「ライオット・クラブ」は2014年のイギリス映画。オックスフォード大学の実在の秘密クラブをモデルに、上流階級の若者たちの傲慢さと階級社会の闇を描く。監督はロネ・シェルフィグ。サム・クラフリンら若手俳優が出演し、欲望と権力の暴走を浮き彫りにする。
基本情報
- 邦題：ライオット・クラブ
- 原題：The Riot Club
- 公開年：2014年
- 製作国：英国
- 上映時間：107分
- ジャンル：ドラマ
あらすじ
イギリスの名門オックスフォード大学には、数百年の歴史を持つ秘密の会員制クラブ「ライオット・クラブ」が存在します。このクラブは、上流階級出身で容姿端麗、かつ「伝説になれる男」であることを条件に、2万人の学生からわずか10人だけが入会を許されるエリート集団。入会した者には輝かしい未来が約束されています。
新入生のアリステア（サム・クラフリン）とマイルズ（マックス・アイアンズ）は、過激で下劣な入会儀式「刈り入れ」を経てクラブのメンバーとなります。喜びに沸く二人ですが、クラブ内部は権力と金に支配され、会長の座を巡る陰湿な争いが繰り広げられています。
ある夜、クラブは郊外の庶民的なパブで新入会員の歓迎会を開催します。メンバーは正装に身を包み、高級車で乗り付け、特別に用意された個室で豪華な食事を楽しみます。しかし、酒とドラッグに酔いしれた彼らの行動は次第にエスカレート。店の料理に文句をつけ、高級娼婦を呼び、客やオーナーを侮辱するなど、傲慢な振る舞いを繰り返します。マイルズの恋人ローレン（ホリデイ・グレインジャー）がメンバーの悪ふざけで店に呼ばれ、屈辱的な扱いを受けたことで店を去り、マイルズとの関係も破綻します。閉店後も暴走は止まらず、メンバーは店の備品を破壊し、ついにはオーナーに暴行を加え重傷を負わせます。
事件後、メンバーはマイルズに責任を押し付けようとしますが、アリステアの爪からオーナーの皮膚組織が検出され、彼が警察に連行されます。クラブは崩壊の危機に瀕し、メンバーは退学を免れるものの処分待ちの状態に。マイルズはクラブと大学に幻滅し、脱退して大学を去ります。一方、アリステアは叔父で保守党議員のジェレミー（トム・ホランダー）の後ろ盾を得て、クラブのメンバーシップと将来の地位を保証されます。映画は、特権階級の腐敗と無責任さを浮き彫りにして幕を閉じます。
解説
「ライオット・クラブ」は、オックスフォード大学に実在する上流階級限定の社交クラブ「ブリンドン・クラブ」をモデルにしたローラ・ウェイドの舞台劇「POSH」を映画化した作品です。監督のロネ・シェルフィグは、『17歳の肖像』で培った繊細な演出力を活かし、華やかな上流階級の裏に潜む傲慢さや階級社会の闇を描き出します。映画は、若者たちの特権意識と無責任な行動がもたらす破壊的な結果を通じて、英国の階級制度やエリート教育の負の側面を批判的に検証します。
物語の中心は、アリステアとマイルズの対照的な視点です。アリステアは特権階級の意識を体現し、権力への渇望と劣等感から過激な行動に走ります。一方、マイルズは比較的誠実で恋人ローレンとの関係を大切にしますが、クラブの腐敗に巻き込まれ、最終的にその価値観に背を向けます。この二人の葛藤を通じて、映画は特権階級の内面と社会への影響を掘り下げます。
また、映画は視覚的にも印象的です。オックスフォードの荘厳なキャンパスやパブの庶民的な雰囲気、そしてメンバーの豪華な正装が対比的に描かれ、階級間の緊張感を強調します。サウンドトラックも、クラシックと現代音楽を融合させ、物語の緊張感を高めています。観客からは「胸糞悪い」との評価も多く、特権階級の横暴さに不快感を覚える一方で、そのリアルな描写力が高く評価されています。
女優の活躍
「ライオット・クラブ」は男性中心の物語ですが、女性キャラクターも重要な役割を果たします。以下に主要な女優とその活躍を紹介します。
ホリデイ・グレインジャー（ローレン役）
ローレンはマイルズの恋人で、一般家庭出身の学生です。グレインジャーは、ローレンの純粋さと階級差による疎外感を見事に表現。パブでの屈辱的なシーンでは、怒りと悲しみを抑えた演技で観客の共感を誘います。彼女の登場シーンは短いながらも、物語に人間的な温かみと対比をもたらし、男性メンバーの傲慢さを際立たせます。
ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ（レイチェル役）
レイチェルはパブのオーナーの娘で、クラブの横暴に立ち向かう毅然とした女性。フィンドレイは、限られた出番の中で、働く階級の誇りと怒りを力強く演じます。彼女の存在は、特権階級との対立を象徴し、物語の社会的メッセージを強化します。
ナタリー・ドーマー（チャーリー役）
チャーリーはクラブが呼んだ高級娼婦で、短い登場ながら強烈な印象を残します。ナタリー・ドーマーは、自信と冷めた視線で、クラブの堕落した欲望を映し出すキャラクターを演じきります。彼女の演技は、クラブの無責任な享楽を批判的に浮かび上がらせます。
これらの女優は、男性中心の物語の中で限られた出番ながらも、感情的な深みと社会的な対比を提供し、作品のテーマを補強します。
女優の衣装・化粧・髪型
衣装デザインはスティーブン・ノーブルが担当し、女優たちの衣装、化粧、髪型は各キャラクターの背景や役割を反映しています。
ホリデイ・グレインジャー（ローレン）
- 衣装：ローレンの衣装は、学生らしいカジュアルさと一般階級の控えめさを強調。パブのシーンでは、シンプルなニットトップとジーンズを着用し、上流階級のメンバーたちの華やかな正装と対比されます。彼女の服は、庶民的な現実感と純朴さを表現。
- 化粧：ナチュラルメイクで、薄いファンデーションと控えめなリップカラーを使用。彼女の純粋さと飾り気のなさを強調し、クラブの派手な世界とのギャップを際立たせます。
- 髪型：ローレンの髪は、ゆるくウェーブのかかったロングヘアで、自然に下ろしたスタイル。学生らしい無造作さが、彼女の親しみやすさと誠実さを引き立てます。
ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ（レイチェル）
- 衣装：レイチェルはパブのオーナーの娘として、実用的なエプロンとシンプルなブラウスを着用。働く女性の現実感を表現し、クラブの豪華なタキシードとの対比を強調します。
- 化粧：ほとんど化粧をしていないようなナチュラルなルック。汗と労働で少し疲れた顔が、彼女の真面目さと誇りを際立たせます。
- 髪型：髪は実用的で、ポニーテールにまとめられたシンプルなスタイル。働く環境に適した機能性を反映しつつ、彼女の芯の強さを表現。
ナタリー・ドーマー（チャーリー）
- 衣装：チャーリーの衣装は、セクシーで洗練されたドレス。深紅のタイトなドレスは、彼女の職業と自信を強調し、クラブの享楽的な雰囲気にマッチします。
- 化粧：濃いアイラインと赤いリップで、妖艶で自信に満ちた印象。彼女の化粧は、クラブの欲望を象徴し、計算された魅力を演出します。
- 髪型：滑らかで巻かれたロングヘアを下ろし、グラマラスな雰囲気を強調。彼女の外見は、クラブのメンバーが求める「贅沢」を体現しています。
これらの衣装、化粧、髪型は、各女優のキャラクターの社会的地位や物語内での役割を視覚的に表現し、階級対立のテーマを補強します。
キャスト
- アリステア・ライル：サム・クラフリン
- マイルズ・リチャーズ：マックス・アイアンズ
- ハリー・ヴィラーズ：ダグラス・ブース
- ヒューゴ：サム・リード
- ジェームス：フレディ・フォックス
- トビー：オリー・アレクサンダー
- ディミトリ：ベン・シュネッツァー
- ガイ：マシュー・ビアード
- ジョージ：ジャック・ファーシング
- エド：ジョシュ・オコナー
- ローレン：ホリデイ・グレインジャー
- レイチェル：ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ
- チャーリー：ナタリー・ドーマー
- ジェレミー：トム・ホランダー
スタッフ
- 監督：ロネ・シェルフィグ
- 脚本：ローラ・ウェイド
- 原作：ローラ・ウェイド（舞台劇「POSH」）
- 製作：グレアム・ブロードベント、ピーター・チャーニン
- 製作総指揮：アイヴァン・ダンリーヴィー、スティーヴ・ノリス、トーステン・シューマッハー、ピーター・ワトソン、リジー・フランク、サム・ラヴェンダー、テッサ・ロス
- 撮影：セバスチャン・ブレンコフ
- 編集：ジェイク・ロバーツ
- 音楽：カスパー・ウィンディング
- 美術：アリス・ノーミントン
- 衣装：スティーブン・ノーブル
まとめ
「ライオット・クラブ」は、特権階級の若者たちの傲慢さと階級社会の闇を鋭く描いた作品です。ロネ・シェルフィグの緻密な演出と、サム・クラフリンやマックス・アイアンズらの若手俳優の迫真の演技が、物語の緊張感を高めます。女優たちの限られた出番ながらも強い印象を残す演技と、衣装・化粧・髪型によるキャラクター造形が、作品のテーマを視覚的に補強します。階級制度やエリート意識の負の側面を浮き彫りにする本作は、観る者に強い感情を呼び起こし、社会的考察を促します。
レビュー 作品の感想や女優への思い