「Sex and Zen III」(1998年)は香港のエロティック・コメディ映画。宋代の遊郭を舞台に、貧しい出自の女性たちが売春宿で訓練を受け、運命に翻弄される物語。監督はアマン・チャン。女優ではスーザン役のカレン・ユン、ファニー役のトン・イー、チンユン役のジェーン・チュンが物語の中心を担う。原作は清代の戯曲『玉堂春』。
基本情報
- 原題:玉蒲團III官人我要
- 英題:Sex and Zen III
- 公開年:1998年
- 製作地:香港
- 上映時間:95分
女優の活躍
本作では、主要な女性キャラクターを演じる女優たちの存在感が際立っています。とくに、スーザン役のカレン・ユン、ファニー役のトン・イー、チンユン役のジェーン・チュンが物語の中心を担います。
カレン・ユンはスーザンとして、優しさと脆さを兼ね備えたキャラクターを演じ、観客に感情的な共感を呼び起こします。彼女の演技は、遊郭での過酷な生活の中でも希望を見出そうとする女性像を丁寧に表現しており、特に物語の後半での感情的なシーンで光ります。
一方、トン・イー演じるファニーは、野心的な性格を強調した演技で、他の女性たちとは一線を画す存在感を示します。彼女の計算高く、自己主張の強いキャラクターは、物語に緊張感を与え、観客の注目を集めます。
ジェーン・チュンはチンユン役として、スーザンとの友情を軸に、優雅で繊細な演技を見せ、物語に温かみを加えています。
これらの女優たちは、過激な内容の映画においても、単なるエロティックな描写を超えた人間ドラマを演じきっており、批評家からは賛否両論ながらもその存在感が評価されています。ただし、前作に比べると、女優たちのカリスマ性はやや劣るとの声もあり、特に前作のスターであるエイミー・イップやシュー・チーのような強烈な印象を残すには至らなかったとの意見もあります。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の女優たちの衣装、化粧、髪型は、宋代の遊郭という設定を反映しつつ、エロティックな要素を強調したデザインが特徴です。衣装は、伝統的な中国の漢服を基調としつつ、露出度の高いデザインが採用されています。スーザンやチンユンの衣装は、薄手のシルクや透ける素材を用いたドレスで、柔らかく流れるようなラインが女性らしさを強調。色合いは赤やピンク、緑など鮮やかで、遊郭の華やかな雰囲気を表現しています。
一方、ファニーの衣装は、より大胆で装飾的なデザインが施され、彼女の野心的な性格を視覚的に際立たせています。化粧は、濃いめのアイラインと赤い口紅で、遊女としての魅力を強調しつつ、時代劇らしい白塗りのベースメイクが施されています。髪型は、伝統的なアップスタイルが中心で、簪や花飾りがふんだんに使われ、豪華さを演出。スーザンとチンユンは比較的シンプルで優雅な髪型、ファニーはより複雑で派手なスタイルが特徴的です。
これらの衣装や化粧は、視覚的な魅力とともに、キャラクターの個性や物語の進行を補強する役割を果たしています。ただし、批評では、前作ほどの独創性や華やかさに欠けるとの指摘もあり、衣装のデザインがやや単調に感じられる場面もあるとされています。
あらすじ
宋代を舞台にした「Sex and Zen III」は、貧しい家庭の娘であるスーザン、ファニー、チンユンが家族によって遊郭「フレグランス・ハウス」に売られるところから始まります。彼女たちは、ベテランの女将トール・カウ(ロウェル・チック)のもとで、遊女としての技術や振る舞いを厳しく訓練されます。スーザンとチンユンは訓練を通じて友情を深めますが、ファニーは野心を抱き、他の二人と距離を置きます。やがて、スーザンの初夜の権利が競売にかけられ、馬商人のルイ・ティン(エルビス・ツイ)に買われます。しかし、ルイはスーザンを若く経験の浅い学者チュ・チーアン(ティモシー・ザオ)に譲り、自身はファニーを選びます。物語は、スーザンとチュの間に芽生える感情や、ファニーの野心が引き起こす軋轢を中心に展開。遊郭の過酷な現実と、女性たちの人間関係や運命が交錯しながら、ドラマチックに進行します。物語の後半では、登場人物たちの欲望や葛藤が露わになり、悲劇的な結末へと向かいます。本作は、エロティックな要素を強く押し出しつつも、女性たちの絆や個々の選択を描き、単なる性描写に留まらない人間ドラマを提示しています。
解説
「Sex and Zen III」は、1991年の「SEX&禅」、1996年の「スー・チーのSEX&禅」に続くシリーズの第3作目で、香港のCategory III(成人指定)映画として知られています。
本作は、明代を舞台にした清代の戯曲『玉堂春』を基にしつつ、宋代の遊郭を舞台に変えてエロティック・コメディとして製作されました。監督のアマン・チャンは、前作のマイケル・マックやチン・マンケイのスタイルを継承しつつ、よりドラマチックなストーリーテリングを目指したとされています。
しかし、批評家からは、前2作のユーモアや奇抜さに欠け、物語や性描写がやや単調であるとの評価が目立ちます。特に、初作が持っていた「武術映画の技法を応用した性描写」や、2作目の幻想的な要素が本作では控えめで、シリーズの独自性が薄れたとの指摘があります。
本作の特徴は、遊郭という閉鎖的な環境での女性たちの人間関係に焦点を当てた点にあります。スーザンとチンユンの友情や、ファニーの野心的な行動は、単なるエロティックな物語を超えて、女性の主体性や社会的な抑圧を間接的に描いています。
しかし、性描写の過激さや、女性をオブジェクト化する場面が問題視されることもあり、特に現代の視点からは、一部のシーンが時代遅れに感じられる可能性があります。それでも、香港映画特有の過剰なビジュアルや、独特のユーモアを残しつつ、シリーズのファンには一定の満足感を提供しています。
2025年のファー・イースト映画祭での上映紹介では、「シリーズの疲れは見られるものの、依然としてエネルギッシュな性描写と暴力シーンで観客を引きつける」と評されており、シリーズの特徴を維持しつつ新たな物語を提供する試みが認められています。
キャスト
- カレン・ユン:スーザン
- トン・イー:ファニー
- ジェーン・チュン:チンユン
- ロウェル・チック:トール・カウ(女将)
- エルビス・ツイ:ルイ・ティン(馬商人)
- ティモシー・ザオ:チュ・チーアン(学者)
スタッフ
- 監督:アマン・チャン
- 脚本:リー・シウケイ
- 製作:ウォン・ジン
- 上映時間:92分
総評
「Sex and Zen III」は、香港のCategory III映画の特徴である過激な性描写とコメディ要素を継承しつつ、遊郭を舞台にした女性たちのドラマを描いた作品です。女優たちの演技や衣装は、時代劇の雰囲気とエロティックな魅力を融合させ、視覚的なインパクトを与えます。
しかし、前作ほどのユーモアや独創性に欠ける点が批評の対象となり、シリーズの中では最も評価が低い作品とされています。
それでも、物語の中心となる女性キャラクターたちの葛藤や関係性は、単なるエロティック映画を超えた深みを提供し、香港映画の独特なスタイルを愛好する観客には魅力的な作品です。シリーズのファンや、香港映画の過激な表現に興味がある視聴者には、一定の楽しさが保証されるでしょう。
レビュー 作品の感想や女優への思い