『ユニバーサル・ランゲージ』は2024年にカナダで製作されたシュールなコメディ映画。監督のマシュー・ランキンが自ら出演も務め、ペルシャ語とフランス語が共存する代替現実のカナダを舞台に、ウィニペグとテヘランが融合した世界を描きます。複数のキャラクターの物語が交錯し、文化的アイデンティティ、人間性、日常の不条理を探求します。カンヌ国際映画祭で観客賞を受賞し、アカデミー賞国際長編部門のカナダ代表に選ばれました。
基本情報
- 邦題:ユニバーサル・ランゲージ
- 原題:Universal Language
- 公開年:2024年
- 製作国:カナダ
- 上映時間:89分
女優の活躍
本作では、女優陣が重要な役割を果たし、物語の情感を豊かにしています。まず、Rojina Esmaeiliが演じるNeginは、物語の中心的な子供キャラクターとして活躍します。彼女は姉妹のNazgolとともに、凍った氷の中のお金をめぐる冒険を繰り広げ、子供らしい純粋さと決意を表現しています。レビューでは、彼女の表情豊かな演技、特に「素晴らしいしかめっ面」と評される表情が、映画のユーモアとドラマを支えていると高く評価されています。2025年のカナディアン・スクリーン・アワードでは、最優秀コメディ映画主演女優賞にノミネートされ、新人ながら注目を集めました。
次に、Saba Vahedyousefiが演じるNazgolは、Neginの姉妹役として、物語の初期部分を牽引します。彼女たちは友達の眼鏡を買い替えるために奔走し、子供たちの自立心と友情を描くシーンで光ります。Vahedyousefiさんの自然でストイックな演技は、雪深いウィニペグの厳しい環境を反映し、観客に共感を呼んでいます。同アワードで最優秀助演女優賞にノミネートされており、姉妹の絆を繊細に表現した点が称賛されています。
また、Danielle Fichaudが演じるM. Castonguay(Matthewのボス)と母の役割は、物語の後半で重要な転機を提供します。彼女の演技は、疲弊した大人たちの内面的な葛藤を体現し、ユーモラスながらも感動的なシーンを生み出しています。特に、Matthewの帰郷シーンでの温かさと混乱の描写が印象的で、最優秀助演女優賞ノミネートを受けています。これらの女優陣は、映画のシュールな世界観を支え、文化的融合のテーマを体現する活躍を見せています。全体として、彼女たちのパフォーマンスは、監督の意図する「人間性の共有」を強調し、批評家から高い評価を得ています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装デザインはNegar Nematiさんが担当し、2025年のカナディアン・スクリーン・アワードで最優秀衣装デザイン賞を受賞しました。女優陣の衣装は、雪深いウィニペグの冬の設定を反映し、実用的でシンプルなものが中心です。Rojina Esmaeiliさん演じるNeginの衣装は、子供らしい冬用のコートとブーツで、灰色調の地味な色合いが不条理な世界のモノトーンさを強調しています。化粧は自然で、子供の無垢さを表す最小限のメイクアップが施され、髪型はシンプルなポニーテールや自然なストレートが採用され、厳しい寒さの中で動きやすいスタイルとなっています。これにより、彼女の表情がより際立つよう工夫されています。
Saba Vahedyousefiが演じるNazgolの衣装も同様に、暖かさを優先した冬服で、ベージュやグレー系のセーターとパンツが用いられ、姉妹の統一感を出しています。化粧はほとんどなく、ナチュラルメイクで雪の白さと対比させる効果があり、髪型はショートボブ風で、子供の活発さを表現しています。このデザインは、物語の現実味を高めつつ、シュールな要素を加えています。
Danielle Fichaudが演じるキャラクターの衣装は、大人らしいオフィスウェアや家庭的なセーターで、疲弊した日常を象徴します。化粧は控えめで、年齢相応の自然なメイクが施され、髪型はミディアムヘアのゆるいウェーブが、母性的な温かさを演出しています。全体のメイクアップはMarie Salvadoが担当し、同アワードで最優秀メイクアップ賞にノミネートされました。女優陣の外見は、映画の視覚的な統一感を保ちつつ、キャラクターの内面を視覚的に伝える役割を果たしています。これらの要素は、監督のスタイルである「抽象的なランドスケープ」を補完し、観客に深い印象を残します。
あらすじ
本作は、ペルシャ語が主流の代替現実のカナダを舞台に、複数の物語が交錯するシュールなコメディドラマ。物語は、2月29日のウィニペグで始まります。小学生のNeginとNazgolは、雪に凍ったお金を発見し、それを掘り出して友達のOmidが七面鳥に盗まれた眼鏡を買い替えるために奔走します。一方、ツアーガイドのMassoudは、観光客を連れてウィニペグの名所を巡りますが、訪れる場所は空っぽのモールや忘れられたベンチなど、奇妙で退屈なものばかりです。観光客たちは次第に混乱し、ツアーは予想外の方向へ進みます。
別の物語では、ケベックで公務員として働くMatthewが、無意味な仕事に嫌気がさし、突然辞表を提出します。彼は故郷のウィニペグに戻り、母を訪ねる旅に出ます。しかし、到着してみると、母は認知症を患い、Massoudを自分の息子と思い込んでいます。Matthewは自分のアイデンティティと家族の絆に直面します。これらの物語は、空間と時間が交錯し、意外な接点で結びつきます。例えば、子供たちが集めたお金がMatthewの旅に影響を与えたり、ツアーの参加者が他のキャラクターと出会ったりします。最終的に、すべての糸が絡み合い、相互の慈悲と支援がテーマとして浮かび上がります。七面鳥のエピソードや奇妙な出来事がユーモアを添え、シュールな結末を迎えます。
解説
本作は、マシュー・ランキン監督の長編第2作で、彼の故郷ウィニペグをイラン文化と融合させた独自の世界観が特徴です。英語が存在せず、ペルシャ語とフランス語が話される設定は、文化の境界を超えた「普遍的な言語」を象徴し、移民やアイデンティティのテーマを探求します。監督はイラン映画の影響を受け、特にアッバス・キアロスタミの作品をオマージュしており、子供たちの自立を描くシーンは『友だちのうちはどこ?』を思わせます。また、ウィニペグの実際の場所を抽象的に描き、ユネスコ遺産のようなユーモラスな脚色を加えています。
スタイルはドライでスパルタン、静的なカメラワークが台詞のユーモアを引き立てます。批評家からは「風刺的で感動的」と評価され、ロッテン・トマトで98%の支持率、メタクリティックで83点を獲得。カンヌ映画祭監督週間で観客賞を受賞し、アカデミー賞国際長編部門のショートリスト入りしました。テーマは人間性の共有で、キャラクターたちの小さな親切が不条理な世界を繋ぎます。視覚的には、灰色調の風景とコミカルなディテール(例: 七面鳥の登場やグレイビーのソーダ瓶)が印象的です。カナダの多文化主義を反映し、言語の壁を超えた共感を促します。この映画は、監督の個人的な喪失体験も織り交ぜ、ユーモアとメランコリーのバランスが絶妙です。全体として、現代の文化的融合を象徴する作品であり、観客に深い余韻を残します。
キャスト
- Rojina Esmaeili – Negin
- Saba Vahedyousefi – Nazgol
- Pirouz Nemati – Massoud
- Matthew Rankin – Matthew
- Sobhan Javadi – Omid
- Mani Soleymanlou – Teacher
- Danielle Fichaud – M. Castonguay / Mother
スタッフ
- 監督・脚本・出演: Matthew Rankin
- 脚本: Ila Firouzabadi, Pirouz Nemati
- 製作: Sylvain Corbeil
- 撮影: Isabelle Stachtchenko
- 編集: Xi Feng
- 音楽: Amir Amiri, Christophe Lamarche-Ledoux
- 衣装デザイン: Negar Nemati
- メイクアップ: Marie Salvado
- 美術: Louisa Schabas
- キャスティング: Marilou Richer
レビュー 作品の感想や女優への思い