『オブセッション 歪んだ愛の果て』(原題:Obsessed)は2009年に米国で公開された、ビヨンセ主演のサイコ・サスペンス映画。幸せな家庭を築くシャロンとデレクが、夫に執着する秘書リサのストーカー行為により危機に瀕する物語。全米で初登場1位を獲得。
基本情報
- 邦題:オブセッション 歪んだ愛の果て
- 原題:Obsessed
- 公開年:2009年
- 製作国:米国
- 上映時間:108分
- ジャンル:ドラマ
女優の活躍
『オブセッション 歪んだ愛の果て』は、ビヨンセ・ノウルズ(以下、ビヨンセ)が主演を務めた作品で、彼女の女優としてのキャリアにおいて重要な一歩となりました。ビヨンセは本作でシャロン・チャールズ役を演じ、愛する夫と子を守るために戦う強い女性像を体現しました。彼女は歌手としての成功で知られていますが、『ドリームガールズ』(2006年)での演技が高く評価された後、本作でさらにドラマチックな役柄に挑戦。シャロンの感情の起伏、特にリサの異常な行動に対する恐怖や怒りを表現する場面では、ビヨンセの感情表現の幅が光ります。特にクライマックスの対決シーンでは、身体的なアクションも含め、迫真の演技で観客を引き込みました。
もう一人の主要な女優、アリ・ラーターは、ストーカー役のリサ・シェリダンを演じ、物語の緊張感を高める重要な役割を果たしました。ラーターは『ファイナル・デスティネーション』シリーズで知られていましたが、本作では狂気的な執着心を持つ女性を見事に演じ、観客に不気味な印象を与えました。彼女の冷ややかな微笑みや、計算された誘惑の仕草は、リサのキャラクターに深みを与え、ビヨンセとの対比を際立たせました。ラーターの演技は、ストーカーの心理をリアルに描き出し、物語のサスペンス要素を強化しました。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装デザインはマヤ・リーバーマンが担当し、キャラクターの個性や立場を反映した衣装が特徴です。ビヨンセ演じるシャロンの衣装は、家庭的な女性としての温かみと、洗練された美しさを両立させるデザインが採用されました。シャロンの衣装は主に落ち着いた色調(ベージュ、ホワイト、ソフトパステル)のドレスやブラウスで、彼女の優雅さと母親としての柔らかさを強調。化粧はナチュラルメイクが中心で、控えめなリップカラーと自然な肌の輝きを活かし、シャロンの誠実さを表現しました。髪型は、シンプルなロングヘアをゆるくウェーブさせたスタイルや、アップスタイルで、家庭とキャリアを両立する女性像を演出。
一方、アリ・ラーター演じるリサの衣装は、彼女の誘惑的で攻撃的な性格を反映しています。タイトなドレスや深いネックラインのトップス、鮮やかな赤や黒といった大胆な色使いが特徴で、シャロンとの対比を強調。リサの化粧は、濃いアイラインと鮮やかなリップカラーで、挑発的かつ妖艶な印象を与えます。髪型はブロンドのロングヘアをストレートまたは軽くカールさせ、計算された魅力的な外見を演出。物語が進むにつれ、リサの衣装はより過激になり、彼女の精神的な不安定さを視覚的に表現しました。
あらすじ
シャロン(ビヨンセ)とデレク(イドリス・エルバ)は、幼い息子カイルと共に幸せな家庭を築いていました。デレクの昇進を機に豪華な新居に引っ越し、理想的な生活を送っていた二人。しかし、デレクの職場に派遣社員としてやってきたリサ(アリ・ラーター)が、物語を一変させます。リサはデレクに異常な愛情を抱き、彼を誘惑する行動を繰り返します。最初は無害に見えたリサの行動は、次第にストーカー行為へとエスカレート。デレクが拒絶しても、リサの執着は止まらず、シャロンやカイルにまで危険が及びます。リサの自殺未遂をきっかけに、事態はさらに複雑化し、シャロンは夫の不倫を疑い始めます。最終的に、シャロンはリサの狂気に対抗し、家族を守るために立ち上がることを決意。緊張感あふれる対決が展開され、シャロンの勇気と決意が試されます。
解説
『オブセッション 歪んだ愛の果て』は、1990年代のサスペンス映画『危険な情事』(1987年)に似たテーマを持つサイコ・サスペンスです。本作は、ストーカーという心理的な脅威を通じて、家庭や信頼関係の脆さを描き出します。しかし、批評家からは、リサの執着の動機が十分に描かれていない点や、人種間の対立というテーマが未探求に終わった点で批判を受けました。それでも、ビヨンセとアリ・ラーターの対照的な演技、緊張感のあるストーリー展開、そして全米興行初登場1位を記録した商業的成功は注目に値します。
物語は、現代社会における職場での関係性や、家族を守るための女性の強さをテーマにしています。ビヨンセのキャラクターは、被害者から自ら行動を起こすヒーローへと変化し、女性のエンパワーメントを象徴。特に、クライマックスの肉体的な対決は、観客に強い印象を与え、ビヨンセのアクションシーンへの挑戦が話題となりました。一方で、リサのキャラクターは、ステレオタイプな「悪女」像に留まり、心理的な深掘りが不足しているとの意見もあります。
キャスト
- シャロン・チャールズ:ビヨンセ・ノウルズ(日本語吹替:林真理花)。愛する夫と子を守る強い妻。家族の危機に立ち向かう。
- デレク・チャールズ:イドリス・エルバ(日本語吹替:乃村健次)。成功したビジネスマンで、リサの執着の対象。
- リサ・シェリダン:アリ・ラーター(日本語吹替:本田貴子)。デレクに異常な愛情を抱く派遣秘書。
- ベン:ジェリー・オコンネル(日本語吹替:中谷一博)。デレクの同僚。
- リース:クリスティーン・ラーチ(日本語吹替:野沢由香里)。デレクの友人。
その他、ブルース・マッギル、スカウト・テイラー=コンプトン、マシュー・ハンフリーズ
スタッフ
- 監督:スティーヴ・シル。本作が長編初監督作品。緊張感のある演出が特徴。
- 脚本:デヴィッド・ローヘリー。サスペンスの展開を巧みに構築。
- 製作:ビヨンセ・ノウルズ、マシュー・ノウルズ、グレン・S・ゲイナー、アーヴィン・“マジック”・ジョンソン、デヴィッド・ローヘリー、デイモン・リー、ジェフ・グラウプ。ビヨンセ自身も製作に参加し、作品への関与を深めた。
- 衣装デザイン:マヤ・リーバーマン。キャラクターの個性を引き立てる衣装を担当。
- 編集:ポール・セイダー。緊迫感を高める編集が物語のテンポを支えた。
- 音楽:ジェームズ・ドゥーリー。サスペンスを強調する劇伴を提供。
まとめ
『オブセッション 歪んだ愛の果て』は、ビヨンセとアリ・ラーターの対照的な演技が光るサイコ・サスペンス映画です。衣装や化粧、髪型はキャラクターの性格を強調し、物語の緊張感を高めました。家族を守る女性の強さと、ストーカーの狂気を描いた本作は、商業的成功を収めつつ、テーマの深掘りに課題を残しました。
レビュー 作品の感想や女優への思い