Yves Saint Laurent(YSL)は、1961年にフランスのパリでデザイナーのイヴ・サンローランとパートナーのピエール・ベルジェにより設立されたラグジュアリー・ファッションハウス。クチュール、レディトゥウェア、レザーグッズ、シューズ、ビューティー製品を展開し、女性のためのタキシード「ル・スモーキング」や革新的なデザインでファッション界を革新。Keringグループ傘下で、現代的なエレガンスを象徴します。
現状
2026年現在、Yves Saint Laurent(以下、YSL)は、フランスを代表するラグジュアリーブランドとして、グローバルに展開を続けています。クリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)が2016年から指揮を執り、ブランドのDNAであるエッジーでセンシュアルなスタイルを進化させています。
2026年のコレクションでは、ウィンター2026メンズウェアでジェームズ・ボールドウィンの小説『ジョヴァンニの部屋』から着想を得た、親密で脆弱な移行期のエレガンスを表現。肩パッドの入ったスーツ、トレンチコート、レザーアイテム、さらにはラテックス素材の要素を取り入れ、プライベートからパブリックへの移行をテーマにしています。 スプリング2026ウィメンズウェアでは、1970年代風のスポーティシックと繊細なランジェリードレッシングの融合を提案し、相反する要素のマジックを探求。クリーンなライン、洗練されたテーラリング、ビッグショルダー、レザーショーツなどが特徴で、パリ・ファッションウィークで注目を集めました。
経済的には、2024年の売上高が29億ユーロ(約4,000億円)を記録し、Keringグループの主要ブランドとして安定した成長を遂げています。 CEOは2024年からセドリック・シャルビ(Cédric Charbit)が務め、デザインスタジオをロサンゼルスに移したヘディ・スリマンの時代からのグローバル戦略を継承。2023年に立ち上げられた「Saint Laurent Productions」は、アートシネマ分野に進出しており、ペドロ・アルモドバルの短編映画『Strange Way of Life』などをプロデュースし、ブランドの文化的な影響力を拡大しています。
ビューティー部門(YSL Beauty)はL’Oréal傘下で、2026年も積極的にキャンペーンを展開。バレンタインデー向けの「Sparkling Desires」コレクションなど、アイコニックなリップスティック「Rouge Volupté Candy Glaze」を中心に、グローバルアンバサダーを活用したマーケティングが成功を収めています。 パリ・ファッションウィークでのショーは、ボルス・ド・コマースのロタンダやエッフェル塔の下で開催され、120人規模の親密なイベントから大規模なものまで多岐にわたり、ブランドのエッジーなイメージを維持。サステナビリティの観点では、Keringの環境イニシアチブに沿った素材使用が進んでいます。
日本市場では、YSL Beautyが特に人気で、2026年のリニューアル店舗オープンイベントに韓国アイドルのチャ・ウヌやキム・ドヨンらが登場し、注目を集めました。 全体として、YSLは伝統と革新のバランスを保ちながら、Z世代やミレニアル世代に向けたデジタルマーケティングを強化。InstagramやTikTokでのキャンペーンが売上を押し上げ、2026年のファッションシーンで不可欠な存在となっています。パンデミック後の回復期を活かし、アジア太平洋地域での店舗拡大も進行中です。
歴史
YSLの歴史は、ファッション界の革新者イヴ・サンローランの人生と密接に結びついています。1936年8月1日、アルジェリアのオランで生まれたイヴ・サンローラン(本名:Yves Henri Donat Mathieu-Saint-Laurent)は、幼少期からファッションに興味を持ち、家族の女性たちにドレスをデザインしていました。 17歳の1953年、パリで開催された国際毛織物事務局のコンテストでドレス部門3位に入賞し、注目を集めます。 1954年、クリスチャン・ディオールに雇われ、1957年にディオールの死去後、わずか21歳でディオールのヘッドデザイナーに就任。「トラペーズライン」のコレクションで成功を収めましたが、軍隊入隊と精神的な問題で離脱。
1961年、パートナーのピエール・ベルジェとともにYSLを設立。初のコレクションは1962年に発表され、ブランドロゴは1963年にA.M. Cassandreによりデザインされました。 1965年の秋冬コレクションでモンドリアン・ドレスを発表し、ポップアートを取り入れた革新的なデザインで注目。 1966年、女性のためのタキシードスーツ「ル・スモーキング」をデビューさせ、ジェンダーレスファッションの先駆けとなりました。また、ラグジュアリー・レディトゥウェアの先駆者として「Saint Laurent Rive Gauche」を発売し、ファッションの民主化を推進。
1970年代に入り、中国服、ポップアート、バレエ・リュス、ピカソ、マティス、モンドリアンなどの影響を受けたデザインを展開。1978年の肩パッド入りスタイルは1980年代のファッションを定義づけました。 1980年代には香水やコスメティックスに進出しましたが、1992年までに利益が減少し、1993年にサノフィに売却。 1997年、ヘディ・スリマンがメンズウェアのクリエイティブディレクターに就任し、「Rive Gauche Homme」をリローンチ。
1999年、Kering(旧Gucciグループ)がYSLを買収し、トム・フォードがクリエイティブディレクターに。2002年にオートクチュール部門を閉鎖。 フォードは2004年に退任し、ステファノ・ピラティが後任に。ピラティは「ル・スモーキング」やサファリジャケットを忠実に再解釈し、2000年代のベストセラー「トリビュート」サンダルを生み出しました。
2012年、ヘディ・スリマンが復帰し、レディトゥウェアを「Saint Laurent」にリブランド。「Yves」を削除したことは論争を呼びましたが、ロックンロールなエッジを加え、クチュールを2015年に復活。 デザインスタジオをロサンゼルスに移し、2016年に退任。後任のヴァカレロは、メンズとウィメンズをミックスしたランウェイを初導入し、ブランドのセンシュアルさを現代的に進化させています。
イヴ・サンローランは2008年6月1日に71歳で死去し、米国店舗の閉鎖が相次ぎましたが、ブランドは復活。ミュージアムがパリとマラケシュに開設され、遺産が保存されています。 YSLは、女性の解放とエンパワーメントを象徴するブランドとして、ファッション史に永遠の足跡を残しています。
歴代グローバル・アンバサダー
YSLは、ブランドのイメージを体現するセレブリティをアンバサダーに起用し、グローバルなマーケティングを展開しています。特にYSL Beauty部門が積極的で、過去と現在のアンバサダーを以下にまとめます。グローバルアンバサダーと日本アンバサダーを区別して解説します。
グローバル・アンバサダー
YSLのグローバルアンバサダーは、多様なバックグラウンドを持つアーティストや俳優が選ばれ、ブランドのエッジーでセンシュアルなイメージを反映しています。
- Rosé(BLACKPINK):2020年に就任。韓国系ニュージーランド人のシンガーソングライターで、YSL史上59年ぶりのグローバルアンバサダー。2020年の秋冬キャンペーンでデビューし、以降パリ・ファッションウィークや広告で活躍。2026年現在もTiffany & Co.とともにブランドを代表。
- ゾーイ・クラヴィッツ:2016年にYSL Beautyのグローバルアンバサダーに就任。アメリカの女優で、クールでダウンタウンなスタイルがブランドにマッチ。メットガラやキャンペーンでメタルメッシュトップやレザージャケットを着用。
- カリナ:2023年からYSLビューティーの「ルージュ・ピュールクチュール」リップスティックの新しい顔に。
- Charlotte Gainsbourg:2017年に就任。フランスの女優・シンガーで、ジェーン・バーキンの娘。ガルソンヌスタイルを体現し、AW17キャンペーンやレッドカーペットでデニムタキシードなどを着用。
- Indya Moore:2021年に就任。アメリカのモデル・女優で、トランスジェンダーとして多様性を象徴。SS21の短編映画やAW21キャンペーンに出演、メットガラでビローイングケープを着用。
- TEN(NCT/WayV):2024年に就任。タイ出身のK-Popアイドルで、Saint Laurentのブランドアンバサダー。パリ・ファッションウィークのメンズウィンター2024ショーで確認され、グローバルなファン層をターゲット。
- Sho Hirano:最近就任。日本人アーティストで、YSL Beautyのグローバルアンバサダー。「Rouge Pur Couture」キャンペーンで売上を540倍に押し上げ、グローバルに活躍。過去のミューズには、Catherine Deneuve、Loulou de la Falaise、Laetitia Castaなどがおり、イヴ時代からブランドのインスピレーション源となっています。
日本アンバサダー
日本市場では、YSL BeautyがK-Popアイドルを中心に起用し、アジアの若年層を狙っています。
- Sana(TWICE):2023年にYSL Beauty Japanのミューズに就任。日本出身のK-Popアイドルで、「Rouge Volupté Candy Glaze」のプロモーションに出演。東京のプレスカンファレンスでブラックブレザードレスを着用。
- Danielle(NewJeans):2023年にYSL Beautyの日本アンバサダーに就任。オーストラリア・韓国系のK-Popアイドルで、バイラルなグループのメンバーとして人気。
その他、Doyoung(NCT)はDolce&Gabbanaの韓国・日本アンバサダーですが、YSL関連ではCha Eun-woo(ASTRO)が韓国・日本イベントで登場し、Saint Laurentのイメージを強化。
これらのアンバサダーは、ブランドの多様性とグローバルリーチを象徴し、売上向上に寄与しています。YSLは今後も新しい顔を起用し、進化を続けるでしょう。



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