『Rise: My Story』は、史上最も活躍した女性アルペンスキー選手リンゼイ・ボン(アメリカ合衆国)の初めての自伝。彼女はワールドカップ82勝、総合優勝4回、オリンピック金メダル1個を含む3個のメダル、ワールド選手権メダル7個を獲得しました。
本書では、過酷なトレーニングと怪我の連続、うつ病との長年の闘い、女性アスリートとしての障壁打破、家族の支え、そしてレジリエンスを軸にした人生を赤裸々に語ります。リスクを取る姿勢と精神的な強さを強調し、読者に勇気を与える内容です。
出版状況
本書は2022年1月11日にDey Street Books(HarperCollins傘下)からハードカバーで出版されました。ページ数は336ページです。ISBNは978-0062889447です。2023年1月3日にはペーパーバック版(352ページ、ISBN978-0062889454)が発売され、より多くの読者にアクセスしやすくなりました。現在も英語版として広く入手可能です。日本語版は未刊行で、英語原書が主に流通しています。オーディオブック版も存在し、ナレーターはAndi Arndtです。
女性の活躍
リンゼイ・ボンは女性スキー界で数々の記録を打ち立て、女性アスリートの象徴となりました。ワールドカップ通算勝利数は82回(あるいは84回とする資料もあり)、これは女性歴代上位です。総合優勝は4回(2008年、2009年、2010年、2012年)で、女性として3番目に多い記録です。ダウンヒルでは史上最多の8回のシーズンタイトルを獲得し、スーパーGで5回、コンバインドで3回のタイトルも手にしました。オリンピックでは2010年バンクーバーでダウンヒル金メダル、2010年スーパーG銅メダル、2018年ピョンチャンでダウンヒル銅メダルを獲得し、アメリカ人女性初のダウンヒル金メダリストとなりました。
ワールド選手権では金メダル2個(2009年ダウンヒル、スーパーG)、銀3個、銅3個の計8個を獲得しました。5つの種目(ダウンヒル、スーパーG、ジャイアントスラローム、スラローム、コンバインド)すべてでワールドカップ勝利を挙げた6人の女性の一人です。20個のワールドカップ小タイトル(クリスタルグローブ)は長らく女性最多記録でした。彼女の活躍は、女性スポーツの露出を高め、男女の待遇格差に声を上げ、若い女性アスリートに道を開きました。引退後もビジネスや慈善活動で女性エンパワーメントを推進しています。
あらすじ
本書はリンゼイ・ボンの幼少期から引退までを時系列で描きます。ミネソタ州の小さな町Buck Hillで生まれ、父の影響で3歳からスキーを始めました。家族の支え、特に厳しいトレーニングを課した父との関係が基盤となります。小さな丘からコロラドの山々へ移り、プロを目指す過程で孤独や犠牲を経験します。
国際舞台での台頭は2000年代前半からです。攻撃的な滑りスタイルで知られ、ワールドカップデビュー後すぐに勝利を重ねます。2008年から2012年にかけて総合優勝4回を達成し、ダウンヒルでの圧倒的な強さを示しました。2010年バンクーバーオリンピックでの金メダルはアメリカ人女性初の快挙です。しかし、キャリアを通じて膝や背中などの重傷を繰り返します。複数回の靭帯断裂、骨折、手術、リハビリが続き、痛みと闘いながらレースに復帰する様子が詳細に語られます。
精神面では、10代から続くうつ病と自己肯定感の低さを告白します。レース前の不安、引退への恐怖、公の目のプレッシャーが彼女を苦しめました。両親の離婚や自身の離婚、恋愛関係の公表も触れられますが、センセーショナルな暴露は避け、成長の糧として描きます。女性アスリート特有の二重基準(男性の派手な行動は許容されやすい点)や、スポンサーとの関係、メディア対応の苦労も率直に記します。
クライマックスは2018年ピョンチャンでの銅メダルと2019年の引退宣言です。怪我の蓄積で限界を感じつつ、最後まで全力を尽くします。引退後の展望として、新たな挑戦への意欲を述べ、読者に「立ち上がる」重要性を伝えています。全編を通じて、勝利の裏側の代償、家族・友人との絆、毎日の地道な努力が強調されます。
解説
『Rise: My Story』は単なるスポーツ自伝を超えた、率直で勇気ある告白です。リンゼイ・ボンはメダルや勝利を誇示するだけでなく、身体的・精神的な代償を隠さず語ることで、読者に現実的なインスピレーションを与えます。特にうつ病の告白は、トップアスリートでもメンタルヘルスが課題であることを示し、社会的なスティグマを減らす効果があります。彼女の「リスクを取る姿勢」と「自己を超える」哲学は、スポーツだけでなくビジネスや日常生活に通じます。
Kirkus Reviewsは「grittily candid」と評価し、Popsugarは「人間的な側面」を称賛します。セレブリティ(Wayne Gretzky、Billie Jean King、Tom Bradyなど)の推薦文も、彼女の影響力を裏付けます。本書の強みは、女性視点からのスポーツ界描写です。トレーニングの過酷さ、怪我後の復帰プロセス、ジェンダー不平等への言及が詳細で、教育的な価値が高いです。一方で、個人的なエピソードがやや控えめな点は、プライバシーを尊重した結果と言えます。全体として、挫折からの回復力を学ぶのに最適な一冊です。
関連情報
リンゼイ・ボンは2019年に引退を発表しましたが、2024年に膝の置換手術後の回復を機に競技復帰を表明しました。本書出版後の動向です。2019年のHBOドキュメンタリー「Lindsey Vonn: The Final Season」(日本では原題のまま知られる)は、引退シーズンを追った作品で、彼女のキャリアの集大成を視覚的に補完します。出演映画やドラマは主にドキュメンタリー関連です。
彼女はThe Lindsey Vonn Foundationを設立し、女性アスリート支援やメンタルヘルス啓発に取り組んでいます。ビジネス面ではスポンサー契約を巧みに活用し、ブランド構築のモデルとなっています。関連書籍として、他のアスリートの自伝(例:類似のメンタルヘルス告白本)と比較されます。スキー界ではミカエラ・シフリンの台頭がボンの記録更新に関連します。本書は英語版が主流ですが、グローバルな読者にリーチし、女性スポーツの文献として位置づけられます。



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