1987年に公開されたアメリカ合衆国のサスペンス・スリラー映画『ブラック・ウィドー』は、富豪の夫を次々と毒殺して財産を奪う謎の美女キャサリンと、彼女を執拗に追う司法省の女性捜査官アレクサンドラの心理戦を描いた作品。
ボブ・ラフェルソン監督のもと、デブラ・ウィンガーとテレサ・ラッセルが主演し、緊張感あふれるストーリーと女優たちの演技が光ります。批評家からはサスペンスの要素とキャラクターの深みが評価されています。
基本情報
- 邦題:ブラック・ウィドー
- 原題:BLACK WIDOW
- 公開年:1987年
- 製作国・地域:アメリカ
- 上映時間:102分
- ジャンル:サスペンス
『ブラック・ウィドー』 – 予告編(1987年、英語)
女優の活躍
本作では、主演のデブラ・ウィンガーとテレサ・ラッセルがそれぞれ対照的な役柄を演じ、映画の魅力を高めています。
デブラ・ウィンガーは司法省の捜査官アレクサンドラ・バーンズを演じ、彼女の活躍は物語の中心軸となります。アレクサンドラは、裕福な男性の不可解な死を調査する中で、容疑者であるキャサリンの存在に気づき、執念深く追跡します。ウィンガーの演技は、プロフェッショナルな捜査官としての冷静さと、内面的な葛藤を巧みに表現しており、批評家から「隠れた感情の深みを湛えた演技」と称賛されています。特に、キャサリンとの接近戦では、誘惑に揺らぐ人間的な弱さを自然に描き出し、観客を引き込む活躍を見せます。ウィンガーは本作以前に『愛と青春の旅だち』や『愛のイエントル』でアカデミー賞にノミネートされるなど、演技派女優として知られており、本作でもその実力を発揮しています。彼女の存在感は、物語の緊張感を支え、女性同士の対決をよりドラマチックにしています。
一方、テレサ・ラッセルは連続殺人犯のキャサリンを演じ、彼女の活躍は本作のハイライトです。キャサリンは裕福な男性を誘惑し、結婚後に毒殺して遺産を奪うという冷徹なキャラクターですが、ラッセルの演技はセクシーで自信に満ちた悪女像を鮮やかに描き出しています。批評家からは「シーンを盗むほどの魅力的な悪役」と評価されており、特にサザン・ベル風のアクセントや、男性を操る狡猾さが際立っています。ラッセルは夫であるニコラス・ローグ監督の作品で知られるようになり、本作ではその美貌と演技力を活かして、キャサリンの多面的な魅力を表現します。彼女の活躍は、単なる悪役ではなく、知性と美しさを兼ね備えた女性として描かれ、観客に複雑な感情を抱かせます。ウィンガーとの対峙シーンでは、二人の女優の化学反応が物語を盛り上げ、ラッセルのパフォーマンスが映画のサスペンス要素を強化しています。両女優の活躍は、1980年代のスリラー映画における女性像の進化を示す好例です。ウィンガーとラッセルの共演は、互いの演技を引き立て合い、本作を記憶に残る作品にしています。彼女たちの活躍を通じて、女性の心理描写が深く掘り下げられ、映画のテーマである欲望と正義の対立が鮮明になります。さらに、ラッセルの役柄は複数の変装を伴うため、彼女の演技の幅広さが際立ち、ウィンガーの安定した演技と相まって、物語のダイナミズムを生み出しています。
このような女優たちの活躍が、本作の成功に大きく寄与しています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の女優たちの衣装、化粧、髪型は、キャラクターの性格や物語の進行を反映したものとなっています。デブラ・ウィンガーが演じるアレクサンドラは、司法省の捜査官という役柄から、プロフェッショナルで実用的な衣装が中心です。主にスーツやブラウス、シンプルなスカートを着用し、動きやすさを重視したスタイルです。色調はグレーやネイビーなどの落ち着いたものが多く、捜査官らしい厳格さを表しています。
化粧はナチュラルメイクが基調で、薄いファンデーションに軽いリップとアイメイクを施し、過度な華やかさを避けています。これにより、彼女の真剣で知的なイメージを強調します。
髪型はショートヘアやポニーテールが多く、捜査活動に適したシンプルなものですが、ハワイでの潜入捜査時には少し柔らかいウェーブを加え、変装要素を加味しています。
このような衣装・化粧・髪型は、アレクサンドラの内面的な葛藤を視覚的に支え、物語の緊張感を高めます。
テレサ・ラッセルが演じるキャサリンは、複数の夫を誘惑する悪女役のため、衣装、化粧、髪型が多岐にわたり、変装の手段として活用されます。彼女の衣装はエレガントでセクシーなものが多く、ドレスやタイトなスカート、シルクのブラウスなどを着用します。各夫との出会いに応じてスタイルを変え、例えばニューヨークでは洗練されたビジネスライクな服装、ダラスではサザンスタイルのドレス、ハワイではトロピカルなリゾートウェアを纏います。色は赤や黒、金色などの魅惑的なものが目立ち、男性を誘う視覚効果を狙っています。
化粧は大胆で、赤いリップやスモーキーアイメイクを基調に、妖艶さを強調します。肌は完璧に整えられ、輝くような仕上がりです。
髪型は本作の鍵で、変装ごとに変化します。最初は黒髪のストレート、続いてブロンドのウェーブ、赤毛のカールなど、多様なスタイルを採用し、キャサリンのカメレオン的な性格を象徴します。これらの要素は、ラッセルの美貌を最大限に活かし、観客を魅了します。
女優たちの衣装・化粧・髪型は、監督のボブ・ラフェルソンの意図により、心理スリラーの雰囲気を醸成しています。特にキャサリンの変装は、髪色の変化が物語の謎を深め、視覚的なサスペンスを生み出します。ウィンガーのシンプルさとラッセルの華やかさの対比が、女性同士の対決を際立たせています。このような工夫が、本作のスタイリッシュさを支えています。
あらすじ
司法省の捜査官アレクサンドラ・バーンズは、裕福な男性たちの不可解な死に気づきます。それぞれの男性は、結婚直後に珍しい病「オンダインの呪い」で死亡し、遺産を若い妻に残しています。アレクサンドラは、これらの妻が同一人物ではないかと疑い、調査を開始します。容疑者の女性キャサリンは、名前と外見を変えながら、次々と富豪を誘惑し、結婚後に毒殺して財産を奪う連続犯です。
最初にニューヨークの出版王ベン・ドゥマースを毒殺した後、ダラスに移り、玩具会社の社長ウィリアム・マクローリーを標的にします。キャサリンは髪型や化粧を変えて変装し、男性たちを魅了します。アレクサンドラはこれらの事件を繋げ、キャサリンが西へ移動していることを突き止めます。シアトルでの次の犠牲者マイケルを経て、キャサリンはハワイに到着し、ホテル経営者のポール・ニュッテンと結婚します。アレクサンドラは休暇を装ってハワイに飛び、記者を名乗りキャサリンに接近します。
二人はスキューバダイビングのレッスンで親しくなり、アレクサンドラはポールにも惹かれ始めます。しかし、キャサリンはポールを毒殺しようと計画します。ポールは実は生きており、キャサリンを罠にかけるために死を偽装します。アレクサンドラは一時逮捕されますが、キャサリンの自白により事件は解決します。キャサリンは逮捕され、アレクサンドラの執念が実を結びます。
このあらすじは、女性同士の心理戦とサスペンスが交錯する展開です。
解説
『ブラック・ウィドー』は、1980年代のアメリカ映画界で注目されたネオノワール・スリラー。
監督のボブ・ラフェルソンは、『ファイブ・イージー・ピーセス』で知られるように、人間心理の深層を描くのが得意で、本作でも欲望と正義の対立をテーマにしています。脚本のロナルド・バスは、連続殺人犯の心理をリアルに構築し、女性視点のサスペンスを強調します。本作の特徴は、伝統的なフィルムノワールのように男性中心ではなく、女性二人が主役という点です。これにより、フェミニズム的な解釈も可能で、当時の社会変化を反映しています。
批評的には、Rotten Tomatoesで54%の評価を受け、賛否が分かれます。ロジャー・イーバートは2.5/4つ星を与え、演技を褒めつつ、サスペンスの欠如を指摘します。一方、ニューヨーク・タイムズのヴィンセント・キャンビーは、ユーモアと演技の深みを評価します。興行的には中程度の成功ですが、カルト的な人気を博しています。
製作背景として、ラフェルソンは6年のブランクを経て復帰し、メアリー・ストリープを検討したものの、ウィンガーとラッセルを選びました。撮影はハワイやニューヨークで行われ、コンラッド・L・ホールの撮影が美しい風景を活かします。音楽のマイケル・スモールは緊張感を高めます。本作は、女性のエンパワーメントとダークサイドを探求し、現代のスリラーに影響を与えています。
女優たちの対決は、心理描写の妙味があり、繰り返し視聴される価値があります。この解説を通じて、本作の芸術性と娯楽性が理解されます。
キャスト
- デブラ・ウィンガー:アレクサンドラ・バーンズ
- テレサ・ラッセル:キャサリン・ピーターセン/レニー/マーガレット/マリエル
- サミ・フレイ:ポール・ニュッテン
- デニス・ホッパー:ベン・ドゥマース
- ニコル・ウィリアムソン:ウィリアム・マクローリー
- テリー・オクイン:ブルース
- ロイス・スミス:サラ
- D.W.モフェット:マイケル
- レオ・ロッシ:リッチ
- メアリー・ウォロノフ:シェリー
- ルタニヤ・アルダ:アイリーン
- ジェームズ・ホン:シン
- ダイアン・ラッド:エッタ
- デイビッド・マメット:ハーブ
スタッフ
- 監督:ボブ・ラフェルソン
- 脚本:ロナルド・バス
- 製作:ローレンス・マーク、ハロルド・シュナイダー
- 撮影:コンラッド・L・ホール
- 編集:ジョン・ブルーム
- 音楽:マイケル・スモール
- 配給:20世紀フォックス



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