『フレンチ・イグジット さよならは言わずに』はミシェル・ファイファー主演のシニカルコメディ。破産したNYのセレブ、フランシスが息子と猫を連れパリへ移住。奇妙な人間関係の中で人生を見つめ直す物語。2020年公開。第78回ゴールデン・グローブ賞の主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネート。
基本情報
- 邦題:フレンチ・イグジット さよならは言わずに
- 原題:French Exit
- 公開年:2020年
- 製作国:英国、米国
- 上映時間:110分
- ジャンル:ドラマ
あらすじ
マンハッタンに住む60歳のフランシス・プライス(ミシェル・ファイファー)は、12年前に亡くなった夫の遺産で優雅な暮らしを送っていました。しかし、彼女は「遺産を使い果たす前に死ぬ」と考えていましたが、計画通りにはいかず、遺産が底をつきかけていることが発覚します。銀行に資産を差し押さえられたフランシスは、家財を売り払い、息子のマルコム(ルーカス・ヘッジズ)と愛猫のスモール・フランクを連れてパリへ移住することを決意。友人の提供した小さなアパートで新たな生活を始めますが、パリでの生活は予想外の出来事に満ちていました。風変わりな隣人マダム・レイナード(ヴァレリー・マハフェイ)や私立探偵、霊媒師のマデリン(ダニエル・マクドナルド)など、個性的な人物たちと出会い、フランシスは次第に自分の生き方や過去と向き合います。遺産の残りを大胆に使いながら、彼女は人生の終盤で新たな人間関係と自分自身を見つける旅に出ます。
ミシェル・ファイファーの活躍
ミシェル・ファイファーは本作で主演のフランシス・プライスを演じ、その演技が高く評価され、第78回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされました。フランシスは破産してもなお気高く、独特のユーモアと皮肉を湛えたキャラクターで、ファイファーはその複雑な内面を巧みに表現しています。彼女の演技は、セレブとしての華やかさと、人生の虚無感や孤独を抱える女性の脆さを絶妙にバランスさせ、観客に強い印象を与えます。特に、感情を抑えつつも時折見せる微妙な表情の変化や、シニカルな台詞回しは、彼女のキャリアの中でも際立つものでした。批評家からは「ファイファーの魅力と演技力が映画を牽引している」と称賛され、Rotten Tomatoesの批評家のコメントでも「彼女の演技のおかげで、風変わりな登場人物たちに共感できる」と評価されています。ファイファーは、フランシスの破天荒でありながらどこか憎めない性格を見事に体現し、物語に深みを与えました。
衣装・化粧・髪型
ミシェル・ファイファー演じるフランシスの衣装は、彼女のセレブとしての気品と破産後の現実を反映したデザインが特徴です。ニューヨークでは、クラシックで高級感のあるコートやドレスを着用し、モノトーンやダークカラーを基調とした洗練されたスタイルが目立ちます。パリに移ってからは、ややカジュアルながらもエレガントな雰囲気を保つ衣装が登場し、例えば、シルクのブラウスやテーラードジャケット、ハイウエストのパンツなどが印象的です。これらの衣装は、フランシスの「気高さを失わない」姿勢を象徴しています。化粧は控えめながらも、彼女の年齢とキャラクターに合った上品な仕上がりで、リップは深みのあるレッドやベリー系を選び、肌の輝きを強調するナチュラルメイクが施されています。髪型は、ゆるやかにウェーブのかかったブロンドのボブスタイルで、シーンに応じてまとめ髪やラフなダウンスタイルが登場。どのスタイルも、彼女の美貌と気品を引き立て、物語の雰囲気に調和していました。衣装とメイク、髪型は、フランシスのキャラクターの進化と内面的な変化を視覚的に表現する重要な要素となっています。
解説
『フレンチ・イグジット さよならは言わずに』は、パトリック・デウィットの同名小説を原作とした2020年のアイルランド・カナダ合作のブラックコメディ・ドラマ映画です。監督のアザゼル・ジェイコブスは、独特のユーモアと哀愁を織り交ぜた演出で、人生の終盤における自己発見と人間関係の複雑さを描き出します。本作は、物質的な豊かさと精神的な空虚さの対比をテーマに、フランシスの破天荒な行動とその裏にある深い孤独を探求します。物語には、猫が夫の生まれ変わりであるという超自然的な要素や、風変わりな脇役たちによるコミカルなエピソードが散りばめられ、シニカルでありながらも温かみのあるトーンが特徴です。批評家からは賛否両論で、Rotten Tomatoesでは支持率61%、Metacriticでは59/100と評価が分かれましたが、ミシェル・ファイファーの演技は一貫して高く評価されています。映画は、資本主義社会における金銭と幸福の関係や、個人の自由と孤立のバランスを問いかけ、観客に深い余韻を残します。日本では劇場公開されず、2021年11月10日からデジタル配信が開始されました。音楽や美術もパリの雰囲気を効果的に演出し、物語の独特な世界観を支えています。
キャスト
- フランシス・プライス:ミシェル・ファイファー
- マルコム・プライス:ルーカス・ヘッジズ
- フランクリン・プライス(声):トレイシー・レッツ
- マダム・レイナード:ヴァレリー・マハフェイ
- スーザン:イモージェン・プーツ
- マデリン:ダニエル・マクドナルド
スタッフ
- 監督:アザゼル・ジェイコブス
- 脚本:パトリック・デウィット
- 原作:パトリック・デウィット(『French Exit』)
- 製作:クリスティーン・ハエブラー、ケイティ・ホリー他
- 撮影:トビアス・ダッツ
- 編集:ヒルダ・ラソラ
- 音楽:ニック・デ・ウィット
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