『ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語』は、2017年にStarzで放送された米国の歴史ドラマ。フィリッパ・グレゴリーの小説を原作に、薔薇戦争終結後のエリザベス・オブ・ヨークとヘンリー7世の結婚を描く。全8話のミニシリーズで、権力と愛、裏切りが交錯する。
基本情報
- 邦題:ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語
- 原題:The White Princess
- 公開年:2017年
- 製作国:英国、米国
- 再生時間:57分
- ジャンル:ドラマ、歴史、恋愛
女優の活躍
本作の主人公エリザベス・オブ・ヨーク(リジー)を演じるジョディ・カマーは、その卓越した演技力で注目を集めました。カマーは、複雑な感情を抱く王女の役を繊細かつ力強く表現し、視聴者に強い印象を与えました。彼女は、愛するリチャード3世を失い、敵対するヘンリー7世との政略結婚を強いられるリジーの葛藤を、表情や仕草で丁寧に演じています。特に、ヨーク派の復権を願いつつも、夫ヘンリーとの間に愛情が芽生える過程は、カマーの演技の幅広さを示しています。後に『キリング・イヴ』でエミー賞を受賞する彼女の初期の才能が本作で光っており、批評家からも「圧倒的な存在感」と評されました。
脇を固める女優陣も見事です。ミシェル・フェアリーはヘンリー7世の母マーガレット・ボーフォートを演じ、権力に執着する冷徹な王母を迫真の演技で体現。エリザベス・ウッドヴィル役のエッシー・デイヴィスも、娘リジーの運命を操ろうとする元王妃の威厳と策略を巧みに表現しました。これらの女優たちは、男性中心の歴史ドラマにおいて、女性の視点から権力闘争を描く本作のテーマを強化しています。

女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装は、中世イングランドの豪華さを再現し、視覚的な魅力の大きな要素となっています。ジョディ・カマー演じるエリザベスの衣装は、ヨーク家の高貴さを象徴する白や淡い色調のドレスが多く、ベルベットやシルク、刺繍が施された重厚なデザインが特徴です。特に、胸元が強調されたドレスは当時の肖像画を参考にしており、カマーの優雅な体型を引き立てています。視聴者からは「衣装がゴージャスで、まるで絵画から抜け出したよう」との声が上がっています。
化粧は自然体で、15世紀末の貴族女性らしい控えめな美しさを追求。薄いファンデーションに、ほのかなチークとリップが施され、エリザベスの気品を際立たせています。髪型は、長い髪を複雑に編み込んだスタイルや、ヴェールや宝飾品で飾られたものが多く、シーンに応じて変化。結婚式や宮廷の場面では特に華やかで、彼女の王妃としての威厳を強調しています。これらの要素は、時代背景を忠実に再現しつつ、現代の視聴者にも魅力的に映るよう工夫されています。
あらすじ
1485年、ボズワースの戦いでヨーク家のリチャード3世が敗死し、ランカスター派のヘンリー・チューダーがヘンリー7世としてイングランド王に即位。薔薇戦争の終結のため、ヘンリーはヨーク家のエリザベス・オブ・ヨークと政略結婚を強いられます。エリザベスは、愛していたリチャード3世の死とヨーク朝の失墜に心を痛め、ヘンリーを敵視しますが、結婚を通じて次第に彼の誠実さに惹かれていきます。しかし、両家の不信感は根深く、エリザベスの母エリザベス・ウッドヴィルやヘンリーの母マーガレット・ボーフォートが裏で政治的策略を巡らせ、イングランドは再び分裂の危機に瀕します。
さらに、エリザベスの弟リチャード王子が生きているという噂が広まり、ヨーク派の反乱が再燃。エリザベスは、夫ヘンリーと血を分けた弟の間で板挟みとなり、家族と王国の未来を賭けた決断を迫られます。彼女は4男4女を産み、母として成長しながら、ヨークとチューダーの融和を目指しますが、裏切りと陰謀が続く中、愛と忠誠の間で葛藤し続けます。
エピソード
- ベッドの中の敵…勝利したチューダー家のヘンリーはイングランド王になった。ヨーク家のエリザベスと彼女の家族たちは危うい立場になり、リジーは和平のためにヘンリー7世との結婚を余儀なくされる。
- 感情と理性…ヘンリー7世は新王としての地位を確立するために巡幸に出るが、危険な反乱分子を目にする。エリザベスは妊娠したことにより、ヨーク家への忠誠心が揺らぎ始める。
- ブルゴーニュの思惑…エリザベスがお産の苦しみに耐えている間に、ヘンリー王は、ヨーク家が頼るブルゴーニュへ使者を送る。ブルゴーニュとの交渉は不調に終わり、エリザベスと彼女の夫はお互いの共通点を見つける。
- 黒き陰謀と反乱…ヨーク家の王女たちを結婚させることでチューダー家は勢力を拡大していくが、問題が浮上してくる。ヘンリー王が戦っている間に、エリザベスは脅威は身近にあることに気づく
- 2人のヨーク公…エリザベスは、ヨーク家の再興を計る彼女の母親のたくらみを阻止しなければならない。ブルゴーニュで王子と名乗る者が出現し、ヘンリー王の統治は脅威にさらされる。そしてヘンリー王の母親は暗い秘密を抱えている。
- イングランドの血と土…ヘンリー王とエリザベスは息子の婚姻で同盟を結ぼうとスペインへ赴くが、イングランドが不安定な状況にあるということが既にスペインの耳に入っていた。ブルゴーニュの動乱がイングランドに戦争を巻き起こす。
- 王子の名を語る男…王位を主張する者は裁定の結果、囚われの身となり、エリザベスとヘンリーの間に新たな亀裂が生まれる。エリザベスは家族に対する脅威を排除するために危険な行動をとらざるを得なくなる。
- 塔の王子たち…自らを王だと主張する者との最終的な対立でヘンリー王は弱さを露呈する。一方、エリザベスは新たな魔の手と古い呪いと直面する。
解説
『ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語』は、フィリッパ・グレゴリーの小説を基に、薔薇戦争後のイングランドを女性の視点から描いた歴史ドラマです。前作『ホワイト・クイーン 白薔薇の女王』の続編であり、ヨークとランカスターの対立が終結した後も続く政治的・個人的な軋轢を掘り下げています。本作は、史実を基にしつつもドラマチックな脚色を加えており、特にエリザベスの弟リチャードの生存やスペイン訪問など、史実から逸脱した要素が含まれています。これにより、歴史ファンからは「誇張が目立つ」との批判もありますが、物語の緊張感や感情的な深みを増す効果も生んでいます。
本作の特徴は、女性キャラクターの複雑な心理描写にあります。エリザベスは、政略結婚から始まる関係の中で愛を見出し、母として家族を守る強さを獲得します。一方、マーガレット・ボーフォートは権力への執着から冷酷な行動を取るが、息子ヘンリーへの愛も垣間見え、単純な悪役に留まりません。これらの女性たちは、男性が支配する世界で影響力を発揮し、歴史の裏側で繰り広げられる権力闘争を象徴しています。
視覚的には、豪華な衣装やイングランドの古城を背景にした映像美が際立ち、時代再現の細やかさが評価されています。音楽も、緊張感ある場面やロマンティックな瞬間を効果的に盛り上げ、物語に深みを加えています。全体として、歴史の激動期を女性の視点で描く本作は、権力、愛、裏切りをテーマにした魅力的なドラマです。
キャスト
- エリザベス・オブ・ヨーク:ジョディ・カマー(吹替:稲瀬葵) – ヨーク家の王女でヘンリー7世の妻。
- ヘンリー7世:ジェイコブ・コリンズ=レヴィ – チューダー朝の初代国王。
- マーガレット・ボーフォート:ミシェル・フェアリー – ヘンリー7世の母で権力に執着。
- エリザベス・ウッドヴィル:エッシー・デイヴィス – エリザベスの母で元王妃。
- ヨーク公リチャード:パトリック・ギブソン – エリザベスの弟と名乗る青年。
- マーガレット・オブ・ヨーク:レベッカ・ベンソン – ヨーク家の支持者。
その他、キャロライン・グッドール、ヴィンセント・リーガン、ジョアンヌ・ウォーリーらが出演。キャストは前作から一新され、セシリー公爵夫人役のみ続投。
スタッフ
- 原作:フィリッパ・グレゴリー(小説『The White Princess』)
- 監督:ジェイミー・ペイン、アレックス・カリムニオス
- 脚本:エマ・フロスト、サラ・ドールほか
- 製作:Starz、Company Television
- 製作総指揮:エマ・フロスト、フィリッパ・グレゴリーほか
- 音楽:ジョン・ローダース
- 撮影:クリス・シーリー
本作は、Starzの高い製作力とグレゴリーの原作の忠実な翻案により、歴史ドラマとしての完成度を高めました。
まとめ
本作は、歴史とドラマの融合を楽しみながら、女性の視点で描かれる権力闘争に引き込まれる作品です。ジョディ・カマーの演技と豪華なビジュアルは必見です。
レビュー 作品の感想や女優への思い