『くノ一忍法』と『くノ一化粧』は、どちらも1964年に東映が製作した日本映画で、山田風太郎の原作を基にしたくノ一シリーズの第1作と第2作。
『くノ一忍法』は中島貞夫の監督デビュー作で、R-18指定の成人映画として知られ、上映時間は87分。豊臣家の血統を守るためのくノ一たちの戦いを描き、性的要素を強調した忍法が特徴です。
一方、『くノ一化粧』は同年公開の続編で、上映時間90分、豊臣家の財宝の鍵を巡る争いを軸に、コメディタッチを加えた演出が施されます。
両作とも、女性忍者の活躍と超自然的な忍法を交え、エロティックな時代劇としてヒットしました。
女優の活躍比較
両作では、くノ一を演じる女優たちの活躍が物語の中心となります。『くノ一忍法』では、芳村真理が演じるお眉がリーダー格として、忍法やどかりの術を使って脱出を試み、伊賀忍者との激しい戦いで命を賭けます。彼女は胎児を守る母性と忍者の冷徹さを表現し、性的忍法を駆使するシーンで妖艶さを発揮します。中原早苗のお由比は、千姫を守る忠誠心を示し、出産シーンでドラマチックな活躍を見せます。三島ゆり子のお瑶は、捨兵衛との対決で忍法を繰り出し、壮絶に倒れます。金子勝美のお喬と葵三津子のお奈美も、それぞれ花開きの術やくノ一化粧の術に対する対抗で、女性の強さを体現します。野川由美子の千姫は、くノ一たちを支える貴族として、物語の情感を深めます。これらの女優は、忍法の戦いを通じて女性の犠牲と勇気を描き、映画のエロティックな魅力を高めます。
『くノ一化粧』では、弓恵子が演じる天姫が首領として、髪縫いの術で敵を盲目にし、伽羅の肉体を借りて鈴を取り戻す活躍が目立ちます。彼女の葛藤が物語の核心です。緑魔子のお志乃は、夢幻琴と密霞の術で兵部を倒すものの、扇千代の山彦で敗れ、自決します。三島ゆり子のお貞は、遊廓襲撃で鞭馬に殺され、鈴を奪われますが、勇敢さを示します。松井康子のお珠は、先祖返りの術で鞭馬を赤ん坊に変え、水阿弥に殺されます。岬瑛子の夕心尼と西岡慶子のもみじは、グループの結束を支えます。春川ますみの伽羅は、情事を通じて人間的な喜びを描きます。これらの女優は、忍法の多様性を活かし、アクションとドラマを融合させます。
比較すると、『くノ一忍法』の女優たちは、豊臣血統の保護という使命感が強く、母性的要素が強調されます。一方、『くノ一化粧』では、財宝の鍵を守る宿命が中心で、個々の忍法がコメディ的に描かれます。三島ゆり子が両作に出演し、お瑶とお貞で異なるくノ一を演じ分け、共通の妖艶さを示します。両作とも、女優の活躍がエロと忍術のバランスを保ち、シリーズの魅力となります。全体として、『くノ一忍法』は過激な性的描写が強く、『くノ一化粧』は情愛の葛藤を加味した点で差別化されます。
女優の衣装・化粧・髪型比較
両作の女優たちは、時代劇らしい忍者装束を基調とします。『くノ一忍法』では、芳村真理らくノ一は黒い忍び装束を着用し、動きやすいデザインで戦闘を強調します。衣装は破れやすく、忍法シーンで身体を露わにし、エロティックさを高めます。化粧は白粉を厚く塗り、目元を強調した妖艶なもの。髪型は日本髪を崩した乱れ髪で、戦いの激しさを表します。特に、筒涸らしの術では髪が絡む描写があり、長髪を活かします。野川由美子の千姫は華やかな着物で、化粧も上品にし、貴族らしさを演出します。
『くノ一化粧』では、弓恵子らも黒装束を着用し、類似しますが、おとこ化粧の術で化粧の変装が鍵となります。衣装は遊女伽羅の絢爛な着物に移行し、赤や金の色調で情事を描きます。化粧は濃く、唇を赤くし、目元を際立たせます。髪型は束ね髪や遊女風の結い上げで、術の発動時に変化します。三島ゆり子の両作共通で、化粧の妖艶さが目立ちます。
比較すると、両作の衣装は忍者らしい実用性を共有しますが、『くノ一忍法』は性的露出が多く、『くノ一化粧』は化粧術の視覚効果を強調します。髪型は戦闘向きで共通、化粧はエロを助長する点で似ています。これらの要素は、くノ一の女性らしさと忍者の神秘性を視覚化し、映画の娯楽性を高めます。
あらすじ比較
『くノ一忍法』のあらすじは、大阪落城前夜、真田幸村が秀頼の子を信濃のくノ一五人(お喬、お眉、お瑶、お由比、お奈美)に身ごもらせ、千姫と共に脱出します。家康は伊賀忍者五人(鼓隼人、七斗捨兵衛、般若寺風伯、雨巻一天斎、薄墨友康)に殺害を命じます。お眉は人柱となり、やどかりの術で脱出しますが、風伯に追われます。お瑶は捨兵衛の鞘おとこの術で倒れ、お喬は一天斎の花開きの術に対抗し、天女貝の術で倒します。お奈美は薄墨のくノ一化粧の術で殺され、お由比は出産後死亡。千姫は赤子を抱き江戸へ向かいます。
『くノ一化粧』のあらすじは、由井正雪の乱後、豊臣家の財宝の鍵となる六つの鈴を大友くノ一六人(天姫、もみじ、お志乃、お珠、夕心尼、お貞)の胎内に隠します。鍔隠れ忍者六人(扇千代、道忍、狂念、兵部、鞭馬、水阿弥)が奪取を狙います。お志乃は兵部を倒しますが、自決。お貞は鞭馬のおとこ化粧で殺され、お珠は先祖返りで鞭馬を倒しますが、水阿弥に殺されます。天姫は伽羅の肉体を借り、扇千代に近づき鈴を奪還しますが、去ります。
比較すると、両作ともくノ一の集団が鍵(血統や鈴)を守る構造が共通です。『くノ一忍法』は歴史的血統保護が重く、『くノ一化粧』は財宝争いが軽快です。忍法の対決が中心で、性的要素を交えつつ、結末はくノ一の犠牲で似ています。
解説
『くノ一忍法』と『くノ一化粧』は、東映のエロ時代劇の先駆けとして位置づけられます。両作とも中島貞夫監督が手掛け、倉本聰の脚本参加で、原作山田風太郎の奇抜な忍法を映像化しました。『くノ一忍法』はデビュー作で、性的描写を強調し、ポルノ路線の元祖となりました。忍法のエロティックさが革新的で、ヒットを生みました。『くノ一化粧』は続編として、コメディを加え、忍法の多様性を広げ、第3作『忍法忠臣蔵』へつなげました。共通点は、くノ一の性的武器を軸にした娯楽性です。違いは、『くノ一忍法』が過激なエロに徹し、『くノ一化粧』が情愛のドラマを深めた点です。1964年の忍者ブームで、女性忍者の新鮮さが人気を博しました。これらの作品は、時代劇のジャンルを拡張し、現代でもクラシックとして楽しめます。
忍法の比較
両作の忍法は、超自然的なものが多く、性的要素を交えます。『くノ一忍法』の主な忍法は、筒涸らし(精を吸い取る)、やどかり(胎児移し替え)、天女貝(身体を挟む)、花開き(男の匂いで狂わせる)、鞘おとこ(剣で倒す)、くノ一化粧(変装)です。これらは、エロと戦闘を融合させ、原作の奇抜さを強調します。
『くノ一化粧』の忍法は、髪縫い(髪で縫う)、夢幻琴(音で倒す)、密霞(霧で隠す)、おとこ化粧(化粧で殺す)、先祖返り(赤ん坊化)、山彦(反響)です。コメディタッチで、視覚的な面白さを加えます。
比較すると、共通はくノ一の身体を使った術(化粧や性的技)です。違いは、『くノ一忍法』が妊娠関連の術が多く重厚、『くノ一化粧』が変装や音の術で軽妙です。両作とも、忍法が物語の醍醐味です。
キャスト
くノ一忍法
- お眉:芳村真理
- お由比:中原早苗
- お瑶:三島ゆり子
- お喬:金子勝美
- お奈美:葵三津子
- 千姫:野川由美子
- 鼓隼人:大木実
- 七斗捨兵衛:待田京介
- 般若寺風伯:吉田義夫
- 雨巻一天斎:山城新伍
- 薄墨友康:小沢昭一
- 阿福:木暮実千代
- 服部半蔵:品川隆二
- 真田幸村:北村英三
- 坂崎出羽守:露口茂
くノ一化粧
- 天草扇千代:露口茂
- 鴬道忍:西村晃
- 真昼狂念:小沢昭一
- 篝火兵部:脇中昭夫
- 十六夜鞭馬:芦屋雁之助
- 百済水阿弥:加藤武
- 伽羅:春川ますみ
- 天姫:弓恵子
- もみじ:西岡慶子
- お志乃:緑魔子
- お珠:松井康子
- 夕心尼:岬瑛子
- お貞:三島ゆり子
- 松平伊豆守:原田甲子郎
- 服部半助:多々良純
- 由井正雪:原健策
スタッフ
くノ一忍法
- 監督:中島貞夫
- 脚本:倉本聰、中島貞夫
- 原作:山田風太郎
- 企画:小倉浩一郎
- 撮影:赤塚滋
- 美術:桂長四郎
- 音楽:鏑木創
- 録音:加藤正行
- 照明:中村清
- 編集:河合勝巳
くノ一化粧
- 監督:中島貞夫
- 脚本:倉本聰、中島貞夫、金子武郎
- 原作:山田風太郎
- 企画:小倉浩一郎、折茂武雅
- 撮影:赤塚滋
- 美術:吉村晟
- 音楽:山本直純
- 録音:藤本尚武
- 照明:和多田弘
- 編集:神田忠男



レビュー 作品の感想や女優への思い