2025年8月22日全米公開の「Honey Don’t!」はイーサン・コーエン監督のダーク・コメディ。マーガレット・クアリー演じる探偵ハニーが謎の教会絡みの怪死事件を追う。オーブリー・プラザ、クリス・エヴァンス共演。
基本情報
- 原題：Honey Don’t!
- 公開年：2025年
- 製作国：米国
- 上映時間：88分
あらすじ
映画「Honey Don’t!」は、カリフォルニア州ベーカーズフィールドを舞台にしたネオノワール・ダークコメディです。主人公の私立探偵ハニー・オドナヒュー（マーガレット・クアリー）は、ある女性の不可解な死を調査する中で、謎めいたカルト教会とそのカリスマ的リーダー、ドリュー牧師（クリス・エヴァンス）にたどり着きます。調査を進めるハニーは、警察官MJ（オーブリー・プラザ）や同僚の私立探偵マーティ（チャーリー・デイ）と協力しながら、事件の背後に潜む複雑な陰謀を解き明かそうとします。物語は、ユーモアと緊張感、そして性的な要素が交錯する独特のトーンで展開し、観客を予測不能な展開へと引き込みます。この作品は、イーサン・コーエンとトリシア・クックによる「レズビアンB級映画三部作」の第2作目であり、前作『Drive-Away Dolls』（2024年）に続く、軽快かつ大胆なストーリーテリングが特徴です。
女優の活躍
本作「Honey Don’t!」の主演を務めるマーガレット・クアリーは、私立探偵ハニー・オドナヒュー役で圧倒的な存在感を発揮しています。彼女は前作『Drive-Away Dolls』でもイーサン・コーエン監督とタッグを組み、そのコミカルかつ大胆な演技が高く評価されました。『Honey Don’t!』では、ハニーの知的でタフな一面と、ユーモラスで人間味あふれるキャラクターを見事に演じ分け、物語の中心として観客を引きつけます。特に、カルト教会のリーダーとの対峙シーンでは、クアリーの鋭い表情と軽妙な台詞回しが光り、批評家からも「宝石のようなパフォーマンス」と称賛されています。彼女の演技は、ネオノワールの雰囲気とコメディの軽快さを融合させる鍵となり、映画の独特なトーンを支えています。
また、オーブリー・プラザが演じる警察官MJは、クアリーのハニーと対等に渡り合う重要なキャラクターです。プラザは、硬軟自在な演技で知られ、本作でもその個性が存分に発揮されています。MJのシニカルで少しミステリアスな魅力は、物語に深みを加え、ハニーとの軽妙な掛け合いがコメディ要素を強化しています。彼女の独特なユーモアセンスと、時に挑発的な態度が、観客に強い印象を与えます。予告編での「カツカツ音を鳴らすヒール、大好き」という台詞は、プラザのアドリブ的な魅力が垣間見える瞬間として、ファンから特に注目されています。
その他、タリア・ライダーやクリステン・コノリー、ガビー・ビーンズといった女優陣も脇を固め、多彩なキャラクターで物語に彩りを添えています。ライダーはハニーの姪役で若々しいエネルギーを、ビーンズはハニーの助手役でクールなサポート役を演じ、女性キャラクターの多様性が本作の魅力の一つとなっています。
女優の衣装・化粧・髪型
マーガレット・クアリー演じるハニー・オドナヒューの衣装は、ネオノワールらしいレトロモダンなスタイルが特徴です。彼女は、フィット感のあるトレンチコートやハイウエストのスラックス、クラシックなブラウスを着用し、1940年代の探偵映画を彷彿とさせるシルエットを作り出しています。特に、ダークトーンのフェドーラ帽と赤いリップがアクセントとなり、ハニーのタフで魅力的なキャラクターを強調しています。化粧は、ナチュラルながらも目元を強調したアイラインと、鮮やかな赤リップがトレードマークで、彼女の強い意志を表現。髪型は、ゆるくウェーブのかかったショートボブで、動きやすさと女性らしさを両立させています。
オーブリー・プラザのMJは、警察官としての機能的なユニフォームを基調にしつつ、個性的なアレンジが施されています。彼女の衣装には、タイトなシャツやレザージャケットが含まれ、現代的で少しパンクな雰囲気を漂わせます。化粧は控えめで、素肌感を活かしたメイクに、ダークトーンのアイシャドウが彼女のミステリアスな魅力を引き立てます。髪型は、肩までの長さでラフにまとめられたポニーテールや、時折見せる無造作なダウンスタイルが、MJの自由奔放な性格を表現しています。
その他の女優陣も、物語の舞台であるベーカーズフィールドの雰囲気やカルト教会の奇妙な世界観を反映した衣装が特徴的です。タリア・ライダーの若々しいカジュアルスタイルや、ガビー・ビーンズのクールで実用的な助手ルックは、それぞれのキャラクターの個性を際立たせ、視覚的な多様性を生み出しています。全体的に、衣装デザインはステファン・デシャンの手によるもので、ノワールとコメディのバランスを巧みに取り入れたビジュアルが映画の雰囲気を高めています。
解説
「Honey Don’t!」は、イーサン・コーエン監督と妻トリシア・クックが共同で脚本を手掛けた作品で、コーエン兄弟の作品に通じるユーモアと風刺が散りばめられていますが、より性的で大胆な要素が強調されています。本作は、伝統的なフィルムノワールの枠組みを借りつつ、現代的な視点とLGBTQ+のテーマを融合させたユニークな作品です。コーエン兄弟の過去作『Raising Arizona』のような彼此に似たユーモアや暴力が特徴でしたが、本作ではさらに過激で遊び心のあるアプローチが取られています。批評家からは、物語のプロットにやや散漫な部分があるとの指摘もありますが、マーガレット・クアリーとオーブリー・プラザのケミストリーや、カルト教会という奇抜な設定がもたらす予測不能な展開が、観客に「軽妙で楽しい時間」を提供すると評価されています。
本作は、2025年5月24日に第78回カンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニング部門でワールドプレミアを迎え、6分半のスタンディングオベーションを受けたことでも話題となりました。批評家の反応は賛否両論で、Rotten Tomatoesでは42%の支持率、Metacriticでは46/100のスコアを記録しています。『Hollywood Reporter』は、キャストの演技や世界観の構築を称賛しつつ、「ギャグの連続で方向性が見えない」と評し、『IndieWire』は「才能の無駄遣い」と厳しい意見を述べました。一方で、『Collider』はクアリーの演技や現代的な「ワイルド・ウェスト」の雰囲気、笑えるスラップスティックなユーモアを高く評価しています。全体として、本作は完璧ではないものの、ノワールファンやコーエン監督のユニークなスタイルを愛する観客には魅力的な作品と言えるでしょう。
キャスト
- マーガレット・クアリー：ハニー・オドナヒュー（私立探偵）
- オーブリー・プラザ：MJ・ファルコン（警察官）
- クリス・エヴァンス：ドリュー・デヴリン牧師（カルト教会のリーダー）
- チャーリー・デイ：マーティ・メタカウィッチ（私立探偵）
- ビリー・アイクナー
- クリステン・コノリー：ハニーの姉
- ガビー・ビーンズ：スパイダー（ハニーの助手）
- タリア・ライダー：コリン（ハニーの姪）
- レラ・アボヴァ：シェール
- ジャクニア：ヘクター
- ドン・スウェイジ：ゲイリー（ピアノバーの人物）
- ジョシュ・パフチェク：シュギー（ドリュー牧師の助手）
- レナ・ホール：エル（ピアノバーの人物）
- ケイル・ブラウン：ハニーの父親
- アレクサンダー・カルストイウ：ミッキー
- クリスチャン・アンティドルミ：コリガン
- キンナ・マキンロー：ノヴォトニー夫人
- ショーン・ディリンガム：レイ
スタッフ
- 監督：イーサン・コーエン
- 脚本：イーサン・コーエン、トリシア・クック
- 製作：ロバート・グラフ、イーサン・コーエン、トリシア・クック、ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー
- 撮影：アリ・ウェグナー
- 編集：トリシア・クック、エミリー・デンカー
- 音楽：カーター・バーウェル
- プロダクションデザイン：ステファン・デシャン
- サウンド：スキップ・リーヴセイ
- 配給：フォーカス・フィーチャーズ（米国）、ユニバーサル・ピクチャーズ（国際）
- 製作会社：フォーカス・フィーチャーズ、ワーキング・タイトル・フィルムズ
レビュー 作品の感想や女優への思い