『母になる』は2017年に放送された日本テレビ系ドラマ。沢尻エリカ主演の人間ドラマ。3歳の息子を誘拐された母親・結衣が、9年後に息子と再会。育ての母・麻子との間で繰り広げられる親子愛の葛藤を描く。母とは何か、家族の絆を問いかける感動作。平均視聴率9.2%。
基本情報
- 邦題：：母になる
- 公開年：2017年
- 製作国・地域：日本
- 再生時間：60分
女優の活躍
このドラマでは、3人の女性が「母になる」過程を体現し、それぞれの演技が物語の深みを増している。
主演の沢尻エリカは、柏崎結衣役で、息子を失った絶望から再会後の葛藤までを繊細に表現。誘拐直後の崩壊した表情や、息子との距離を埋めようとする切実な眼差しが印象的だ。過去のスキャンダルからの復帰作として注目され、演技力の高さを証明。視聴者からは「沢尻の母親像が新鮮で心を揺さぶられた」との声が多く、彼女のキャリアに新たな一ページを加えた。
小池栄子は門倉麻子役を演じ、広を7年間育てた育ての母として、強い母性を発揮。麻子の過去の苦難や、結衣への複雑な感情を、力強い演技で体現。助演女優賞を受賞するほどで、麻子の孤独と愛情の間で揺れる姿がリアルだ。
板谷由夏は西原莉沙子役で、仕事と子育ての両立に悩む母親像を自然に描き、共感を呼ぶ。
3人の女優が織りなす対話シーンは、ドラマのハイライトとなっている。全体として、女優陣の化学反応が、テーマの「母の多面性」を強調し、視聴者に深い余韻を残す。
特に沢尻エリカの活躍は顕著で、21歳の若妻から30代のシングルマザーへの変遷を、表情とボディランゲージで説得力を持って演じきった。撮影中も役に没入し、共演者から「エリカさんの目が本当に母親の目になっていた」と称賛された。小池栄子は、麻子の荒々しい側面をコミカルに、しかし内面的な脆さを深刻に描き分け、板谷由夏は莉沙子の日常的な苦悩を静かに積み重ねる演技で支える。こうした活躍が、ドラマの成功を支え、女性の内面を探求する作品として評価された。
女優の衣装・化粧・髪型
衣装は、キャラクターの心理状態や時代背景を反映し、シンプルで現実味のあるスタイルが中心。沢尻エリカの結衣は、過去のフラッシュバックでは20代前半らしい軽やかなワンピースやブラウスを着用。ブランドとしてHUMAN WOMANのアイテムが多く、柔らかな素材のスカートやカーディガンが登場し、若妻の優しさを表現。誘拐後の現在は、地味なパート服やエプロン姿が目立ち、灰色のニットやデニムパンツでシングルマザーの質素さを強調。バッグはトートタイプのものが多く、日常の疲労感を醸し出す。
小池栄子の麻子は、労働者らしいラフな服装が特徴。ジーンズにシャツ、革ジャケットを合わせ、過去の荒れた生活を思わせる。成長後のシーンでは、少し洗練されたブラウスやスカートが増え、内面的変化を象徴。板谷由夏の莉沙子は、ヘアメイクアーティストらしいスタイリッシュさで、タイトスカートやブラウスを着こなし、仕事女性のプロフェッショナルさを示す。全体の衣装デザインは、スタイリストの村上美智子が手がけ、家族の温かみと葛藤のコントラストを視覚的に描いている。
化粧はナチュラルメイクが基調で、沢尻エリカは薄いファンデーションにピンク系のチークとリップ。過去シーンではツヤのある肌で若々しさを、現在はマットな仕上がりで疲れた表情を強調し、役の移り変わりをメイクで表現。小池栄子は、麻子のタフさを示すために眉を強調したスモーキーアイ、板谷由夏はクリアなベースに赤リップで自信を表す。ヘアメイクは、リアルさを優先し、過度な華やかさを避けている。
髪型では、沢尻エリカのロングヘアが象徴的。過去はストレートやゆるウェーブで優雅に、現在は編み込みローポニーやお団子で実用性を優先。息子との再会シーンでは、シンプルなポニーテールが切なさを増幅。小池栄子はショートボブをベースに、無造作なスタイリングで麻子のワイルドさを、板谷由夏はミディアムヘアを巻き髪にし、母親らしい柔らかさを加える。これらの要素が、女優の演技を補完し、視覚的な説得力を高めている。
あらすじ
2001年、北海道から上京した柏崎結衣は、書店で大学講師の陽一と出会い、恋に落ちる。妊娠を機に結婚し、息子・広を授かる。幸せな家庭を築くが、広の4歳の誕生日直前、幼稚園帰りに誘拐される。結衣は絶望に沈み、夫婦関係は破綻。離婚後、一人でパートをしながら9年間を生き抜く。
2010年頃、広は誘拐犯から逃れ、門倉麻子に保護される。麻子は自身の過去の喪失から広を我が子のように育て、7年間の絆を築く。しかし、広の素性が明らかになり、児童福祉司の木野愁平が介入。2017年、13歳になった広は保護施設から結衣のもとに戻る。
再会した結衣と広の関係はぎこちない。広は麻子を本当の母と思い、結衣を拒絶。結衣は過去のトラウマと向き合いながら、息子との距離を縮めようとする。一方、麻子は広を手放せずに苦しみ、結衣と対立。そこに、結衣の友人・莉沙子の家族問題が絡み、母たちの連帯が生まれる。
物語は、広の学校生活や恋、麻子の過去暴露を通じて進展。結衣はカウンセリングを受け、陽一との再接近を図る。麻子は自身の母親との確執を乗り越え、広の幸せを優先。最終回では、二人の母が和解し、広は自らの居場所を選ぶ。家族の再構築と、各女性の成長が描かれる。
解説
『母になる』は、産みの母と育ての母の対立を通じて、「母性」の本質を問いかけるヒューマンドラマ。脚本の水橋文美江は、日常の細やかな心理描写で、視聴者の共感を誘う。誘拐というセンセーショナルな事件を起点に、家族の喪失と再生を描き、単なるサスペンスではなく、内面的成長に焦点を当てる。
テーマの核心は「母とは何か」。結衣の生物学的愛、麻子の環境的愛、莉沙子の社会的愛が交錯し、多様な母像を示す。社会問題として、子どもの誘拐や里親制度、仕事と育児の両立を反映。2017年の放送当時、少子化や女性活躍推進の文脈で、母親のプレッシャーをリアルに浮き彫りにした。
演出の工夫として、過去と現在の並行描写が効果的。フラッシュバックで結衣の若さを強調し、再会後の暗いトーンで喪失感を表現。音楽は、安室奈美恵の主題歌「Just You and I」が、切ない親子関係を象徴。視聴率は安定し、トルコでのリメイク版誕生につながる国際的評価を得た。
批評家からは、女優陣の演技と脚本のバランスが絶賛されたが、一部で結末の曖昧さが指摘される。しかし、それが現実の家族模様の複雑さを表し、視聴者に解釈の余地を残す。全体として、母子の絆が血縁を超える可能性を探り、普遍的な家族論として位置づけられる作品だ。
キャスト
- 柏崎結衣：沢尻エリカ
- 門倉麻子：小池栄子
- 西原莉沙子：板谷由夏
- 柏崎陽一：藤木直人
- 柏崎広（13歳）：道枝駿佑
- 柏崎広（3歳）：吉武歓
- 柏崎里恵：風吹ジュン
- 西原太治：浅野和之
- 西原繭：藤澤遥
- 西原繭（3歳）：宝辺花帆美
- 木野愁平：中島裕翔
- 田中今偉：望月歩
- 緒野琴音：高橋メアリージュン
- 柿田尚安：山中崇
- 香坂賢太：中山優貴
- 巻田大輝：成田偉心
- 井下さなえ：明星真由美
- ヒーさん：野添義弘
- 愛美：大塚寧々
スタッフ
- 脚本：水橋文美江
- 演出：中島悟、丸谷俊平
- チーフプロデューサー：西憲彦
- プロデューサー：櫨山裕子、秋元孝之
- 制作：日本テレビ
レビュー 作品の感想や女優への思い