『ハロウィン』(1978年)は、ジョン・カーペンター監督のアメリカのインディーズ・スラッシャー映画。低予算ながら大ヒットし、スラッシャー映画の先駆けとなった。マイケル・マイヤーズがハロウィンの夜に殺戮を繰り広げ、女子高生ローリーを襲う恐怖を描く。ジェイミー・リー・カーティスのデビュー作。
基本情報
- 邦題:ハロウィン
- 原題:HALLOWEEN
- 公開年:1978年
- 製作国:米国
- 上映時間:90分
- ジャンル:ホラー
女優の活躍
『ハロウィン』(1978年)は、ジェイミー・リー・カーティスが主演として映画デビューを果たした作品であり、彼女のキャリアの出発点として特に注目されます。カーティスが演じたローリー・ストロードは、恐怖に立ち向かう強いヒロイン像を確立し、後のホラー映画における「ファイナル・ガール」の原型となりました。彼女の演技は、恐怖と冷静さのバランスが絶妙で、観客に強い印象を与えました。特に、マイケル・マイヤーズに追い詰められるシーンでの叫び声や怯えた表情は、ホラー映画のアイコンとして記憶されています。カーティスはこの役で一躍スターとなり、以降の『ハロウィン』シリーズや他の映画でも活躍を続けました。
また、P.J.ソールズが演じたリンダ・ヴァン・ダー・クロックも重要な役割を果たしました。ソールズは陽気で少し軽薄な女子高生を演じ、物語に軽妙なユーモアを加えています。彼女の自然体な演技は、マイケルの冷酷な殺戮との対比を際立たせ、観客にリンダの運命を一層印象的なものにしました。ナンシー・ルーミス(後のナンシー・キーズ)が演じたアニー・ブラケットも、親しみやすいキャラクターとして物語に深みを加えました。彼女たちはそれぞれ異なる個性を持ち、映画の緊張感と人間ドラマを補完しています。
女優の衣装・化粧・髪型
『ハロウィン』の女優たちの衣装、化粧、髪型は、1970年代後半のアメリカの郊外の女子高生をリアルに反映したもので、シンプルかつ自然体なスタイルが特徴です。
ジェイミー・リー・カーティス(ローリー・ストロード)
ローリーの衣装は、控えめで真面目な性格を反映したもの。主に長袖のブラウスやセーター、ハイウエストのジーンズやスカートを着用し、典型的な「優等生」風のスタイルです。色合いはベージュ、ブラウン、ブルーなど落ち着いたトーンで、派手さを避けたデザインが目立ちます。化粧はほぼナチュラルで、軽いファンデーションとリップのみ。髪型は肩までの長さのストレートヘアで、前髪を少し残したナチュラルなスタイル。ローリーの外見は、普通の女子高生としての親しみやすさと、恐怖の中での無垢さを強調しています。
P.J.ソールズ(リンダ・ヴァン・ダー・クロック)
リンダの衣装は、ローリーよりも少し大胆でカジュアル。タイトなトップスやジーンズ、時にはカジュアルなカーディガンを着用し、活発で社交的な性格を表現。彼女のトレードマークであるポニーテールは、1970年代の若者らしい軽快さを象徴しています。化粧はローリーより少し濃いめで、アイラインやチークが目立ち、明るいリップで若々しさを強調。リンダのスタイルは、自由奔放で少し遊び心のある女子高生像を体現しています。
ナンシー・ルーミス(アニー・ブラケット)
アニーの衣装は、カジュアルかつ実用的なもの。シャツやスウェット、ジーンズなど動きやすい服装が多く、ベビーシッターとしての現実的な役割を反映。化粧は控えめで、リップと軽いアイメイク程度。髪型はミディアムレングスのゆるいウェーブで、ナチュラルな魅力が強調されています。アニーの外見は、親しみやすく現実的なキャラクター性を表現しています。
以上の衣装やスタイルは、1970年代のアメリカ郊外の雰囲気を忠実に再現し、観客にキャラクターの日常性を感じさせ、ホラー要素との対比を際立たせました。
あらすじ
1963年10月31日、イリノイ州ハドンフィールドで、6歳のマイケル・マイヤーズが姉ジュディスを包丁で殺害する事件が発生。マイケルは精神病院に収容される。15年後の1978年、21歳になったマイケルはハロウィンの前夜に病院を脱走。故郷ハドンフィールドに戻り、白いマスクと作業着に身を包んだ彼は、女子高生ローリー・ストロードとその友人たちを執拗に追い詰める。マイケルの精神科医サム・ルーミス博士は彼の危険性を知り、追跡を開始。ハロウィンの夜、マイケルはローリーの友人たちを次々と殺害し、ついにローリーに襲いかかる。ローリーは必死に抵抗し、ルーミス博士の介入により一時的にマイケルを撃退するが、彼の遺体は忽然と消える。恐怖の夜は終わることなく、物語は不気味な余韻を残して幕を閉じる。
解説
『ハロウィン』(1978年)は、ジョン・カーペンター監督によるスラッシャー映画の金字塔であり、低予算(約30万ドル)ながら世界中で7000万ドル以上の興行収入を記録し、インディペンデント映画として驚異的な成功を収めました。アルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』やボブ・クラークの『暗闇にベルが鳴る』に影響を受けた本作は、スラッシャー映画の原型を確立し、『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』など後続のホラー映画に多大な影響を与えました。
本作の特徴は、マイケル・マイヤーズ(通称ブギーマン)の超人的な不気味さと、単純ながら効果的なストーリー展開にあります。マイケルは感情や動機が不明で、ただひたすら殺戮を繰り返す存在として描かれ、その「純粋な悪」のイメージが観客に強い恐怖を与えます。カーペンターが手掛けた不気味なテーマ曲は、単純なピアノの旋律ながら緊張感を高め、映画のアイコンとなりました。撮影は南カリフォルニアで行われ、限られた予算の中で効果的な演出が施されました。特に、マイケルの視点を使ったPOVショットや、暗闇から現れる彼の姿は、観客に直接的な恐怖を植え付けます。
ジェイミー・リー・カーティスのローリーは、ホラー映画における「ファイナル・ガール」の原型を築きました。彼女のキャラクターは、恐怖に立ち向かう強さと知性を持ち、後のホラー映画のヒロイン像に大きな影響を与えました。また、ドナルド・プレザンス演じるルーミス博士の狂気と執念に満ちた演技も、物語に深みを加えています。
本作の成功は、低予算映画でも強力なストーリーテリングと演出で大ヒットが可能であることを証明し、インディペンデント映画の可能性を広げました。さらに、ハロウィンの夜という設定は、ホラー映画に季節性を与え、文化的なアイコンとしての地位を確立しました。シリーズはその後も複数の続編やリメイクを生み出し、ホラー映画のフランチャイズとして現在も続いています。
キャスト
- ジェイミー・リー・カーティス(ローリー・ストロード):ハドンフィールドの女子高生で、マイケルの標的。知性と勇気で立ち向かう。
- ドナルド・プレザンス(サム・ルーミス博士):マイケルの精神科医で、彼の危険性を追う執念深いキャラクター。
- P.J.ソールズ(リンダ・ヴァン・ダー・クロック):ローリーの友人で、陽気で少し軽薄な女子高生。
- ナンシー・ルーミス(アニー・ブラケット):ローリーの親友で、ベビーシッターを務める現実的なキャラクター。
- ニック・キャッスル(マイケル・マイヤーズ/ザ・シェイプ):無言で不気味な殺人鬼。白いマスクと作業着が特徴。
- ウィル・サンディン(幼少期のマイケル):1963年の殺人シーンを演じる。
- トニー・モラン(マイケルの素顔):終盤で一瞬だけマスクを外したマイケルを演じる。
- チャールズ・サイファース(保安官リー・ブラケット):アニーの父親で、町の保安官。
- カイル・リチャーズ(リンジー・ウォレス):アニーが世話する子供。
- ブライアン・アンドリュース(トミー・ドイル):ローリーが世話する子供。
スタッフ
- 監督・音楽・脚本:ジョン・カーペンター。カーペンターは本作の監督、音楽、脚本を担当し、ホラー映画の新たなスタンダードを確立。テーマ曲は彼の代表作の一つ。
- 脚本・製作:デブラ・ヒル。カーペンターと共同で脚本を執筆し、女性視点のキャラクター造形に貢献。製作としても映画の成功に寄与。
- 製作総指揮:アーウィン・ヤブランス。低予算での製作を支え、インディペンデント映画としての成功を後押し。
- 撮影:ディーン・カンディ。暗闇やPOVショットを効果的に使い、恐怖感を増幅。
- 編集:トミー・リー・ウォレス、チャールズ・バーンスタイン。緊張感のある編集で、物語のテンポを維持。
- 製作会社:コンパス・インターナショナル・ピクチャーズ、ファルコン・インターナショナル・プロダクションズ
- 配給:コンパス・インターナショナル、アクエリアス・リリーシング
まとめ
『ハロウィン』(1978年)は、低予算ながらもジョン・カーペンターの卓越した演出とジェイミー・リー・カーティスの鮮烈なデビューにより、ホラー映画史に燦然と輝く名作です。シンプルな衣装とリアルなキャラクター造形、緊張感あふれるストーリー、印象的な音楽が融合し、スラッシャー映画の金字塔となりました。シリーズの原点として、今なお多くのファンに愛されています。
レビュー 作品の感想や女優への思い