2007年公開のイギリス映画『ダイヤモンド・ラッシュ』(原題:Flawless)は、実話ベースのクライムサスペンス。デミ・ムーアとマイケル・ケインが共演し、1960年代のロンドンでダイヤモンド商社を舞台に、女性重役と清掃員が大胆な強奪計画を企てる物語。
基本情報
- 邦題:ダイヤモンド・ラッシュ
- 原題:FLAWLESS
- 公開年:2007年
- 製作国:英国
- 上映時間:108分
- ジャンル:アクション
あらすじ
1960年代のロンドン。世界的ダイヤモンド商社「ロンドン・ダイヤモンド」で働くキャリアウーマンのローラ・クイン(デミ・ムーア)は、優秀な実績を誇るも、女性という理由で昇進の道を閉ざされ、さらには不当な解雇の危機に瀕していました。プライベートを犠牲にして仕事に打ち込んできた彼女は、会社への不信感を募らせていました。そんな中、夜勤の清掃員ホッブス(マイケル・ケイン)が彼女に接触します。彼は、長年会社に仕えてきたが報われず、個人的な復讐心から金庫に眠る大量のダイヤモンドの強奪を計画していました。ローラにその計画への協力を求めます。当初はためらうローラでしたが、会社への不満と自身の境遇から、ホッブスの提案に乗ることを決意します。
ホッブスは、会社の警備システムの盲点を巧みに利用し、鉄壁とされる金庫からダイヤモンドを盗み出す方法を考案します。ローラは監視の目をそらす役割を担い、計画は実行に移されます。ところが、ホッブスの当初の計画では少量のダイヤを盗む予定だったにもかかわらず、金庫内の2トンものダイヤモンドが全て消えてしまうという予想外の事態が発生。会社は事件を公にしたくないため、内密に調査を開始します。ローラとホッブスは互いに疑心暗鬼になりながらも、捜査の目を逃れようと奔走します。物語は、ホッブスの真の動機やダイヤモンドの行方、そしてローラのその後の人生へと展開し、単なる犯罪劇を超えた人間ドラマが描かれます。物語の冒頭と終盤では、年老いたローラがインタビューで過去を振り返るシーンが登場し、彼女の行動の背景と結末が明らかにされます。
女優の活躍
本作で主演を務めるデミ・ムーアは、ローラ・クイン役として、知的で気丈なキャリアウーマンを熱演しています。彼女の演技は、女性として社会で戦う困難さと、内に秘めた葛藤を見事に表現しています。特に、会社への忠誠心と裏切りへの誘惑の間で揺れる心理描写は、ムーアの繊細な表情と仕草を通じて観客に強く伝わります。冒頭と終盤の老齢のローラを演じる際には、特殊メイクを施して登場し、若いキャリアウーマンから年老いた女性への変貌を見事に演じ分けました。この特殊メイクによる演技は、観客に最初は別人と思わせるほどの説得力があり、彼女の演技力の高さを示しています。また、ムーアは本作でプロデューサーとしても名を連ねており、作品全体への関与度も高いことが伺えます。彼女の存在感は、マイケル・ケイン演じるホッブスとの対比を通じて、物語の緊張感とドラマ性をさらに引き立てています。
女優の衣装・化粧・髪型
デミ・ムーア演じるローラ・クインの衣装は、1960年代のロンドンのビジネスシーンを反映した、洗練されたスタイルが特徴です。衣装デザイナーのディナ・コリンが手掛けた衣装は、タイトなスーツやエレガントなドレスで構成され、当時のキャリアウーマンのフォーマルな雰囲気を再現しています。具体的には、膝丈のペンシルスカートにフィットしたジャケット、モノトーンのカラーパレットが中心で、彼女の知性とプロフェッショナリズムを強調しています。アクセサリーは控えめで、シンプルなパールのネックレスやブローチが用いられ、過度な装飾を避けた上品さが際立ちます。
化粧は、ナチュラルでありながらも洗練された印象を与えるもので、薄いファンデーションに赤みの強いリップスティック、軽く引かれたアイライナーが特徴です。これにより、彼女の知的で落ち着いた魅力が引き立てられています。
髪型は、1960年代の流行を反映したアップスタイルや、緩やかなウェーブのかかったショートヘアが中心で、清潔感と品格を保ちつつ、女性らしい柔らかさも表現しています。特に、重要なシーンでは髪をタイトにまとめ、彼女の決意や緊張感を視覚的に示す演出が施されています。
終盤の老齢のローラでは、白髪交じりの髪とシワを強調したメイクで、時間の経過と人生の重みを表現しており、衣装も落ち着いた色調のドレスに変化し、彼女の内面的な成長を象徴しています。
解説
『ダイヤモンド・ラッシュ』(原題:Flawless)は、実話を基にしたクライムサスペンスでありながら、単なる強盗映画にとどまらない深いテーマ性を持つ作品です。物語の舞台は1960年代のロンドンで、当時の女性差別やダイヤモンド業界の闇が背景に描かれています。ローラが直面する性差別は、現代の視点からも共感を呼び、彼女の葛藤と決断が物語の核となっています。ホッブスの動機には個人的な悲劇が絡み、彼の行動は単なる犯罪を超えた復讐劇としての側面を持ちます。この二人の異なる動機が交錯することで、物語は複層的なドラマとして展開します。
監督のマイケル・ラドフォードは、『イル・ポスティーノ』で知られる繊細な演出力を本作でも発揮し、派手なアクションよりも心理的な駆け引きと人間関係に焦点を当てています。映画のタイトル「Flawless(完璧)」は、ダイヤモンドの品質だけでなく、犯罪計画の緻密さや、登場人物の複雑な心情を象徴しています。物語は、ダイヤモンド業界の独占や搾取の構造、南アフリカのアパルトヘイト問題など、社会的なテーマも織り交ぜ、観客に考えさせる要素を提供しています。地味ながらも丁寧に作られた本作は、劇場未公開ながらDVDレンタルなどで根強い人気を博しています。視覚的な派手さは控えめですが、脚本の緻密さと俳優陣の演技力が光る作品です。
キャスト
- デミ・ムーア(ローラ・クイン):ダイヤモンド商社のキャリアウーマン。会社への不満から強奪計画に加担。
- マイケル・ケイン(ミスター・ホッブス):清掃員として働く初老の男性。緻密な計画でダイヤモンド強奪を主導。
- ランベール・ウィルソン:会社の上層部の一人で、ローラの同僚。
- ナサニエル・パーカー:会社の調査に関わる人物。
- ニコラス・ジョーンズ:会社幹部の一人。
- ジョス・アックランド:ダイヤモンド商社の重役。
- ショーガン・シーモア:脇役として登場。
- デヴィッド・バラス:調査員役。
- サイラス・カーソン:会社関係者。
- ダーレン・ネスビット:脇役として登場。
- ナタリー・ドーマー:脇役として登場。
スタッフ
- 監督:マイケル・ラドフォード
- 製作:マーク・ウィリアムズ、マイケル・ピアース
- 製作総指揮:スティーブン・マーゴリス、ナタリア・マルキン、ビタリー・マルキン、リサ・ウィルソン
- 脚本:エドワード・A・アンダーソン
- 撮影:リチャード・グレートレックス
- 美術:ソフィー・ベッカー
- 衣装:ディナ・コリン
- 編集:ピーター・ボイル
- 音楽:スティーブン・ウォーベック
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