東映㊙シリーズ

東映㊙シリーズは、1960年代後半に東映が製作したエロティックな映画群の総称で、主に「マル秘シリーズ」と呼ばれます。

このシリーズは、岡田茂プロデューサーの企画により、女性の秘密めいた世界を覗き見るコンセプトで始まり、東映ポルノ路線の先駆けとなりました。1967年から1968年頃にかけて主に製作され、時代劇や実録風の要素を交えつつ、エロティシズムを強調した内容が特徴です。

シリーズは大ヒットを飛ばした初作から続編が作られましたが、成人指定による観客離れや興行的不振により、短期間で終了し、以降の東映ポルノのエログロ路線（石井輝男監督作品など）へ移行しました。当時の日本映画界では、ピンク映画のブームを背景に、メジャー会社としてエロ路線を積極的に推進した象徴的なシリーズです。

日本のピンク映画：その歴史、特徴、代表作

日本のピンク映画は1960年代から始まり、独自の文化的・商業的地位を築いたエロティック映画のジャンル。低予算で製作され、芸術性や社会批評を織り交ぜた作品も多く、日本映画史で重要な位置を占めます。以下にその歴史、特徴、代表作を簡潔にまとめます。

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歴史的背景

東映は1960年代、任侠映画の成功に続き、新たな娯楽路線を探っていました。

岡田茂は「女の世界」をテーマに、1967年の『大奥㊙物語』を企画し、大ヒットさせたことで㊙シリーズを展開。シリーズは女性の内面的な欲望や秘密を描き、ヌードや性描写を織り交ぜましたが、過激さを抑えた文芸的アプローチが取られました。

しかし、成人指定（R-18）が原因で興行収入が振るわず、続編の不入りによりシリーズは縮小。1968年の『徳川女系図』以降、東映ポルノは石井輝男のエログロ路線へシフトし、㊙シリーズは東映ポルノの初期段階として位置づけられます。

この路線は1970年代初頭まで続き、日活ロマンポルノの誕生にも影響を与えました。

日活ロマンポルノ

日活ロマンポルノは、1971年から1988年まで日本最大手の映画会社・日活が製作・配給した成人向けエロティック映画のブランド。低予算ながら芸術性や商業性を追求した作品群は国内外で評価されています。以下にその歴史、特徴、代表作を簡潔にまとめます。

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シリーズの特徴

テーマ

江戸時代の大奥や尼寺などの閉鎖的な女性社会を舞台に、禁欲と欲望の葛藤を描く。覗き見的なエロティシズムが売りで、タイトルに「㊙」（マル秘）を冠するのが共通点。

製作スタイル

東映京都撮影所を中心に製作。脚本は国弘威雄、中島丈博ら。監督は主に中島貞夫が担い、藤純子や佐久間良子などの人気女優を起用。

影響と評価

シリーズは東映のエロ映画ブームの火付け役となりましたが、興行的には苦戦。現代では日本映画史のエロ路線転換期の象徴として評価され、フェミニズム的な視点からも再考されています。

作品一覧

㊙シリーズの主な作品は以下の3作で、シリーズ化が試みられたものの短命に終わりました。公開年、監督、主演を記載します（不明部分は資料不足による）。

大奥㊙物語（1967年公開、上映時間: 95分、監督: 中島貞夫、主演: 佐久間良子、藤純子、岸田今日子）

徳川六代将軍家宣の時代を背景に、大奥の厳しい掟と女中たちの運命を描くオムニバス形式。東映初の成人指定映画で、シリーズの基盤となった大ヒット作。PrimeVideo・Amazon

続大奥㊙物語（1967年公開、上映時間: 不明、監督: 中島貞夫、主演: 小川知子）

前作の続編。将軍の死後、比丘尼屋敷へ追われる美女たちの禁欲生活を描く。貧しい娘が大奥に巻き込まれる物語で、エロ要素を強調したが興行的に不振。Amazon

尼寺㊙物語（1968年公開、上映時間: 89分、監督: 中島貞夫、主演: 藤純子、三田佳子、大原麗子）

『尼寺㊙物語』は京都の尼寺を舞台に、尼僧たちの抑えきれない欲望と葛藤を描く。エロ要素を抑え文芸的に仕上げたが、不入りでシリーズ終了のきっかけに。Amazon

関連作品と派生路線

㊙シリーズは東映ポルノの起点となり、以下のような派生作品が生まれました。これらは厳密なシリーズ外ですが、㊙のコンセプトを引き継いでいます。

• 徳川女系図（1968年、監督: 石井輝男）：エログロ路線の始まり、大ヒット。PrimeVideo・Amazon
• 徳川女刑罰史（1968年、監督: 石井輝男、主演: 橘ますみ）：SM描写が特徴。PrimeVideo・Amazon
• 温泉あんま芸者（1968年、監督: 石井輝男）：温泉芸者シリーズの1作。PrimeVideo・Amazon
• 異常性愛記録 ハレンチ（1969年、監督: 石井輝男）：性愛路線。PrimeVideo・Amazon
• 明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史（1969年、監督: 石井輝男）：実話路線。PrimeVideo・Amazon
• 温泉みみず芸者（1971年、監督: 鈴木則文、主演: 池玲子）：ポルノ語源の作品。PrimeVideo・Amazon
• 女囚さそりシリーズ（1972-1976年、監督: 伊藤俊也ほか、主演: 梶芽衣子ほか）：全6作、ポルノ要素を含む復讐劇。PrimeVideo・Amazon
• 聖獣学園（1974年）：不入り作。PrimeVideo・Amazon
• 赤線㊙地帯（1975年、監督: 向井寛、主演: 宮下順子）：撤退期の作品。

これらの作品群は、東映ポルノ全体の多様性を示しており、㊙シリーズは初期の穏健派路線として位置づけられます。シリーズのDVD化（例: 「東映 ザ・定番」シリーズ）により、現在も視聴可能です。