- 製作:ダミアン・ジョーンズ – 『マーガレット・サッチャー 鉄の女の真実』(2011年)など実績豊富。
- 撮影:クリストファー・ロス – 戦時下の英国の風景を美しく捉える。
- 音楽:チャーリー・モール – 軽快でノスタルジックなスコアを提供。
- 衣装デザイン:ディナ・コリン – 1940年代のファッションを忠実に再現。
- 編集:ガイ・ベンスリー – コメディのテンポ感を維持。
まとめ
『ダッズアーミー』は、英国の戦時下コメディの伝統を受け継ぎつつ、現代的な感性を取り入れた作品です。キャサリン・ゼタ=ジョーンズやサラ・ランカシャーらの女優陣の活躍、時代を反映した衣装とメイク、ユーモラスで心温まるストーリーが魅力です。豪華キャストと丁寧な時代再現により、原作ファンだけでなく新たな観客にも楽しめる一作となっています。
レビュー 作品の感想や女優への思い