映画「混血児リカ ハマぐれ子守唄」は、1973年6月23日に公開された日本映画です。凡天太郎の同名劇画を原作としたシリーズの第3作で、混血児のリカが横浜を舞台に悪徳商人と対決するアクション満載の物語を描いています。監督は吉村公三郎、主演は青木リカです。エロスと暴力が融合した異色作で、反米思想や女性の強さをテーマにしています。
基本情報
- 原題:混血児リカ ハマぐれ子守唄
- 公開年:1973年
- 原作者:凡天太郎
女優の活躍
主演の青木リカさんは、シリーズ全作で主人公リカを演じています。彼女はハーフのエキゾチックな容姿を活かし、硬質な演技で知られています。この作品では、少年院からの脱走を繰り返し、精神病院での闘いや悪徳商人の山荘への襲撃など、奔放な活躍を見せています。アクションシーンでは技斗をこなし、色気を武器に男たちを翻弄します。吉村公三郎監督からイングリッド・バーグマンに例えられ、手取り足取りの演技指導を受けました。シリーズ後、1974年の「学生やくざ」にゲスト出演した後、女優業から姿を消しました。デビュー時は高校生で、オーディションで主役に抜擢された経歴を持ちます。
宗田政美さんは、少年院のボスである竜巻お万を演じています。リカと対立しながらも協力し、リンチシーンや脱走シーンで存在感を発揮します。笠原玲子さんは、くちなわのお京役で、豪快な脱ぎっぷりを披露し、少年院の仲間として活躍します。平井佳代さんはカツアゲお藤、栗原妙子さんはチャリンコお浜、田沢淳子さんは八百屋お七をそれぞれ演じ、少年院の少女たちとしてリカを支え、集団での脱走や闘いに参加します。深沢英子さんは黒人女性役で、親子心中のシーンを演じ、顔を黒くした特殊メイクで印象を残します。市毛良枝さんは娘ジュン役で、連れ去られ救出される重要な役割を果たします。これらの女優さんたちは、作品のアウトローな雰囲気を高め、アクションとドラマを盛り上げています。全体として、女性キャラクターの強さと連帯が強調され、男社会への抵抗を体現しています。
女優の衣装・化粧・髪型
青木リカさんの衣装は、サイケデリックで先端的なデザインが特徴です。原作者の凡天太郎さんがデザインした「タトゥー・ルック」と呼ばれるファッションを着用し、フォーリーブスのジャケットやモハメド・アリのリングガウンに似た派手なスタイルです。アクションシーンに適した動きやすい服装が多く、脱走や闘いの場面で機能性を重視しています。化粧はエキゾチックなハーフの顔立ちを活かし、自然で力強い印象を与えています。髪型はロングヘアを基本に、乱れたスタイルで野性味を表現しています。
宗田政美さんの衣装は、少年院のボスらしい荒々しい服装で、革ジャンやジーンズ風のラフなスタイルです。化粧は濃いめで威圧感を出し、髪型はショートカットや乱れ髪で強さを強調します。笠原玲子さんは、くちなわのお京役で露出度の高い衣装を着用し、セクシーさをアピールします。化粧は派手で、髪型はウェーブのかかったミディアムヘアです。平井佳代さん、栗原妙子さん、田沢淳子さんの少年院少女たちは、統一されたラフな制服風衣装で、化粧は薄めですが、傷や汚れを模したメイクで過酷さを表しています。髪型はポニーテールや散らしたスタイルです。深沢英子さんは黒人女性役で、顔を黒く塗った特殊化粧をし、民族的な衣装を着用します。髪型はアフロ風です。市毛良枝さんはジュン役で、純粋な少女らしいシンプルな衣装とナチュラルメイク、ストレートヘアです。これらの要素は、作品のダーティでヘヴィな雰囲気を視覚的に支えています。
あらすじ
少年院に収容されたリカは、院のボスである竜巻お万と対立しながら脱走の機会を狙います。保護員のスキに乗じて逃走に成功し、故郷の横浜港に戻ります。そこで、親子心中を図った黒人女性とその娘ジュンを救います。ジュンの父はアメリカ人で、親子を捨てて失踪しており、リカは同じ混血児として同情します。ジュンは愚連隊に追われ、オートバイに乗った隠密刑事の五郎に救出され、ホテルで愛の交歓に及びますが、警官に発見され、リカは再び少年院へ送られます。お万による凄絶なリンチを受けます。所長と兵曹長が結託し、少女たちを外国へ売り飛ばすため精神病院へ移送します。
精神病院でリカはゴリラ男に襲われますが、お万たちと協力して大混乱を引き起こし、脱走に成功します。ジュンが国際悪徳商人のニクイソンに連れ去られ、天城の山荘でブルーフィルム製作に利用されていることが判明します。リカと五郎はオートバイで天城へ向かい、激しい銃撃戦を繰り広げます。馬でニクイソンを追跡し、お万たちと合流して別荘を襲撃、ジュンを救出します。国際悪徳商人を追う中で、天城山中や伊豆海岸を舞台にリカの奔放な活躍が描かれます。この物語は、差別や搾取に対する抵抗をテーマに、アクションとドラマを融合させています。
解説
「混血児リカ ハマぐれ子守唄」は、凡天太郎の劇画を原作としたシリーズの最終作です。1973年に東宝配給で公開され、上映時間は85分です。監督の吉村公三郎は、病み上がりで4年ぶりの復帰作として本作を手がけ、主演の青木リカさんを高く評価しました。脚本は新藤兼人が担当し、シリーズを通じて一貫しています。製作は低予算のオールロケで、ヘヴィでダーティなビッチムービーとして位置づけられます。東映のスケバン映画ブームに影響を受けつつ、独自の反米思想や女性の応援歌を織り交ぜています。アメリカ批判は控えめですが、混血児の苦難や搾取を描き、社会問題を反映しています。
音楽は竹村次郎によるコメディタッチの曲調が多く、アクションシーンを軽快に彩ります。一部バージョンでは精神病院のエピソードが抜けていましたが、完全版で復元されています。シリーズ全体として、実験的な娯楽作品として評価され、スタッフの新たな一面を発見できます。安っぽさが負のパワーを生み、ビッチムービー史上に輝く傑作です。ソフト化は長年未発売でしたが、2025年にDVDが発売されました。この作品は、1970年代の日本映画の多様性を示す貴重な一作です。
キャスト
- 青木リカ:リカ
- 河原崎次郎:五郎
- 宗田政美:竜巻お万
- 平井佳代:カツアゲお藤
- 栗原妙子:チャリンコお浜
- 笠原玲子:くちなわのお京
- 田沢淳子:八百屋お七
- 大木正司:鬼の兵曹長
- 田道秀幸:モラルさん
- 初井言栄:院長
- 柳原幸一:ハブのゴン太
- 陳永富:軍曹
- 加藤善己:伍長
- 内田直哉:上等兵
- 扇谷敏:一等兵
- 深沢英子:黒人女
- 市毛良枝:娘ジュン
- 殿山泰司:精神病院長
- マンモス鈴木:ゴリラ男
- 清水幹生:ニクイソン
- ボス・アルストルム:ジョージ権藤
- 田中邦衛:兵隊キチガイ
- 長本和子:夜桜の令子
- 佐藤文紀:鉄
- 津嘉山正種:沼田
- 今井和子:加代
- 森塚敏:広瀬
- 中台祥浩:立花
- 荒川保男:サブ
- 内田良平:不明
スタッフ
- 監督:吉村公三郎
- 脚本:新藤兼人
- 原作:凡天太郎
- 製作:安西一人、高島道吉、遠藤雅也
- 撮影:杉田安久利
- 美術:阿部三郎
- 音楽:竹村次郎
- 録音:黒岩竜彦
- 照明:岡本健一
- 編集:近藤光雄
- 助監督:臼井高瀬
- スチール:新藤次郎
- 制作会社:オフィス二○三(近代映画協会)
- 配給:東宝



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