イギリスBBC製作のクライム・ドラマ。マーク・ビリンガムの小説を原作に、妊娠中の女性刑事ヘレン・ウィークス（マイアンナ・バーリング演）が故郷での少女誘拐事件と過去のトラウマに直面。全4話のサスペンス。
基本情報
- 邦題：イン・ザ・ダーク
- 原題：In the Dark
- 公開年：2017年
- 製作国：イギリス
- ジャンル：ドラマ、ミステリー、クライム
見どころ
英国のベストセラー作家、マーク・ビリンガム原作によるクライムドラマ。妊娠という人生の大きな転換期を迎えた刑事が、その心を大きく揺さぶられる事件に遭遇する。
あらすじ
マンチェスターで刑事として働くヘレン・ウィークスは、恋人で同僚のポール・ホプキンスとの間に子を宿し、喜びと不安の中で日々を過ごしています。そんな中、故郷ポールズフォードで2人の少女が相次いで行方不明になる事件が発生。
容疑者として逮捕されたスティーヴン・ベイツの妻リンダが、ヘレンの幼馴染であることを知り、彼女は故郷に戻ります。事件を追う中で、ヘレンは少女時代に経験した性的虐待という過去のトラウマと向き合うことになります。リンダは夫の無実を信じますが、次々と明らかになる証拠は彼の犯行を裏付け、ヘレンは親友との関係性や自らの過去と対峙しながら、真実を明らかにしようと奔走します。
さらに、ヘレンの私生活では、複雑な人間関係や妊娠による心身の変化が描かれ、彼女の感情的な揺れと刑事としての使命感が交錯する展開が続きます。物語は2話完結の2つのエピソードで構成され、4話で完結する濃密なサスペンスです。
解説
『イン・ザ・ダーク』（原題：In the Dark）は、イギリスの公共放送局BBCが2017年に放送した全4話のクライムドラマです。ベストセラー作家マーク・ビリンガムの小説「Time of Death」と「In the Dark」を原作とし、脚本はBAFTA受賞歴のあるダニエル・ブロックルハーストが担当。ダークで重厚な雰囲気が特徴のイギリスドラマらしい作風で、単なる犯罪捜査劇にとどまらず、主人公の内面的な葛藤や人間関係の複雑さを丁寧に描き出しています。特に、妊娠という人生の転換期にある女性刑事の視点を通じて、個人的なトラウマと職業的な責任の間で揺れる心理が深く掘り下げられています。物語は2つのエピソードに分かれ、それぞれが独立した事件を扱いつつ、ヘレンの過去と現在を結ぶテーマが一貫しています。イギリス特有の湿った気候や薄暗い映像美が、物語の重苦しいトーンを強調し、視聴者に緊張感と感情的な没入感を与えます。謎解きの要素も緻密で、視聴者が細部に注目する必要がある複雑なプロットが展開されます。全体として、感情的な深みとサスペンスのバランスが取れた作品であり、イギリスドラマの特色である「リアルで人間臭い」キャラクター造形が光ります。
女優の活躍
本作の主演を務めるマイアンナ・バーリング（MyAnna Buring）は、ヘレン・ウィークス役として圧倒的な存在感を示しました。スウェーデン出身の彼女は、BBCの人気ドラマ『リッパー・ストリート』や映画『トワイライト・サーガ』シリーズでの脇役で知られていましたが、本作では主人公として複雑な感情を体現。妊娠中の刑事という設定で、身体的な変化や感情の揺れをリアルに表現し、特にトラウマを抱える女性としての繊細な演技が高く評価されました。批評家からは「グリッピング（引き込む）な演技」と称賛され、物語の重いテーマを観客に伝える要となりました。また、リンダ役のエマ・フライ（Emma Fryer）も、夫の逮捕に動揺しながらもヘレンとの友情を軸に感情的な演技を披露。特に、親友同士の複雑な関係性を描くシーンでの二人の掛け合いは、物語に深みを加えました。
女優の衣装・化粧・髪型
ヘレン・ウィークスを演じたマイアンナ・バーリングの衣装は、刑事としての実用性と妊娠中の女性としての現実感を反映したものが中心です。ダークトーンのコートやジャケット、動きやすいパンツスタイルが主で、イギリスらしい落ち着いた色合いが採用されています。妊娠が進むにつれ、ゆったりとしたトップスやマタニティウェアが登場し、彼女の身体的変化をさりげなく表現。化粧は控えめで、ナチュラルメイクが基本。刑事としてのプロフェッショナルな姿勢を強調するため、派手な装飾は避け、疲れた表情や感情の揺れを際立たせる演出が施されています。髪型はシンプルなポニーテールやルーズなアップスタイルで、忙しい刑事生活と私生活の両立を象徴。対照的に、リンダ役のエマ・フライは、よりカジュアルで庶民的な衣装が特徴。カーディガンやデニムなど、日常的なスタイルが彼女の親しみやすいキャラクターを強調します。化粧は薄く、髪は自然なウェーブやゆるいまとめ髪で、ヘレンとの対比が際立ちます。全体的に、衣装やメイクは派手さを抑え、キャラクターの内面や物語のリアリティを優先したデザインとなっています。
キャスト
- マイアンナ・バーリング（MyAnna Buring）：ヘレン・ウィークス役。マンチェスターの刑事で、妊娠中の複雑な心理を演じる。
- ベン・バット（Ben Batt）：ポール・ホプキンス役。ヘレンの恋人で同僚の刑事。彼女を支える存在。
- エマ・フライ（Emma Fryer）：リンダ・ベイツ役。ヘレンの幼馴染で、夫が誘拐事件の容疑者に。
- デヴィッド・レオン（David Leon）：アダム・ペリン役。ヘレンの過去に関わる重要な人物。
- アシュリー・ウォルターズ（Ashley Walters）：レイ役。事件の鍵を握る人物の一人。
- マット・キング（Matt King）：スティーヴン・ベイツ役。少女誘拐事件の容疑者。
スタッフ
- 原作：マーク・ビリンガム（Mark Billingham）。『Time of Death』『In the Dark』の著者で、クライム小説の第一人者。
- 脚本：ダニエル・ブロックルハースト（Danny Brocklehurst）。BAFTA受賞歴のある脚本家で、本作の重厚な脚本を担当。
- 監督：ジル・バーニエ（Gilles Bannier）、ウルリック・イムティアズ・ロルフセン（Ulrik Imtiaz Rolfsen）。ダークな映像美を構築。
- 製作総指揮：ヒラリー・マーティン（Hilary Martin）。『ゾンビ・アット・ホーム』などBBCドラマのプロデューサー。
- 音楽：ニール・ダヴィッジ（Neil Davidge）。物語の緊張感を高める重厚なスコアを提供。
- 撮影：サム・ケア（Sam Care）。イギリスの曇天や暗い街並みを活かした映像。
まとめ
『イン・ザ・ダーク』（2017年）は、心理的な深みとサスペンスフルな展開が融合したイギリス製クライムドラマです。マイアンナ・バーリングの迫真の演技を中心に、過去のトラウマと現在の事件が交錯する物語は、観客に強い印象を残します。リアルなキャラクター描写、抑えたトーンの衣装やメイク、そして緻密な脚本が織りなす本作は、イギリスドラマの魅力を存分に味わえる一作です。全4話のコンパクトな構成ながら、感情とサスペンスの密度が高く、クライムドラマ・ファンに強くおすすめします。
レビュー 作品の感想や女優への思い