映画『チャーリーズ・エンジェル』(原題:Charlie’s Angels)は、エヴァン・スピリオトプロスとデヴィッド・オーバーンの原作を、エリザベス・バンクスが脚本・監督した2019年の米国のアクション・コメディ映画。主演はクリステン・スチュワート、ナオミ・スコット、エラ・バリンスカで、タウンゼント・エージェンシーという私立探偵事務所で働く新世代のエンジェルたちを演じています。本作は、映画「チャーリーズ・エンジェル」シリーズの第3弾で、アイヴァン・ゴフとベン・ロバーツによる同名のTV番組と、前2作の劇場映画『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)、『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(2003年)から続くストーリーのソフトなリブートであり、続編でもあります。
以下では、あらすじ、感想、解説、キャスト、スタッフについてまとめています。
あらすじ
『チャーリーズ・エンジェル』(2019年)は、国際機密企業チャーリー・タウンゼント社に所属する女性エージェント組織「チャーリーズ・エンジェル」の活躍を描いたアクション映画です。本作は、1976年から1981年に放送された同名テレビドラマシリーズと、2000年および2003年の映画版(キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューー主演)の続編であり、現代的なリブートとして再構築されています。物語は、新世代のエンジェルたちが新たなミッションに挑む姿を中心に展開します。
物語は、リオデジャネイロでの任務から始まります。変装と潜入のプロであるサビーナ・ウィルソン(クリステン・スチュワート)と、元MI6エージェントで武術と射撃に優れたジェーン・カノ(エラ・バリンスカ)が、犯罪組織に潜入し、横領犯ジョニーを逮捕します。この任務を通じて、エンジェルたちの華麗なアクションとチームワークが紹介されます。
一方、巨大テクノロジー企業で働く天才プログラマーのエレーナ・ハフリン(ナオミ・スコット)は、自らが開発した革新的なエネルギー装置「カリスト」に欠陥があることを発見します。カリストは持続可能なエネルギー源として期待されていますが、誤った使用により脳にダメージを与える可能性があり、兵器化される危険性を秘めています。エレーナは上司に欠陥を報告しますが却下され、内部告発者としてチャーリー・タウンゼント社に調査を依頼します。
エレーナの依頼を受け、サビーナとジェーンは彼女と接触しますが、カフェでの会合中に謎の暗殺者ホダック(ジョナサン・タッカー)に襲われます。この襲撃で、ボスレー(ジャイモン・フンスー)が死亡し、カリストのプロトタイプが奪われます。新たなボスレーであるレベッカ・ボスレー(エリザベス・バンクス)は、サビーナ、ジェーン、そしてエレーナをチームとして結成し、カリストの兵器化を阻止するミッションを遂行させます。
調査はハンブルクからイスタンブールへと移り、エレーナの上司フレミング(ナット・ファクソン)がカリストを闇市場で売却しようとしていることが判明します。しかし、フレミングは暗殺者に裏切られ殺害され、物語はさらに複雑化します。チームはカリストを追う中で、裏切り者の存在と黒幕の正体に迫ります。最終的に、引退したはずのジョン・ボスレー(パトリック・スチュワート)が黒幕であることが明らかになります。彼はカリストを利用して私利私欲を満たそうと企んでいました。
エンジェルたちは、イスタンブールでの激しい戦闘を経て、ジョン・ボスレーを倒し、カリストの悪用を阻止します。エレーナは正式にエンジェルとして訓練を受け、新たな一員として組織に加わります。物語の最後には、歴代エンジェルのカメオ出演や、エンジェル養成所のシーンが登場し、シリーズの歴史と未来へのつながりを示唆します。
感想
『チャーリーズ・エンジェル』(2019年)は、アクションとユーモアを軸に、女性のエンパワーメントを強く打ち出した作品です。以下は個人的な感想と、視聴者や批評家の反応を踏まえた評価です。
ポジティブな点
キャストの魅力とケミストリー
クリステン・スチュワート、ナオミ・スコット、エラ・バリンスカの3人は、それぞれ異なる個性を持ち、チームとしてのバランスが素晴らしい。クリステンのサビーナは自由奔放でウィットに富んだキャラクター、ナオミのエレーナは知性と成長を象徴し、エラのジェーンはクールで頼もしい存在感を発揮します。特にクリステン・スチュワートの演技は、トワイライトシリーズの内気なベラとは対照的な、自信に満ちた魅力で観客を引きつけます。視聴者からは「クリステンがかわいすぎる」「3人の絆が最高」との声が多く聞かれました。
現代的なアップデート
本作は、オリジナルシリーズのお色気重視のスタイルを抑え、女性の自立や団結を強調。セクシーさを控えめにし、アクションと知性を前面に出した点は、現代の観客に合わせて進化した印象を与えます。エリザベス・バンクス監督のインタビューによれば、「テレビにおける女性のエンパワーメントの始まり」としてのオリジナルシリーズの精神を継承しつつ、新たな時代に適合させた意図が感じられます。
アクションとビジュアル
リオ、ハンブルク、イスタンブールなど、国際的な舞台を背景にしたスタイリッシュなアクション場面は見応えがあります。特にイスタンブールの岩石採掘場でのクライマックスは、緊張感と迫力に満ちています。ヨーロッパの風景やファッションも作品の魅力を高めており、「風景が素敵」「絵面が美しい」との評価も。
カメオ出演とオマージュ
ジャクリーン・スミス(オリジナルシリーズのケリー・ギャレット)やヘイリー・スタインフェルドなどのカメオ出演は、シリーズのファンにとって嬉しいサプライズ。エンドロールでの歴代エンジェルの映像は、シリーズの歴史を振り返る感動的な演出でした。
ネガティブな点
ストーリーの平凡さ
物語は典型的なスパイアクションの枠組みに収まり、ひねりが少ないとの批判があります。黒幕の正体やカリストを巡る陰謀は予想通りで、深みが欠ける印象。批評家からは「チャーリーズ・エンジェルである必要性が感じられない」との声も。
興行成績と評価の低さ
otten Tomatoesでは52%(227件中119件が好評価、平均5.37/10)、Metacriticでは52/100と、批評家の評価は賛否両論。興行的にも振るわず、シリーズの続編が期待されたものの、商業的な成功には至りませんでした。「女性押しが強すぎて中途半端」との意見も見られます。
フェミニズムの扱い
女性エンパワーメントを強調する一方で、タイトルが「チャーリーズ・エンジェル」(チャーリーの所有物)であることや、男性の黒幕に翻弄される展開が、フェミニズムのメッセージを薄めているとの指摘があります。オリジナルシリーズが持っていた「自立した女性像」に比べ、上辺だけのフェミニズムと感じる視聴者も。
全体として、本作は気軽に楽しめるポップなアクション映画として成功していますが、前作(2000年、2003年)の軽快な魅力やインパクトには及ばない印象です。頭を空っぽにして楽しむには最適で、特に女性キャストの活躍や絆に魅力を感じる視聴者にはおすすめです。
解説
シリーズの背景とリブートの意義
『チャーリーズ・エンジェル』は、1976年のTV番組で始まり、女性が主役のアクション作品として画期的でした。2000年と2003年の映画版は、キャメロン・ディアスらのスター性を活かし、ポップでコミカルな作風で大ヒット。本作は、17年ぶりの映画版として、現代の価値観(ジェンダー平等、女性のエンパワーメント)に合わせて再構築されました。チャーリー・タウンゼント社が国際的な組織に進化し、ボスレーが役職名として複数存在する設定は、シリーズのスケールアップを象徴しています。
テーマとメッセージ
本作のコアテーマは「女性の団結と成長」です。サビーナ、ジェーン、エレーナは、それぞれ異なる背景を持ち、互いの弱さを補い合うことで強さを発揮します。エレーナの成長物語(一般人からエンジェルへ)は特に強調され、視聴者に「誰でもヒーローになれる」メッセージを伝えています。また、セクシーさを抑えた演出や、恋愛要素を最小限にした点は、女性をオブジェクト化せず、能力と個性を重視する姿勢を示しています。
アクションと演出
エリザベス・バンクス監督は、スタイリッシュかつ現実的なアクションを目指しました。ワイヤーアクションや派手なVFXは控えめで、格闘技やガジェットを活用した戦闘が中心。サビーナの変装、ジェーンの武術、エレーナのハッキングが組み合わさるシーンは、各キャラクターの専門性を活かしたチームワークが見どころです。ただし、前作のマックG監督のポップな演出に比べると、テンポやインパクトがやや弱いとの評価も。
文化的影響と今後の展望
本作は、女性主導のアクション映画の需要に応える試みでしたが、興行的に苦戦したため、シリーズの即時続編は難しい状況です。しかし、女性キャストによるアクション映画の市場は拡大しており、『ワンダーウーマン』や『キャプテン・マーベル』のような作品と比較される中で、本作は独自の軽快さと多様性を提供しました。ファンからは「続編が見たい」との声も多く、将来的な再挑戦の可能性は残っています。
キャスト
- クリステン・スチュワート(サビーナ・ウィルソン):変装と潜入のプロで、ウィットに富んだリーダー格。『トワイライト』シリーズのベラ役で知られ、本作ではアクションとコメディの才能を発揮。
- ナオミ・スコット(エレーナ・ハフリン):ハッキングとプログラミングの天才で、新人エンジェル。『アラジン』のジャスミン役でブレイクし、本作では知性と成長を体現。
- エラ・バリンスカ(ジェーン・カノ):元MI6エージェントで、武術と射撃のエキスパート。180cmの長身とクールな魅力が際立つ新星。
- エリザベス・バンクス(レベッカ・ボスレー):エンジェルの司令塔で、監督・脚本も兼務。『ピッチ・パーフェクト』シリーズで知られる。
- パトリック・スチュワート(ジョン・ボスレー):引退したボスレーで、物語の黒幕。『スター・トレック』や『X-MEN』での重厚な演技が光る。
- ジャイモン・フンスー(エドガー・ボスレー):序盤で犠牲となるボスレー。『グラディエーター』などで知られる。
- サム・クラフリン(アレクサンダー・ブロック):テクノロジー企業のCEO。『ハンガー・ゲーム』シリーズのフィニック役。
- ノア・センティネオ(ラングストン):エレーナの友人でコミカルな役割。『好きだった君へ』シリーズで人気。
- ジョナサン・タッカー(ホダック):謎の暗殺者。『キングダム/見えざる敵』などで活躍。
- カメオ出演:ジャクリーン・スミス(ケリー・ギャレット)、ヘイリー・スタインフェルド(エンジェル候補生)など。
スタッフ
- 監督・脚本:エリザベス・バンクス(『ピッチ・パーフェクト2』で監督デビュー。女優としても出演)
- 原案:エヴァン・スピリオトポウロス(『美女と野獣』2017年版の脚本)、デヴィッド・オーバーン
- 製作:エリザベス・バンクス、マックス・ハンデルマン、ダグ・ベルグラッド、エリザベス・カンティロン
- 製作総指揮:ドリュー・バリモア(2000年・2003年版のエンジェル役)、ナンシー・ジュボネン、レナード・ゴールドバーグ、マシュー・グロス
- 撮影:ビル・ポープ(『マトリックス』シリーズ)
- 編集:アラン・ボームガーテン(『アメリカン・ハッスル』)
- 音楽:ブライアン・タイラー(『ワイルド・スピード』シリーズ)
- 配給:ソニー・ピクチャーズ・リリーシング
- 公開日:2019年11月15日(米国)、2020年2月21日(日本)
- 上映時間:118分
まとめ
『チャーリーズ・エンジェル』(2019年)は、現代的な女性のエンパワーメントをテーマに、新世代のエンジェルたちが活躍するスタイリッシュなアクション映画です。クリステン・スチュワート、ナオミ・スコット、エラ・バリンスカの魅力的な演技と、エリザベス・バンクス監督の現代的アプローチが光る一方、ストーリーの平凡さや興行的な苦戦は課題として残りました。それでも、シリーズのファンや気軽なアクション映画を求める視聴者には十分楽しめる作品です。歴代エンジェルへの敬意と新たな可能性を示した本作は、女性主導のアクション映画の系譜において、独自の足跡を残しています。
レビュー 作品の感想や女優への思い