キャサリン・グラハム

キャサリン・グラハム（Katharine Graham）は1917年6月16日にニューヨーク市で生まれ、2001年7月17日に84歳で亡くなったアメリカ合衆国の新聞出版者。

1963年から1991年まで『ワシントン・ポスト』を率い、ウォーターゲート事件の報道でリチャード・ニクソン大統領の辞任に寄与しました。20世紀初の主要アメリカ新聞の女性出版者として知られ、1998年に回顧録『パーソナル・ヒストリー』でピューリッツァー賞伝記部門を受賞しました。父から引き継いだ新聞社を巨大メディアグループに成長させ、報道の自由を守る姿勢で尊敬を集めました。女性の社会進出の象徴として、フォーチュン500企業の初の女性CEOとなりました。

プロフィール
生い立ちと教育
活動歴
私生活
メディア一覧
1. 書籍
2. 出演映画・ドラマ

プロフィール

名前：キャサリン・グラハム（Katharine Graham）
本名：キャサリン・メイヤー・グラハム（Katharine Meyer Graham）
生年月日：1917年6月16日
出生地：アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市
没年月日：2001年7月17日（享年84歳）
死没地：アメリカ合衆国アイダホ州ボイシ

生い立ちと教育

キャサリン・グラハム（Katharine Graham）は、1917年6月16日にニューヨーク市で生まれました。本名はキャサリン・メイヤーです。父親のユージン・メイヤーは金融業者で、1930年から1933年まで連邦準備制度理事会議長を務め、後に世界銀行総裁にも就任しました。母親のアグネス・エルンスト・メイヤーは、ルター派の芸術愛好家で、共和党の活動家としても活躍しました。家族は裕福で、祖父のマーク・ユージン・メイヤーは金融家、曽祖父のジョセフ・ニューマークは実業家でラビでした。父親の姉フローレンス・メイヤー・ブルーメンソールは、Prix Blumenthalを設立した人物です。また、父親の兄エドガー・メイヤーは機械エンジニアで、1912年のタイタニック号沈没事故で亡くなりました。

幼少期は両親が多忙だったため、ナニーや家庭教師に育てられました。両親はワシントンD.C.の邸宅とニューヨーク州ウェストチェスター郡の屋敷を行き来し、キャサリンはしばしば一人で過ごしました。母親との関係は複雑で、アグネスは彼女を否定的に扱うことが多く、自尊心を損なう経験をしました。兄弟姉妹は5人で、フローレンス（写真家で俳優オスカー・ホモルカの妻）、ユージーン3世（ビル）、ルース、エリザベス（ビス）です。家族はルター派に洗礼を受けましたが、エピスコパル教会に通いました。

教育面では、幼児期にモンテッソーリ学校に通いました。4年生からポトマック・スクールに進み、高校はバージニア州のマデイラ・スクールで学びました。この学校の土地は父親が寄付したものです。その後、ヴァッサー・カレッジに入学しましたが、シカゴ大学に転校し、1940年に学士号を取得しました。大学時代は政治やアイデアを議論する友人グループと交流し、ドイツやイタリアのファシズムに反対するリベラル思想やアメリカの労働運動に興味を持ちました。この時期に、後のジャーナリズムキャリアに影響を与える基盤を築きました。

活動歴

大学卒業後、サンフランシスコの新聞で短期間働き、埠頭労働者のストライキを報道しました。1938年から父親が買収した『ワシントン・ポスト』で働き始めました。1940年6月5日に、ハーバード・ロースクール卒業生で最高裁判所書記官のフィリップ・グラハムと結婚し、姓をグラハムに変えました。フィリップは1946年に『ポスト』の出版者となり、ユージン・メイヤーから引き継ぎました。キャサリンは夫の社交活動を通じて、ワシントンの上流階級に溶け込み、ジョン・F・ケネディ夫妻、ロバート・ケネディ、リンドン・ジョンソン、ロバート・マクナマラ、ヘンリー・キッシンジャー、ロナルド・レーガン夫妻らと友情を築きました。彼女はコールドウォー期のリベラルなジョージタウン・セットの一員でした。

夫フィリップはアルコール依存と精神疾患に苦しみ、1962年に不倫が発覚し離婚を宣言しました。1963年8月3日、バージニア州の屋敷で自殺しました。キャサリンは同年9月から会社と『ポスト』の大統領に就任し、事実上の出版者となりました。1969年から1979年まで正式な出版者、1973年から1991年まで取締役会長を務め、1972年にはフォーチュン500企業の初の女性CEOとなりました。女性運動の影響を受け、ジェンダー平等を推進し、男性中心の職場で自信のなさを克服しました。

ベンジャミン・ブラドリーを編集長に招聘し、ウォーターゲート事件でボブ・ウッドワードとカール・バーンスタインの調査を支持しました。また、ペンタゴン・ペーパーズの公開も支援しました。1972年、ニクソン政権のジョン・ミッチェル司法長官から脅迫を受けましたが、『ポスト』はこれを報道しました。1988年にはCIA本部で「Secrecy and the Press」と題した講演を行い、政府の秘密保持と報道の役割を議論しました。会社はテレビ局や『ニューズウィーク』を買収し拡大しました。息子のドナルドが1979年から2000年まで出版者を務めました。ウォーレン・バフェットは主要株主として財務助言をし、友情を深めました。

その他の功績として、1974年にAssociated Press理事に初の女性として選出されました。ロックフェラー家とのつながりでロックフェラー大学理事を務め、MoMAでデービッド・ロックフェラー賞を受けました。1973年にElijah Parish Lovejoy賞とColby College名誉法学博士号、1975年にS. Roger Horchow賞、1987年にWalter Cronkite Award for Excellence in Journalism、1997年にFour Freedoms AwardのFreedom Medal、1999年にAmerican Academy of Achievement Golden Plate Award、2000年にInternational Press InstituteのWorld Press Freedom Heroesに選出されました。2002年に死後にPresidential Medal of FreedomとNational Women’s Hall of Fame入りしました。シカゴ大学にグラハム寮が設けられ、毎年3月2日をGraham Dayとして祝います。

私生活

キャサリン・グラハムは1940年にフィリップ・グラハムと結婚し、娘のラリー・モリス・ウェイマス（1943年生まれ、2025年に没）と息子のドナルド・エドワード・グラハム（1945年生まれ）、ウィリアム・ウェルシュ・グラハム（1948年から2017年）、スティーブン・メイヤー・グラハム（1952年生まれ）の4人の子供をもうけました。ウィリアムは2017年12月20日に自殺で亡くなりました。夫婦関係はフィリップの精神疾患で困難を極め、彼の自殺後、キャサリンは一人で会社を率いました。1997年の回顧録『パーソナル・ヒストリー』では、夫の病気を率直に描写し、女性の役割の変容を語りました。

友人には政治家や文化人が多く、1966年にトルーマン・カポーティのBlack and White Ballの名誉客でした。2001年7月14日、アイダホ州サン・バレーで転倒し頭部を負傷し、ボイジの病院で3日後に亡くなりました。葬儀はワシントン国立大聖堂で行われ、ジョージタウンのオーク・ヒル墓地に埋葬されました。彼女の人生は、裕福な家庭から始まり、夫の死をきっかけにビジネス界で活躍し、報道の自由を守る象徴となりました。