ユタ州はアメリカ合衆国西部に位置し、雄大な自然とモルモン教の影響が特徴の州です。州都はソルトレイクシティで、鉱業と観光が経済の柱。人口約330万人で、2020年に45番目の州として加盟しました。出身女優にクリッシー・フィット、ジュエル・ステイト、ロレッタ・ヤングたち。
歴史
ユタ州の歴史は、先住アメリカン・インディアンから始まり、ユート族にちなんで名付けられました。18世紀にはスペイン人探検家がこの地を訪れ、「オールド・スパニッシュ・トレイル」を開拓しました。1847年、モルモン教徒がブリガム・ヤングに率いられ、宗教的迫害を逃れてソルトレイクバレーに入植し、以降モルモン教が地域文化に大きな影響を与えました。1850年にユタ準州が設立され、モルモン教徒と連邦政府間の緊張が高まった1857年の「ユタ戦争」を経て、1896年に州に昇格しました。19世紀後半から鉱業が発展し、ビンガムキャニオン鉱山は世界最大の露天掘り鉱山として知られています。冷戦時代にはウラン採掘が盛んで、現代でも銅や天然ガスなどの鉱業が経済の基盤です。また、1960年代以降、観光業やハイテク産業も成長し、多様な経済構造が形成されました。
芸術
ユタ州の芸術は、自然の美しさとモルモン教の価値観に影響を受け、多様な形で発展しています。ソルトレイクシティにはユタ交響楽団やユタ・オペラがあり、クラシック音楽やオペラ公演が盛んです。また、モルモン教の影響で合唱音楽が特に強く、モルモン・タバナクル合唱団は国際的に有名です。ビジュアルアートでは、ソルトレイクシティ美術館やスプリングビル美術館が地域アーティストの作品を展示し、ユタの風景をテーマにした絵画が人気です。サンダンス映画祭は、インディペンデント映画の祭典として世界的に知られ、パークシティで毎年開催され、新進気鋭の映画製作者を支援しています。モルモン教徒のアーティストは、宗教的テーマを反映した作品も多く、家族や信仰を強調した芸術が特徴的です。近年は現代アートも盛んで、ストリートアートやインスタレーションも増加しています。
登場する映画
ユタ州の壮大な自然は、多くの映画のロケ地として選ばれています。以下に代表的な作品を挙げます。
- シルクロード.com -史上最大の闇サイト-（2021年）：天才的な頭脳を持つ若者ロス・ウルブリヒトが、匿名性を活かした闇サイト「シルクロード」を構築し、違法ドラッグや武器の取引を可能にします。このサイトは急速に拡大しますが、麻薬捜査官リック・ボーデンが執念の捜査を展開。ビットコインとTorの技術を駆使した犯罪とアナログな追跡劇が交錯する、実話に基づく緊張感あふれるサイバースリラーです。ユタ州の風景が、現代の闇を象徴的に描いています。
- ヘレディタリー/継承（2018年）：祖母の死をきっかけに、グラハム家の家族が不可解な出来事に巻き込まれます。母アニーは芸術家として家族の秘密を作品に反映し、息子ピーターと娘チャーリーの運命が暗転。遺伝する恐怖と超自然的な力が、日常を崩壊させます。アリ・アスター監督のデビュー作として、心理的なホラー要素が秀逸で、ユタ州の閉鎖的なコミュニティが不気味さを増幅させる傑作です。
- 127時間（2010年）：登山家アーロン・ラルストンがユタ州の峡谷で落石に腕を挟まれ、孤立無援の127時間を耐え抜きます。幻覚や回想を通じて人生を振り返り、壮絶な決断を下す実話。ダニー・ボイル監督のダイナミックな映像とジェームズ・フランコの迫真の演技が、生存の本能を鮮烈に描き出します。ユタの荒涼たる自然が、人間の限界と勇気を試す舞台となります。
- マイケル・ムーア in アホでマヌケな大統領選（2005年）：2004年大統領選直前、保守の牙城ユタ州オレム市の大学でマイケル・ムーアの講演が計画され、激しい論争を巻き起こします。言論の自由をめぐる学生、住民、保守派の対立が、民主主義のジレンマを浮き彫りに。ドキュメンタリーとして、ユタのモルモン教徒中心の社会がもたらす分断を、ユーモアと鋭く観察した作品です。
- 思いやりのススメ（2016年）：妻を事故で失った作家ベンが、筋ジストロフィーの少年トレヴァーの介護を引き受けます。ロードトリップを通じて互いの心の傷を癒し、成長するコメディドラマ。ポール・ラッドとセレーナ・ゴメスの演技が光り、ユタ州の雄大な景色が旅の象徴として、思いやりと絆の大切さを優しく語りかけます。
- バーティカル・リミット（2000年）：K2登山中に雪崩でクレバスに閉じ込められた妹を救うため、兄ピーターが命がけのレスキューを決行します。限界高度の過酷な環境で、酸素不足や悪天候との闘いが展開。ユタ州の山岳地帯を思わせる壮大なスケールで、家族愛と人間の限界を描いたサバイバルアクションです。
- スペース カウボーイ（2000年）：引退したテストパイロット4人が、故障した旧ソ連衛星の修理のため宇宙へ。クリント・イーストウッド監督・主演のベテラン俳優陣が、友情と夢の実現を熱演。ユタ州の空を舞台としたテスト飛行シーンが、老いなき情熱を象徴的に表現した感動のスペースアドベンチャーです。
- フレッチ/殺人方程式（1985年）：新聞記者フレッチが、末期がん患者の奇妙な依頼から巨大な麻薬密売事件に巻き込まれます。変装とユーモアを駆使した捜査が、コミカルに展開。チェビー・チェイスの軽妙な演技が魅力で、ユタ州の砂漠が追跡劇の緊張感を高める、痛快なミステリーコメディです。
- エアポート’75（1974年）：ジャンボジェットが小型機と衝突し、操縦不能に陥ります。乗客の恐怖と地上の救出劇が交錯するパニック映画。ユタ州のソルトレイクシティ空港が舞台となり、ヘリからの緊急着陸シーンがスリリング。チャールトン・ヘストンらの演技が、危機の緊迫感を高めます。
- 堕ちた恋人たちへ（1970年）：犯罪小説家がユタ州のモルモン教徒社会に潜入し、復讐を企てます。複雑な人間関係と宗教の暗部が絡むサスペンス。ロバート・レッドフォードの冷徹な演技が際立ち、荒野の風景が孤独と絶望を強調した、心理的な深みを持つドラマです。
- 黄金の指（1973年）：スリの一家がユタの街で巧みな手口を繰り広げますが、若きメンバーの恋が波乱を呼ぶ。ジェームズ・コバーンの渋い演技が光る犯罪コメディ。ユタの賑やかな街並みが、プロの技と人間味をコミカルに描き出します。
- 殺しが静かにやって来る（1968年）：1898年のユタ州スノーヒルで、賞金稼ぎの無法者集団を復讐のサイレンスが追います。エンニオ・モリコーネの荘厳な音楽が、雪原の沈黙と銃撃を際立たせる西部劇。ジャン＝ルイ・トランティニャンの寡黙なヒーローが、静かなる正義を体現します。
- 西部の無法男（1934年）：ジョン・ウェインが演じる保安官が、ユタのロデオ大会の不正を暴きます。馬上でのアクションと銃撃戦が満載のB級西部劇。荒涼たる砂漠が無法者の世界を象徴し、若きウェインの魅力が光るクラシックな娯楽作品です。
- 悪魔のサンタクロース 惨殺の斧（1984年）：サンタに扮した強盗に両親を殺された少年が、成長して復讐の殺人鬼となります。クリスマスの平和を血塗れに染めるスラッシャーホラー。ユタの田舎町が、トラウマと狂気の舞台となり、衝撃的な描写でカルト的人気を博しました。
出身女優
ユタ州出身の女優は多くはありませんが、以下に代表的な人物を紹介します。
- クリッシー・フィット（1984年〜）: ソルトレイクシティ出身。『ピッチ・パーフェクト』シリーズでフロ役を演じ、歌唱力とコメディセンスで知られています。
- ジュエル・ステイト（1982年〜）: ユタ州で生まれ、カナダで育った女優。『ファイヤーフライ』や『スターゲイトSG-1』で知られ、SFジャンルで活躍しています。
- ロレッタ・ヤング（1913〜2000年）: ソルトレイクシティ生まれ。サイレント映画時代から活躍し、『農夫の娘』（1947年）でアカデミー主演女優賞を受賞。テレビでも成功を収め、エミー賞も獲得しました。
レビュー 作品の感想や女優への思い