人身売買(human trafficking)とは、強制労働、性的搾取、臓器摘出などを目的とした人々の強制的な移動や搾取を指し、国際連合麻薬犯罪事務所(UNODC)の2024年報告書によると、2022年時点で世界的に被害者の検知数が2019年比で増加傾向にあり、特に子どもや脆弱な集団が標的となっています。
以下では、地域別に近年の傾向(主に2020年から2024年)を統計と事例を交えて解説します。各地域の状況を、被害者の特徴、搾取の形態、主な要因に焦点を当てて整理します。全体として、COVID-19後の回復期に検知数が増加した一方で、紛争、気候変動、デジタル技術の悪用が新たなリスクを生んでいます。
サハラ以南のアフリカ
サハラ以南のアフリカでは、強制労働と性的搾取が主な形態であり、2022年の被害者検知数は2019年比で98%増加しました。特に子どもが全体の61%を占め、男子は強制労働(主に農業や鉱業)、女子は性的搾取に遭いやすい傾向があります。
気候変動による干ばつや洪水が児童労働を80%増加させる要因となっており、2022年に700万人が移動を強いられた結果、国内・域内での人身売買が83%を占めています。起訴数は増加したものの、有罪判決率は低く、組織犯罪への対応が不十分です。
事例として、コンゴ民主共和国やソマリアでは、武装集団が毎年5,000〜10,000人の子どもを強制徴用し、戦闘や性的搾取に利用しています。
また、西アフリカの金鉱山では、貧困家庭の子どもたちが債務拘束(debt bondage)で労働を強いられ、2020年から2023年にかけての紛争で国内避難民キャンプでの搾取が11〜56%増加しました。マリでは、2023年に政府が人身売買対策行動計画を採択し、奴隷制関連の起訴を増加させましたが、公式の共謀が課題です。
北アフリカと中東
北アフリカと中東地域では、強制労働(特に家事労働)と性的搾取が目立ち、2022年の検知数は2020年比で増加したものの、2019年レベルを下回っています。子どもが54%を占め、強制物乞いが全体の54%に上ります。
サハラ以南からの被害者が湾岸諸国(GCC)で労働搾取され、2020〜2023年に500件の臓器摘出事例が報告されました。紛争や気候変動によるスーダンの避難民増加がリスクを高め、移住ルートの混在で搾取が発生しています。
事例として、ナイジェリアでは2023年に、英国への臓器摘出目的で若者が誘拐され、パスポートを没収されたケースがあり、ナイジェリアの政治家と医師が有罪判決を受けました。
リビアやイエメンでは、ホーン・オブ・アフリカからの移住者が途中で強制労働や性的搾取に遭い、2023年の密輸数が2022年比で40%増加しました。イラクでは、2023年に専門将校を任命し、被害者支援を強化しましたが、腐敗が臓器取引のオンライン化を助長しています。
南アジア
南アジアでは、強制労働と性的搾取が並行し、2022年の検知数は2019年レベルに戻りました。男子が44%、女子が17%を占め、強制結婚が約800件報告されています。
国内取引が60%で、貧困と気候変動が児童結婚を促進し、欧州や中東への越境取引が増加しています。パンデミック後の2020〜2021年に検知数が減少し、2022年に回復しました。
事例として、バングラデシュやパキスタンでは、2023年に北アフリカ経由の密輸が増加し(83%増)、東南アジアの詐欺施設への中継で強制犯罪(オンライン詐欺)が発生しています。
インドネシアでは、少数民族差別と貧困が脆弱性を高め、域内10位の有病率を示しています。
バングラデシュのBRAC Migration Welfare Centreは、2009年から34,000人以上の生存者を支援し、再統合を推進しています。
東アジアと太平洋
東アジアと太平洋地域では、検知数が2019年比で46%減少し、2022年に2020年比で回復しましたが、依然低水準です。女子が39%、女子児童が40%で、強制労働(38%)と性的搾取(32%)が主です。
越境取引が99%で、オンライン詐欺の強制犯罪が2020年から14%に上昇し、特別経済区(SEZ)で80カ国からの被害者が報告されています。
事例として、フィリピンでは、オンライン児童性的搾取(OSEC)が2023年に増加し、2005年から147件の有罪判決と544人の子ども救出がありました。
メコン地域の詐欺施設では、18〜35歳の専門家が債務拘束(7,000〜170,000ドル)で搾取され、AIを悪用した詐欺が横行しています。
中国からベトナムへの取引では、2020年代に強制結婚と労働搾取が続き、ベトナムの刑法改正で対応が進んでいます。
中央アジアとヨーロッパ
中央アジアとヨーロッパでは、検知数が2019年比で4%増加し、性的搾取(61%)が主流です。東欧と中央アジアで女子が76〜82%、西欧と南欧で男子が39%を占めます。
強制犯罪(麻薬取引)が22%、強制物乞いが800件で、2020年の減少後、2021年に急増しました。アフリカからの流入が増加しています。
事例として、オランダ主導の2023年EUROPOL捜査で、26カ国で11人の容疑者と45人の被害者を特定し、性的・労働搾取のオンライン平台を摘発しました。
セルビアでは、NGO Atinaが生存者の回復プログラムを提供し、政策改革を推進しています。
イタリアでは、ナイジェリア女性が2020〜2022年に密輸経由で搾取され、juju儀式による支配が逆転判決で注目されました。
北米
北米では、検知数が2019年比で78%増加し、性的搾取(69%)が主で、女子が75%を占めます。
国内取引が70%、中米からの男子児童が強制労働に遭いやすく、2023〜2024年の調査で医療・再統合支援の需要が高いです。
事例として、アメリカでは2023年にZahida Aman事件で、強制結婚を通じた家事労働搾取で3人が有罪となり、身体的虐待が明らかになりました。
カナダとメキシコでは、2020年代にスパやレストランでの搾取が増加し、非処罰原則の適用が焦点です。
ラテンアメリカとカリブ海地域
ラテンアメリカとカリブ海では、中央アメリカの検知数が2019年比で53%減少し、南米は7%減少しました。性的搾取(62%)と強制労働(55%)が並び、女子児童が68%を占めます。
国内取引が74%、紛争と避難民がリスクを高めています。
事例として、ボリビアでは#RedAlertTempranaZarネットワークが2017年から150人以上の被害者を救出しました。
キューバの医療ミッションでは、2023年に22,000人以上の労働者が強制労働に遭い、賃金没収(75〜90%)とパスポート押収が報告されました。
南米の農業では、子どもが収穫作業で搾取され、組織犯罪の関与が目立ちます。
展望
これらの事例から、地域特有の要因(紛争、貧困、デジタル化)と連動し、人身売買に対する国際的な対策が不可欠です。被害者数は2023年に133,943人に達し、起訴が増加しているものの、根絶にはさらなる努力が必要です。





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