B級映画とは、低予算で製作され、商業的な大作映画（A級映画）とは対照的に、独自の個性や実験性を重視した映画を指します。この呼称は1950年代の米国で生まれ、ドライブイン・シアターや深夜上映で人気を博しました。特徴としては、限られた資金ゆえのチープな特殊効果、誇張された演技、突飛なストーリー展開が挙げられます。例えば、SFホラーの古典『プラン9・フロム・アウター・スペース』（1959年）は、雑なセットや矛盾だらけの脚本が逆にカルト的な人気を集めました。ジャンルは多岐にわたり、モンスター映画、ゾンビ映画、B級アクション、コメディなどがあり、過激な描写やユーモアで観客を引き込みます。
魅力
B級映画の魅力は、大手スタジオの制約を受けない自由な表現にあります。監督の奇抜なアイデアや社会風刺が反映され、商業映画では見られない独自の世界観が生まれます。例えば、『シャークネード』（2013年）は、荒唐無稽な「サメ＋竜巻」という設定でB級映画の楽しさを現代に伝えました。また、インディーズ映画や「モックバスター」（大作映画を模倣した低予算作品）もB級映画の系譜に連なります。観客にとっては、予測不能な展開や「愛すべき粗さ」が魅力で、カルト映画として熱狂的なファンに支持されることも多いです。近年では、ストリーミング配信の普及でB級映画が再注目され、新たなクリエイターがその精神を引き継いでいます。商業性よりも個性を優先するB級映画は、映画文化の多様性と創造性を体現する存在です。
歴史
B級映画の起源は、1920年代の米国に遡りますが、本格的に定義されたのは1930年代の大恐慌期です。映画産業では、大手スタジオが低予算の「Bムービー」を製作し、A級映画との二本立て上映で劇場の空き時間を埋めました。これらは短期間・低コストで作られ、西部劇やギャング映画など娯楽性の高いジャンルが中心でした。
1940～50年代はB級映画の黄金期で、ドライブインシアターや深夜上映が普及し、『キャット・ピープル』（1942年）のような低予算ホラーが人気を博しました。エド・ウッド監督の『プラン9・フロム・アウター・スペース』（1959年）は、粗雑な製作ながらカルト的な支持を集め、B級映画の象徴となりました。この時期、SFやモンスター映画が冷戦の不安を反映し、低予算ながら独創的な作品が生まれました。
1960～70年代は、自主製作映画の台頭やハリウッドの衰退でB級映画が多様化。ロジャー・コーマン監督は低予算ホラーやアクションで若手クリエイターを育成し、後の巨匠（例：スコセッシ、スピルバーグ）に影響を与えました。1980年代以降、ビデオ市場の拡大でB級映画は直販ビデオとして普及し、『トキシック・アベンジャー』（1984年）のようなカルト作品が生まれました。
2000年代以降、デジタル技術の進化で製作コストが下がり、インディーズ映画や「モックバスター」（例：『シャークネード』）がB級映画の精神を継承。ストリーミング配信の普及で、NetflixやAmazon PrimeでB級映画が再注目されています。商業性より個性を重視するB級映画は、映画史に独自の足跡を残し、現代でもカルトファンを魅了し続けています。
影響
ついで、B級映画が映画文化や社会に与えた影響をみていきます。
B級映画は、低予算ながら独自の創造性と自由な表現で、映画産業や文化に大きな影響を与えてきました。まず、商業的大作では避けられがちな過激なテーマや実験的なストーリーを取り扱うことで、映画の多様性を広げました。1960年代の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』は、低予算で製作されたゾンビ映画ながら、ホラージャンルの新たな基準を設け、社会問題（人種差別や冷戦の恐怖）を暗喩的に描き、後の映画製作者に影響を与えました。
また、B級映画は若手監督や俳優の登竜門としての役割を果たしました。ロジャー・コーマンのようなB級映画の巨匠は、低予算作品でマーティン・スコセッシやジェームズ・キャメロンらを育て、ハリウッドに新風を吹き込みました。さらに、B級映画の「チープだが愛らしい」美学は、カルト映画文化を形成。『ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー』（1975年）は、深夜上映での観客参加型カルチャーを生み、ファンコミュニティを育てました。
商業映画の枠を超えたB級映画は、インディーズ映画や現代のVOD（ビデオ・オン・デマンド）作品にも影響を与えています。例えば、『シャークネード』シリーズは、B級映画の荒唐無稽な楽しさを現代に再現し、SNS時代にバイラルな話題性を生みました。また、特殊効果やCGの進化により、低予算でも視覚的に魅力的な作品が生まれ、YouTubeやNetflixで新たなB級映画が量産されています。
社会文化的には、B級映画はタブーや風刺を扱うことで、主流では語られにくい声を代弁。フェミニズムやマイノリティの視点を取り入れた作品も増え、多様な表現の場を提供しています。B級映画の「自由さ」は、映画の創造性と視聴者文化に深い影響を与え続けています。
カルト文化
ここで、B級映画が育んだカルト文化について説明していきます。
B級映画のカルト文化は、低予算映画の独特な魅力が熱狂的なファン層を生み、独自の視聴体験やコミュニティを形成した現象です。この文化は、1970年代の深夜上映の普及とともに顕著になりました。特に『ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー』（1975年）は、観客が映画に合わせて歌い、踊り、台詞を叫ぶ参加型上映を確立。こうしたインタラクティブな体験は、B級映画が単なる娯楽を超え、ファンによる儀式的な文化を生み出す原動力となりました。エド・ウッドの『プラン9・フロム・アウター・スペース』（1959年）も、その「史上最悪」と称される粗雑さが逆説的に愛され、カルトクラシックとして語り継がれています。
カルト文化の特徴は、商業的成功よりも「愛すべき失敗」や過剰な個性が重視される点です。B級映画のチープな特殊効果や突飛なストーリーは、主流映画では得られない予測不可能性を提供。『トキシック・アベンジャー』（1984年）のような過激な作品は、ニッチなファン層に支持され、Troma Entertainmentのような製作会社はカルト映画の聖地となりました。1980年代のビデオブームで、こうした作品が家庭で繰り返し視聴され、ファンダムが拡大しました。
インターネット時代には、SNSやYouTubeがカルト文化をさらに加速。『シャークネード』（2013年）は、荒唐無稽な設定がネットミーム化し、B級映画の楽しさを現代に広めました。ファンイベントやコスプレ、オンラインフォーラムでの議論も盛んで、カルト映画はコミュニティの結束を強化します。B級映画は、社会規範や商業映画の枠組みに縛られない自由さで、マイノリティやサブカルチャーの声を反映し、観客に共感や解放感を与えます。このカルト文化は、映画を「観る」だけでなく「体験する」場として再定義し、現代のポップカルチャーに深い影響を与えています。
ファンイベント
B級映画のファンイベントは、その独特な魅力とカルト的な人気を共有する場として、熱心な愛好者やコミュニティを中心に世界中で開催されています。これらのイベントは、B級映画の荒唐無稽なストーリー、チープな特殊効果、ユーモラスな失敗を愛でる文化を背景に、観客が一体となって楽しむ機会を提供します。代表的な例として、『ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー』の深夜上映会が挙げられます。この映画は1970年代以降、観客がコスプレや台詞の掛け声、ダンスで参加するインタラクティブな上映が伝統となり、ニューヨークやロサンゼルスなどで定期開催されています。
日本でも、B級映画を愛好するイベントが開催されます。たとえば、アップリンク渋谷や新宿のミニシアターで、B級ホラーやSFの特集上映が行われ、監督や俳優のトークショーが併催されることがあります。また、ファン主催の「B級映画を語ろうの会」のような小規模な集まりも存在し、X上で「プラン9・フロム・アウター・スペース」などの作品をネタに熱い議論が交わされています。近年では、オンラインイベントも増え、ZoomやYouTube LiveでB級映画鑑賞会やレビュー配信が行われ、国内外のファンが交流。『シャークネード』のような現代B級映画は、SNSでのミーム化を背景に、ファンイベントでコメディ色の強い上映会が人気です。
これらのイベントは、映画館だけでなく、バーやカフェ、野外上映（例：うみぞら映画祭）でも開催され、気軽な雰囲気でファンが集います。コスプレコンテストやクイズ、関連グッズの販売も盛り上がり、B級映画の「愛すべきB級感」を共有する文化が根付いています。
レビュー 作品の感想や女優への思い