『パルテノペ ナポリの宝石』（原題：Parthenope）は、2024年製作のイタリア・フランス合作映画。パオロ・ソレンティーノ監督が、ナポリを舞台に美しく聡明な女性パルテノペの人生を描きます。ギャガ配給、2025年8月22日公開、136分、R15+指定。第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作。
基本情報
- 邦題：パルテノペナポリの宝石
- 原題：Parthenope
- 製作年：2024年
- 製作国：イタリア・フランス
- 上映時間：136分
- 映倫区分：R15+
- 配給：ギャガ
- 劇場公開日：2025年8月22日
あらすじ
1950年、南イタリアの風光明媚な港町ナポリで、赤ん坊が生まれた。彼女はギリシャ神話の人魚であり、ナポリの街を象徴する「パルテノペ」と名付けられる。美しく聡明で誰からも愛されるパルテノペは、繊細な兄ライモンドと深い絆で結ばれている。成長するにつれ、彼女の美しさと知性はますます輝きを増し、ナポリの街で青春を謳歌する。しかし、彼女の輝きが強まるほど、兄ライモンドの孤独が際立ち、やがて悲劇が訪れる。パルテノペの美貌は愛する人々に幸せをもたらす一方で、時に悲劇や争いの刃ともなる。それでも彼女は、果てしない愛と自由の探求を続け、人生を力強く歩み続ける。彼女がその先にたどり着いたものとは何か――。本作は、ナポリの美しい風景を背景に、ひとりの女性の人生と心の旅路を詩的かつ鮮やかに描き出します。
解説
『パルテノペ ナポリの宝石』は、『グレート・ビューティー 追憶のローマ』（2013年）で第86回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したイタリアの巨匠パオロ・ソレンティーノ監督の最新作です。ソレンティーノ監督が初めて女性を主人公に据えた本作は、彼の故郷ナポリを舞台に、人生の美しさと悲哀を織り交ぜた物語を展開します。映画は、1950年代から1980年代までの時代の変遷を背景に、主人公パルテノペの成長と葛藤を繊細に描き出します。
ソレンティーノ監督の特徴である圧倒的な映像美は、ナポリの海や街並みを通じて存分に発揮され、観る者を魅了します。特に、サンローランプロダクションが製作に携わり、クリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロが衣装のアートディレクションを担当したことで、時代ごとのファッションが物語に華を添えています。
北米配給をA24が手がけ、イタリア国内でソレンティーノ監督作史上最大のヒットを記録した本作は、第77回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にも出品され、国際的に高い評価を受けました。人間ドラマとファンタジー要素が融合した本作は、ソレンティーノ監督の新境地とも称されますが、一部では女性の描き方に古い価値観が感じられるとの賛否も存在します。それでも、パルテノペの人生を通じて、愛と自由、美の両面性を探求する本作は、観客に深い思索を促す作品です。
女優の活躍
主人公パルテノペ役を演じたセレステ・ダッラ・ポルタは、本作でスクリーンデビューを果たした新星です。彼女の瑞々しい魅力と自然体な演技は、観客を瞬く間に惹きつけます。パルテノペの美しさと知性を体現するダッラ・ポルタは、青春期の無邪気さから大人の女性としての複雑な感情までを丁寧に表現。特に、兄ライモンドとの深い絆や、悲劇的な出来事を通じて変化する心の機微を、表情や仕草で繊細に演じ切りました。彼女の存在感は、ナポリの美しい風景と調和し、物語の中心として輝きます。
一方、老年期のパルテノペを演じたステファニア・サンドレッリは、イタリア映画界の重鎮として知られ、『暗殺の森』（1970年）などで国際的に評価された女優です。本作では、人生の重みを湛えたパルテノペを深い情感で演じ、若かりしパルテノペとの対比を通じて物語に奥行きを与えています。サンドレッリの円熟した演技は、観客に人生の積み重ねと時間の流れを感じさせ、作品のテーマである「美と悲劇」を体現しています。両女優の異なる世代の演技が、物語の時間軸を豊かに彩ります。
また、脇を固める女優陣として、ルイーザ・ラニエリやイザベラ・フェラーリも印象的な役どころで登場し、それぞれのキャラクターに独自の魅力を吹き込んでいます。特にラニエリ演じるグレタ・クールは、パルテノペの人生に影響を与える存在として、短い出番ながら強い印象を残します。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装は、サンローランのクリエイティブディレクター、アンソニー・ヴァカレロがアートディレクションを担当し、1950年代から1980年代までの時代の変遷を反映した色彩豊かなファッションが特徴です。
セレステ・ダッラ・ポルタ演じるパルテノペの衣装は、若々しい清廉さと女性らしい耽美さを兼ね備えており、ナポリの海や街並みと調和する鮮やかな色合いが印象的です。例えば、青春期のパルテノペが着る軽やかなドレスやビキニは、彼女の自由奔放な精神を象徴し、観客に夏のナポリの風を感じさせます。
一方、老年期のパルテノペを演じるステファニア・サンドレッリは、落ち着いた色調のエレガントな衣装をまとい、人生の深みを表現。衣装は、時代ごとのトレンドを反映しつつ、キャラクターの内面を強調するデザインが施されています。
化粧は、パルテノペの自然な美しさを引き立てるナチュラルメイクが中心で、特にダッラ・ポルタのシーンでは、若さ溢れる輝きを強調する軽やかなメイクが施されています。老年期のサンドレッリは、控えめながら品のあるメイクで、年齢を重ねた美しさを表現。
髪型も同様に、ダッラ・ポルタは時代に合わせたロングヘアやアップスタイルで、ナポリの風に揺れる自然な動きを演出。一方、サンドレッリの髪型は、落ち着いたショートヘアや上品なまとめ髪で、人生の円熟味を際立たせます。
これらの衣装・化粧・髪型は、サンローランの洗練された美学とソレンティーノ監督の映像美が見事に融合し、視覚的な魅力を一層高めています。レビューでは、「まるでハイブランドの宣伝動画のような美の完成度」と評されるほど、衣装とビジュアルの調和が際立っています。
キャスト
- パルテノペ：セレステ・ダッラ・ポルタ
- パルテノペ（73歳）：ステファニア・サンドレッリ
- ジョン・チーヴァー：ゲイリー・オールドマン
- マロッタ教授：シルヴィオ・オルランド
- グレタ・クール：ルイーザ・ラニエリ
- テゾローネ神父：ペッペ・ランツェッタ
- フローラ・マルヴァ：イザベラ・フェラーリ
- マギー：シルヴィア・デグランディ
- ササ：ロレンツォ・グレイジェセス
- ライモンド：ダニエレ・リエンツォ
- サンドリーノ：ダリオ・アイタ
- ロベルト：マーロン・ジュベール
- 提督：アルフォンソ・サンタガータ
- トニー：ビアッジョ・イッツォ
スタッフ
- 監督・脚本・製作：パオロ・ソレンティーノ
- 製作：ロレンツォ・ミエーリ、アンソニー・ヴァカレロ
- 製作総指揮：エレナ・レッキア、ダグラス・アーバンスキー
- 撮影：ダリア・ダントニオ
- 美術：カルミネ・グァリーノ
- 衣装：カルロ・ポッジョーリ
- 衣装アーティスティックディレクター：アンソニー・ヴァカレロ
- 編集：クリスティアーノ・トラバリョーリ
- 音楽：レーレ・マルキテッリ
- 字幕翻訳：岡本太郎
まとめ
『パルテノペ ナポリの宝石』は、パオロ・ソレンティーノ監督の詩的で視覚的に美しい作品であり、ナポリの風景と女性の人生を通じて、愛と自由、美の複雑さを描きます。セレステ・ダッラ・ポルタとステファニア・サンドレッリの素晴らしい演技、サンローランの洗練された衣装、ソレンティーノ監督の独特な映像美が融合し、観客に深い感動を与える一作です。2025年8月22日の公開を心待ちに、ぜひ劇場でその魅力を体感してください。
レビュー 作品の感想や女優への思い