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犬猫

「見どころ」にPR表現を含みます。

映画『犬猫』(2004年)は、井口奈己監督が自身のデビュー作(2001年)をリメイクした作品で、日常のささやかな出来事を通じて女性の内面的な揺らぎを繊細に捉え、国際映画祭で高く評価された感動作。東京近郊の穏やかな住宅街に佇む一軒家を舞台に、中国へ写真留学する友人アベチャン(小池栄子)宅を預かることになった内気なヨーコと、恋人と別れた積極的な幼なじみのスズが、ひょんなことから共同生活を始める。対照的な性格の二人は、言葉にできない微妙な距離感を保ちつつ、互いの日常に溶け込み、友情の複雑さを静かに描き出す。

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基本情報

  • 原題:犬猫
  • 公開年:2004年
  • 製作国・地域:日本
  • 上映時間:94分
  • ジャンル:ドラマ
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女優の活躍

本作『犬猫』において、中心を担う女優陣の活躍は、作品の繊細な情感を支える重要な要素となっています。まず、ヨーコ役を演じた榎本加奈子は、内気で感情を表に出しにくい女性の微妙な心の動きを、抑制された演技で体現しています。コンビニでのアルバイトシーンでは、淡々とした動作の中に潜む孤独感を自然に表現し、観客に深い共感を呼び起こします。榎本は本作以前から舞台やドラマで活躍していましたが、『犬猫』でのヨーコ役は彼女のフィルム女優としての転機となり、以後、数々のインディペンデント作品で主演を務め、批評家から「静かなる表現の達人」と称賛されるようになりました。特に、2000年代の日本映画シーンで、女性の内省的な役柄を専門とする彼女のキャリアを象徴する一作です。

一方、スズ役の藤田陽子は、明るく積極的な性格を活発なボディランゲージで描き、作品に軽やかなリズムを与えています。恋愛に奔放で、ヨーコとは対照的なスズのキャラクターを、コミカルでありながらもどこか切ないニュアンスで演じ分け、物語の推進力となっています。藤田は本作で、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)出身の若手女優として注目を集め、以降、是枝裕和監督作品などメジャーなプロジェクトにも参加。彼女の自然体な演技は、日常のリアリティを高め、観客に「身近な友人のように感じさせる」魅力としてレビューで繰り返し語られています。

アベチャン役を短い出番ながら印象的に演じた小池栄子は、当時グラビアアイドルから女優へ転身中の時期で、本作がその橋渡しとなりました。留学前の友人として登場するアベチャンのシーンでは、親しみやすい笑顔とさりげない気遣いが光り、物語の起点を温かく演出。衣装のシンプルなTシャツ姿が、彼女の親しみやすさを強調しています。小池の活躍は本作以降加速し、バラエティから本格的なドラマ・映画まで幅広くこなし、現在では国民的女優として君臨。『犬猫』は、彼女の演技の幅を広げた初期の重要な一歩として位置づけられます。

監督の井口奈己は、本作では女優として出演していませんが、脚本・監督・編集を一手に担い、女優陣の自然な演技を引き出す演出で知られています。彼女の活躍は、2001年の8mm版『犬猫』から続き、本作のリメイクで国際的に認められ、第45回日本映画監督協会新人賞を受賞。女性監督としての視点が、女優たちの内面的な輝きを最大限に引き出した点で、間接的に女優の活躍を支えています。以後、『こどももの穴』など独自の作風でキャリアを重ね、現代日本映画の重要な存在です。

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女優の衣装・化粧・髪型

本作の衣装・化粧・髪型は、日常性を重視したリアリスティックなスタイルが特徴で、井口監督の意図する「普通の女性の生活」を視覚的に強調しています。ヨーコ役の榎本加奈子の衣装は、主にゆったりとしたカットソーやデニムパンツを中心としたカジュアルウェアで、コンビニアルバイトシーンでは制服のエプロンとキャップが加わり、労働者の日常を象徴。化粧は薄めでナチュラルメイクを基調とし、唇に淡いピンクのリップのみを施すことで、内気な性格を反映した素朴さを演出。髪型は肩までのストレートボブで、軽く前髪を流したシンプルなアレンジが、ヨーコの控えめな魅力を引き立てています。このスタイルは、榎本の細身の体型と調和し、観客に親近感を与える効果を発揮しました。

スズ役の藤田陽子の衣装は、よりフェミニンで動きやすいワンピースやスカートが多く、恋愛シーンでは軽やかなフレアスカートが用いられ、積極性を視覚化。化粧はチークとアイラインを強調したヘルシーなルックで、明るい性格を強調しつつ、時折の切なさをにじませる微妙な陰影を加えています。髪型はミディアムレングスのウェーブヘアで、ルーズにまとめたポニーテールが散見され、自由奔放なスズのイメージを強化。藤田の健康的なボディラインが、このラフなスタイルにマッチし、作品の軽快さを高めています。

アベチャン役の小池栄子の登場シーンは短いものの、留学準備中のTシャツとジーンズのラフなコーディネートが印象的で、友人らしい親しみを醸成。化粧はほとんどオフで、素顔に近いナチュラルさが、留学前の開放感を表しています。髪型はロングヘアを無造作に下ろしたスタイルで、小池の豊かな表情を活かした自然体が光ります。これらの要素は、衣装デザイナーの細やかな配慮により、全体として「犬猫」のテーマである微妙な人間関係を、視覚的に穏やかに支えています。

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あらすじ

物語は、東京近郊の静かな住宅街にある一軒家から始まります。中国へ写真を学ぶための留学に出発するアベチャン(小池栄子)は、友人であるヨーコ(榎本加奈子)に自らの家を一年間預かるよう依頼します。ヨーコは、コンビニエンスストアでのアルバイトを続けながら、アベチャンの家で穏やかな一人暮らしを始めます。しかし、そこへ幼なじみのスズ(藤田陽子)が突然転がり込んできます。スズは、長年付き合っていた恋人の古田(西島秀俊)と同棲を解消したばかりで、行き場を失っていました。アベチャンに連絡を取り、了承を得たスズは、ヨーコの家に居候することに。

ヨーコとスズは幼なじみながら、微妙に距離のある関係です。かつてヨーコが想いを寄せていた古田がスズに奪われた過去があり、ヨーコの心には複雑な感情が残っています。一方、スズは明るく奔放で、すぐに新しい出会いを求めます。コンビニで働くヨーコは、同僚の三鷹(忍成修吾)に密かな恋心を抱きますが、内気な性格ゆえに告白できません。そんな折、スズは犬の散歩のアルバイトを始め、偶然三鷹と出会います。スズは三鷹を家に招き、ヨーコを巻き込んだ三人での夕食を提案しますが、ヨーコは嫉妬と苛立ちから家を飛び出し、古田のアパートへ向かいます。

古田はヨーコを一晩だけ泊めることに同意しますが、自身はファミリーレストランで夜を明かします。翌朝、ヨーコが家に戻ると、スズは手作りのケーキを用意して待っていました。ヨーコは古田と寝たという嘘をつき、スズを激怒させます。スズは古田の元へ行き、殴りかかりますが、怒りは収まらず、家に戻ってふて寝します。ヨーコはスズのケーキを食べ、その美味しさを褒めますが、スズの機嫌は直りません。代わりにヨーコがスズの犬の散歩を引き受け、静かな散策を通じて自身の心を整理します。

時間が経ち、スズが目を覚ますと、家猫のムーが姿を消しています。スズは慌てて「ムーちゃん」と呼びかけ、ヨーコも加わって探し始めます。二人は家の中を探し回り、互いの存在を改めて意識します。この小さな出来事が、二人の関係に微かな変化をもたらし、つかず離れずの友情が、静かに深まっていくのです。物語は、日常のささやかな出来事を通じて、女性たちの内面的なつながりを優しく締めくくります。

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解説

『犬猫』は、井口奈己監督の繊細な視点が光る作品で、2001年の8mm版を35mmフィルムでリメイクしたものです。原作版がPFFアワードで企画賞を受賞したように、本作も女性の友情という普遍的なテーマを、日常の断片的な描写で描き出しています。監督の井口は、脚本から編集までを自ら手がけ、静止画のようなロングショットと自然光の活用で、小津安二郎の影響を思わせる穏やかなリズムを生み出しました。しかし、批評家クリス・フジワラが指摘するように、侯孝賢の『珈琲時光』に似た、現代的な女性の孤独とつながりの微妙さを、より親しみやすい形で表現しています。

物語の核心は、ヨーコとスズの「犬猫」的な関係性にあります。犬のように忠実で内気なヨーコに対し、猫のように気まぐれで積極的なスズ。二人は幼なじみながら、過去の恋愛トラウマから生じるわだかまりを抱え、共同生活を通じて互いの弱さを共有します。この過程で、監督はセリフを最小限に抑え、視線や仕草、空間の使い方で感情を伝えます。例えば、夕食のシーンでの沈黙や、猫の消失をめぐる探し物のエピソードは、言葉を超えた絆を象徴し、観客に余韻を残します。国際的に評価された点もここにあり、第22回トリノ映画祭での審査員特別賞・国際批評家連盟賞・最優秀脚本賞特別賞受賞は、普遍的な人間ドラマとしての完成度を証明しています。

また、本作は2000年代の日本インディペンデント映画の潮流を体現しています。低予算ながら、ビターズ・エンドの配給により劇場公開され、蓮實重彦氏の「2004年最良の映画10本」に選出されるなど、批評界で高く支持されました。テーマ的には、恋愛の失敗や女性の自立を扱いつつ、過度なドラマチックさを避け、日常の美しさを讃える姿勢が魅力です。音楽の鈴木惣一朗氏によるミニマルなスコアと、主題歌の湯川潮音「うしろ姿の人」が、情感を優しく包み込みます。結果として、『犬猫』は単なる友情物語ではなく、現代女性の内面的なポートレイトとして、時代を超えて響く作品となっています。

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キャスト

  • 榎本加奈子:ヨーコ役
  • 藤田陽子:スズ役
  • 小池栄子:アベチャン役
  • 西島秀俊:古田役
  • 忍成修吾:三鷹役

スタッフ

  • 監督・脚本・編集:井口奈己
  • 製作:榎本憲男、西ヶ谷寿一
  • 音楽:鈴木惣一朗
  • 主題歌:湯川潮音「うしろ姿の人」
  • 撮影:鈴木昭彦
  • 配給:ビターズ・エンド
劇場映画
なむ

洋画好き(字幕派)。だいたいU-NEXTかNetflixで、妻と2匹の猫と一緒にサスペンスやスリラーを観ています。詳細は名前をクリックしてください。猫ブログ「碧眼のルル」も運営。

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