ナイロンは単なるパンティ・ストッキングの素材にとどまりません。1937年に米国デュポン社が発明して以来、ナイロンは女性の社会進出の象徴となり、スミソニアン・マガジンによれば、合成樹脂の時代の幕開けとともなり、プラスチックに依存する社会の基礎を築きました。
しかし今日、ナイロンはしばしば大きな苦痛と考えられています。脚足を締めつけるうえ、破れたり、引っ掛かったり、伝線したり…。嫌悪感が先行して、大叔母や『マッドメン』の秘書たちが着ていた昔ながらの下着のセックスアピールをナイロン・ストッキングに備わっていることに気づかない女性たちもいます。
ナイロンの魅力を疑っている人たちに言いたい、ナイロンは性的ダイナマイトです。なぜナイロン製の下着に爆発的に興奮するのでしょうか?ガーターベルトを外し、ナイロン・フェティッシュの絹のような滑らかな肌触りには、透け感や仄かな匂いも相まって魅惑的な世界が潜んでいるのです。
ナイロン・フェティシズム
ナイロン・フェティシズムとはナイロン製の衣料や着用部位・着用者に性的興奮を覚えること。略語にナイロン・フェチ。
『Trans Sex: Clinical Approaches to Trans Sexualities and Erotic Embodiments』(2021年)の著者であり、セックス教育者でもあるルーシー・フィールディングは、ナイロン・フェティシズムとは最も基本的なフェティシズムの一つで、ナイロンのさまざまな面に対する性的関心であると定義しています。
フィールディングによると、ナイロン・フェティシズムには狭い意味も広い意味もあり、ガーターやフィッシュネット、ストッキングやタイツなど、脚足を覆うものが代表的。また、ボディタイツや肌着のように上半身を覆う衣料にナイロンが使われることもあります。
上半身を覆う衣料で代表的なものはボディ・ストッキング。これは着用者の胴体、脚、場合によっては腕を覆うワンピース型の肌に密着した衣服。ストッキングやパンティ・ストッキングに使用されるような薄手の生地、またはフィッシュネット、レース、不透明な素材、またはこれらの素材のバリエーションから作られる基礎衣料またはランジェリーの一品です。パフォーマンス衣装として使用されるレオタードとは異なります。
ボディ・ストッキングは、透けたり露出したりするようにデザインされながらも乳首や局部を露出しないように、ベリーダンサーやエキゾチックダンサーなどのパフォーマーが下着として着用することがあります。この場合はランジェリーでありながらパフォーマンス衣装でもある考えることができます。

さて、脚足であろうと、胴体・上肢であろうと、好まれるナイロン製衣料の色柄には、無地の肉色に限定されることもあれば、あらゆる色合いのデザインや模様に及ぶこともあります。
自分の体にナイロンを着用するのが好きなフェティシスト(フェチ)もいれば、他人が穿いているのを見るのが好きな人もいます。しかし、一人ひとりがナイロン・フェチのスペクトルのどこに位置するかにかかわらず、ナイロン・フェティシズムはナイロン美学を超えるものなのです。
フロリダ在住の臨床セラピストで、ジェット・セッティング・ジャスミンとして活動する大人のエンターテイナー、ジャスミン・ジョンソンは述べています。
ナイロン・フェチの人は、手触りであれ匂いであれ、ナイロンから来るさまざまな感覚によって興奮します。私のクライアントには、ストッキングを口に含むのが好きな人もいます。ナイロン・フェティシズムは感覚と関係があるんです。
なぜナイロンなのか?
あらゆる種類のキンクやフェチのためのアダルトコンテンツを制作しているジョンソンによれば、ほとんどのナイロン・フェティシストは、実に狭く粒度の細かい関心をもっているといいます。
黒人の彼女がベージュのナイロンを着ている姿を見てみいという人を知っているそうです。他のナイロン・フェティシストは、色合いにはこだわらないものの高級なデザイナーもののペアを好むかもしれません。また、ナイロンそのものを穿きたいという人もいます。
たとえば、「脚に毛が生えている男性にとっては、すらっとした感覚を得ることができるとジョンソンは言います。ストッキングが生み出す束縛と、ペニスをもつ人が感じるかもしれない「男性的な締め付け」を強調しています。
フィールディングによれば、ナイロンは、とくにさまざまなフェム表現で遊ぶとき、その人のジェンダー探求の重要なツールにもなりえます。他の下着と同じように、ナイロンはあからさまでも控えめでもOK。とくクィアな人々にとって、ナイロンはジェンダーの幸福感を感じる方法なのだとフィールディングは言います。
ナイロン・フェティシズムは純粋に女装のこと、あるいはシス男性の欲望のことだと考える人が多いのですが、ノンバイナリーやトランス、クィアである私たちのなかには、ナイロン・フェチを理解するためのさまざまな入り口をもっている人たちが多数います。
ナイロンフェチは他のフェチと重なる?
ほとんどのフェチはニュアンスが異なり個人特有のものですが、ナイロン愛好家の多くは、コスプレ、ブードワール・スタイル、ピンナップ・スタイル、年齢詐称、教師と生徒の力関係、その他のパワー系フェチと重なっています。
ジョンソンはまた、足フェティシズムが必ずしもナイロン・フェティシズムと一致するとは限らないと言います。ストッキングは足の裏の波紋を滑らかにし、つま先を包む。ある種の足フェチは、足の指の細部や分離が見えるように、足を何も覆わないことを好むことも。
ジョンソン氏がこの2つのフェティッシュの間で最もよく目にする結びつきは、匂いに惹かれること。「私の汗ばんだ足の匂いや、足の裏に近づいた物体の匂いを好むお客さんはたくさんいます」と彼女は言います。補足すると、足の匂いとナイロンの匂いが混ざり合って、さらに艶めかしい匂いとなるときに興奮する場合もあります。
足フェティシズムとナイロン・フェティシズムを結びつける性向は匂いフェティシズムなのです。また、ストッキング越しのつま先やつま先を覆うストッキングに萌える、つまり透け感に興奮する窃視フェティシズムとも関わってきます。
ナイロンを使ったプレイのバリエーション
フィールディングがナイロンの好きなところは、その多様性です。猿ぐつわとして、誰かの口にナイロンを詰め込むと良い、と彼女は提案します。また、ボンデージの一種として、誰かを縛るためにナイロンを使うこともできます。そしてナイロンは、誰かの脚や体を崇拝したり、強制的に女性化したり、相手のためにナイロンを脱がせたり、ガーターから外したりといった奉仕行為など、他のフェティッシュやキンクと組み合わせるのも簡単です。
ナイロン・プレイに興味がある人に、フィールディングは2つのことを勧めています。
- 自分で安価なペアを購入し、さまざまなスタイルを試してみること。
- とくにあなたの興味がより大きなジェンダーの探求や権力への問いかけの一部だとしたら、あなたのストッキングの欲望を安全に育ててくれる人、たとえばジョンソンのような熟練したプロのドミナント(ドミナトリクス)と組むこと。
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