『ドクター・ストレンジ』(2016年)はマーベル・コミックのヒーローを実写化したMCUの第14作目。天才外科医が魔術師に転身し、闇の勢力と戦うアクション大作。ティルダ・スウィントンとレイチェル・マクアダムスがそれぞれ異なる魅力で物語を彩る。
基本情報
- 邦題:ドクター・ストレンジ
- 原題:Doctor Strange
- 公開年:2016年
- 製作国:米国
- 上映時間:115分
- ジャンル:アクション、ファンタジー
- 配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
あらすじ
ニューヨークで活躍する天才神経外科医スティーヴン・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、傲慢な性格ながら卓越した技術で名を馳せていました。しかし、ある日、自動車事故により両手の神経を損傷し、外科医としてのキャリアを失います。
絶望の中、あらゆる治療を試みるも効果がなく、希望を失いかけていた彼は、ネパール・カトマンズにある神秘の修行場「カマー・タージ」の噂を耳にします。そこで至高の魔術師エンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)と出会い、多元宇宙の力を操る魔術の世界に触れます。最初は懐疑的だったストレンジですが、過酷な修行を経て魔術師として成長。
やがて、闇の魔術師カエシリウス(マッツ・ミケルセン)が率いるゼロッツが暗黒次元の力を利用して世界を破滅させようとする計画を知り、人類を守るため戦いに身を投じます。時間を操る「アガモットの目」を使い、ストレンジはカエシリウスと暗黒次元の支配者ドルマムゥに立ち向かいます。最終的に、ストレンジは自身の知恵と勇気で敵を退け、魔術師として新たな使命を受け入れるのです。
解説
『ドクター・ストレンジ』は、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のフェーズ3に属する作品で、従来の科学やテクノロジー中心のヒーロー映画とは異なり、魔術や多元宇宙という神秘的要素を導入した点で革新的です。映画の視覚効果は特に評価が高く、街が折り畳まれるようなミラー次元の戦闘シーンや、万華鏡のような映像表現は『インセプション』を彷彿とさせ、観客に強烈な印象を与えました。これにより、第89回アカデミー賞で視覚効果賞にノミネートされました。
ストーリーは、主人公の傲慢さから成長への旅路を描く典型的なヒーロー起源譚でありながら、時間操作や多元宇宙という複雑な概念を巧みに取り入れ、MCUの物語を拡張しました。また、ベネディクト・カンバーバッチの演技は、傲慢だが脆い人間性を持つストレンジの変貌を見事に表現し、作品の魅力を高めています。エンシェント・ワンのキャスティングを巡る議論(原作ではチベット系のキャラクターが白人女優に変更されたことによるホワイトウォッシング批判)も話題となりましたが、監督スコット・デリクソンはこれをステレオタイプ回避の試みと説明しています。この作品は、MCUの新たな地平を開き、続編や他の作品でのストレンジの活躍を予感させる重要な一作です。
女優の活躍
本作では、ティルダ・スウィントンとレイチェル・マクアダムスが主要な女性キャラクターを演じ、それぞれ異なる魅力で物語を彩りました。
ティルダ・スウィントン(エンシェント・ワン役)
至高の魔術師ソーサラー・スプリームを演じたティルダ・スウィントンは、神秘的かつ威厳ある存在感で作品に深みを加えました。彼女の演技は、700歳を超える年齢不詳のケルト人魔術師としてのカリスマ性を完璧に表現。エンシェント・ワンがストレンジを導く師匠としての厳しさと、自身の秘密を抱える複雑な内面を繊細に演じ分け、物語の鍵となるシーンで圧倒的な存在感を発揮しました。特に、ミラー次元での戦闘シーンでは、魔術を操る流麗な動きで観客を魅了しました。スウィントンの独特な雰囲気は、魔術の世界観を体現するのに最適でした。
レイチェル・マクアダムス(クリスティーン・パーマー役)
ストレンジの元恋人で救急救命医のクリスティーンを演じたレイチェル・マクアダムスは、感情的な支柱として物語に温かみを加えました。ストレンジの傲慢さに距離を置きつつも、彼を深く理解し支える役柄を、優しさと強さを兼ね備えた演技で表現。特に、ストレンジが重傷を負った際に彼を救う手術シーンでは、冷静かつ献身的な医師としての姿を見せ、物語に現実的な人間ドラマを織り込みました。マクアダムスの自然体な演技は、魔術という非現実的な世界に人間的な接地感をもたらしました。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装、化粧、髪型は、キャラクターの個性や物語の世界観を強調する重要な要素です。アレクサンドラ・バーンによる衣装デザインは、魔術の世界と現実世界の対比を巧みに表現しました。
ティルダ・スウィントン(エンシェント・ワン)
エンシェント・ワンの衣装は、山吹色のローブが特徴で、東洋的な神秘性と威厳を表現。ゆったりとしたシルエットは、彼女の超越的な存在感を強調し、戦闘シーンでの動きやすさも考慮されています。化粧は最小限で、スキンヘッドが際立つシンプルなメイクを採用し、年齢不詳の神秘性を際立たせました。髪型はスキンヘッドで、キャラクターの非凡な精神性を象徴。扇子を小道具として使うことで、優雅さと実用性を兼ね備えた演出が施されました。
レイチェル・マクアダムス(クリスティーン・パーマー)
クリスティーンの衣装は、救急救命医としての現実的な設定を反映し、主にスクラブ(医療用ユニフォーム)が中心。手術シーンでは無菌ガウンやマスクを着用し、プロフェッショナルな姿を強調。普段のシーンではカジュアルなトップスやコートを着用し、親しみやすい雰囲気を演出しました。化粧はナチュラルメイクで、医師としての清潔感と人間的な魅力を表現。髪型は、肩までのブラウンの髪をポニーテールやルーズに下ろしたスタイルで、忙しい医師の日常を自然に描き出しました。彼女のシンプルな外見は、ストレンジの派手な魔術師の姿との対比を際立たせました。
キャスト
- スティーヴン・ストレンジ / ドクター・ストレンジ: ベネディクト・カンバーバッチ(日本語吹替: 三上哲)
- エンシェント・ワン: ティルダ・スウィントン(日本語吹替: 樋口可南子)
- クリスティーン・パーマー: レイチェル・マクアダムス(日本語吹替: 松下奈緒)
- カール・モルド: キウェテル・イジョフォー(日本語吹替: 小野大輔)
- ウォン: ベネディクト・ウォン(日本語吹替: 田中美央)
- カエシリウス: マッツ・ミケルセン(日本語吹替: 井上和彦)
- ニコデマス・ウエスト: マイケル・スタールバーグ(日本語吹替: 志村知幸)
- ジョナサン・パングボーン: ベンジャミン・ブラット(日本語吹替: 根本泰彦)
- ルシアン / ストロング・ゼロッツ: スコット・アドキンス(日本語吹替: 祐仙勇)
- ハミヤ: トポ・ウェルネスニーロ
- ブルネット・ゼロッツ: ザラ・フィシアン
- トール・ゼロッツ: アラー・サフィ
- ブロンド・ゼロッツ: カトリーナ・ダーデン
- ソル・ラマ: ウミット・ウルゲン
- ティナ・ミノル: リンダ・ルイーズ・デュアン
- ダニエル・ドラム: マーク・アンソニー・ブライトン
- ソー: クリス・ヘムズワース(日本語吹替: 三宅健太)
- バスの乗客: スタン・リー
スタッフ
- 監督: スコット・デリクソン
- 脚本: スコット・デリクソン、ジョン・スペイツ、C・ロバート・カーギル
- 原作: スタン・リー、スティーヴ・ディッコ
- 製作: ケヴィン・ファイギ
- 製作総指揮: ルイス・デスポジート、ヴィクトリア・アロンソ、スティーブン・ブルサード、チャールズ・ニューワース、スタン・リー
- 撮影: ベン・デイヴィス
- 編集: ワイアット・スミス、サブリナ・プリスコ
- 音楽: マイケル・ジアッチーノ
- 美術: チャールズ・ウッド
- 衣装: アレクサンドラ・バーン
- 視覚効果監修: ステファン・セレッティ
- ビジュアル開発主任: ライアン・メイナーディング
レビュー 作品の感想や女優への思い