ヴェラ・ファーミガ

ヴェラ・ファーミガ（Vera Farmiga）は米国の女優、プロデューサー、監督。1973年8月6日生まれ、ニュージャージー州出身。『ディパーテッド』（2006年）や『マイレージ、マイライフ』（2009年）で知られ、アカデミー賞助演女優賞にノミネート。『トレイン・ミッション』ではミステリアスなジョアンナ役を演じ、幅広い役柄で高い評価を受けました。

以下では彼女の生い立ち・教育、経歴、私生活、出演作品を説明していきます。

生い立ち・教育

ヴェラ・ファーミガは1973年8月6日、米国ニュージャージー州クリフトンに生まれました。ウクライナ系アメリカ人の家庭に育ち、両親のマイケルとルビーナ・ファーミガはウクライナからの移民です。7人きょうだいの2番目として、ウクライナの伝統と文化に深く根ざした環境で育ちました。幼少期はウクライナ語を母語とし、英語は学校に入ってから本格的に学びました。彼女はウクライナのフォークダンスグループで活動し、6歳から16歳までダンサーとして全米を巡るなど、幼い頃から芸術に親しみました。

教育面では、ニュージャージー州のハンター・カレッジ高校を卒業後、シラキュース大学でビジュアル・パフォーミングアーツを専攻。1995年に学士号を取得しました。大学在学中から演劇に興味を持ち、舞台での経験を積み始めました。この時期、彼女は演技への情熱を深め、ブロードウェイやオフ・ブロードウェイの舞台に出演する機会を得ました。ウクライナ系としてのアイデンティティと、芸術への強い関心が、彼女のキャリアの基盤を形成しました。

経歴

ヴェラ・ファーミガのキャリアは、1990年代中盤の舞台から始まりました。1996年にブロードウェイの『Taking Sides』でデビューし、その後も舞台女優として活躍。1997年にはTV映画『Rose Hill』でスクリーンデビューを果たし、2000年の映画『オータム・イン・ニューヨーク』でリチャード・ギアやウィノナ・ライダーと共演し、注目を集めました。

ブレイクのきっかけは2006年の『ディパーテッド』（マーティン・スコセッシ監督）で、精神科医マデリン役を演じたことでした。レオナルド・ディカプリオやマット・デイモンと共演し、複雑な感情を持つキャラクターを繊細に演じ、高い評価を受けました。この作品で彼女は一躍ハリウッドの注目女優となり、その後のキャリアを加速させました。

2009年の『マイレージ、マイライフ』（ジェイソン・ライトマン監督）では、ジョージ・クルーニー演じる主人公の恋人アレックス役を演じ、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。この役での自然体で知的な演技は、彼女の多才さを証明し、批評家から絶賛されました。以降、彼女はジャンルを問わず幅広い役柄に挑戦し、アクション、サスペンス、ホラー、ドラマで活躍しています。

ホラー映画では、『死霊館』シリーズ（2013年～）で超常現象研究者のロレイン・ウォーレン役を演じ、シリーズの顔として世界的な人気を博しました。彼女はこのシリーズでプロデューサーも務め、自身の演技力だけでなく製作面でも才能を発揮。『死霊館 エンフィールド事件』（2016年）では監督デビューも果たし、批評家から好評価を得ました。

『トレイン・ミッション』（2018年）では、リーアム・ニーソン演じるマイケルにミッションを課す謎の女性ジョアンナを演じました。短い出番ながら、冷徹でミステリアスな雰囲気を漂わせ、物語の緊張感を高める重要な役割を果たしました。ジャウム・コレット＝セラ監督とは『オーファン』（2009年）でも共働しており、彼女のサスペンス作品での存在感は際立っています。

近年では、Apple TV+の『Five Days at Memorial』（2022年）や、Netflixの『The Many Saints of Newark』（2021年）に出演し、テレビと映画の両方で活躍を続けています。彼女の演技は、感情の深さとリアルな表現力で知られ、どんな役柄にも説得力を持たせることで定評があります。

私生活

ヴェラ・ファーミガは私生活でも注目される人物です。1997年にフランス人俳優セバスチャン・ロシェと結婚しましたが、2004年に離婚。2008年にミュージシャンで大工のレニン・ホークリーと再婚し、現在も夫婦関係を続けています。2人の間には息子フィン（2009年生まれ）と娘ガイダ（2010年生まれ）がおり、家族と共にニューヨーク州ハドソンバレーに住んでいます。彼女は家族を大切にし、仕事とプライベートのバランスを取る姿勢を公言しています。

ウクライナ系としてのルーツを強く意識しており、ウクライナの文化や言語を子供たちにも伝えています。2022年のロシアによるウクライナ侵攻時には、ウクライナ支援を呼びかけるなど、社会的な発言も行っています。また、農場での生活を楽しみ、ガーデニングや動物の世話を通じてリフレッシュしている様子をインタビューで語っています（例：Vogue、2020年）。

ファーミガは妹のタイッサ・ファーミガ（『アメリカン・ホラー・ストーリー』で知られる女優）とも親密で、姉妹で互いのキャリアを応援しています。タイッサも『死霊館』シリーズに出演しており、姉妹での共演が話題となりました。

出演作品

以下は、ヴェラ・ファーミガの代表的な出演作品の一部です。彼女は映画、テレビ、舞台で幅広く活躍しています。

映画

• オータム・イン・ニューヨーク（2000年）：リチャード・ギアと共演し、脇役ながら注目を集める。
• ディパーテッド（2006年）：精神科医マデリン役でブレイク。スコセッシ監督作で高い評価。
• オーファン（2009年）：養子に迎えた少女の恐怖を描くホラー。主演として強烈な印象を残す。
• マイレージ、マイライフ（2009年）：アレックス役でアカデミー賞助演女優賞ノミネート。ジョージ・クルーニーと息の合った演技。
• 死霊館（2013年）：ロレイン・ウォーレン役。ホラー映画のアイコンとしてシリーズを牽引。
• 死霊館 エンフィールド事件（2016年）：主演兼監督。ホラー映画での監督デビュー作。
• トレイン・ミッション（2018年）：ジョアンナ役。ミステリアスな女性として物語を牽引。
• ゴジラ キング・オブ・モンスターズ（2019年）：モナークの科学者エマ・ラッセル役。
• The Many Saints of Newark（2021年）：『ソプラノズ』の前日譚でリヴィア・ソプラノ役。

TV

• Roar（1997年）：テレビシリーズで初期のキャリアを積む。
• Bates Motel（2013-2017年）：ノーマ・ベイツ役。『サイコ』の前日譚でエミー賞ノミネート。
• Five Days at Memorial（2022年）：Apple TV+の医療ドラマで主演。

舞台

• Taking Sides（1996年）：ブロードウェイデビュー。

オフ・ブロードウェイでの公演も多数経験。

解説と評価

ヴェラ・ファーミガは、感情豊かな演技と幅広い役柄への適応力で、現代のハリウッドを代表する女優の一人です。『ディパーテッド』や『マイレージ、マイライフ』での繊細な演技から、『死霊館』シリーズでの力強い存在感まで、彼女はどんなジャンルでも観客を引き込む力を持っています。特にホラー映画では、恐怖と人間性を両立させる演技が高く評価され、『死霊館』シリーズは彼女の代表作として世界的に知られています。

『トレイン・ミッション』でのジョアンナ役は、短い出番ながらも彼女のミステリアスな魅力が存分に発揮された役柄です。冷徹で計算高い女性を演じ、リーアム・ニーソンとの対峙シーンで物語の緊張感を高めました。監督のジャウム・コレット＝セラは、彼女の「一瞬で観客を惹きつける力」を高く評価し、キャスティングの理由としたと語っています（IMDbインタビュー）。

批評家は、彼女の演技について「知性と感情のバランスが絶妙」「どんな役でも本物に感じさせる」と称賛。Rotten TomatoesやMetacriticのレビューでも、彼女の出演作品は一貫して高い評価を受けています。ウクライナ系としてのアイデンティティを活かし、国際的なプロジェクトにも積極的に参加する姿勢は、彼女のキャリアに独自の魅力を加えています。

まとめ

ヴェラ・ファーミガは、ウクライナ系アメリカ人としての背景を持ち、舞台から映画、テレビまで幅広く活躍する実力派女優です。『ディパーテッド』や『マイレージ、マイライフ』で名を馳せ、『死霊館』シリーズでホラー映画のアイコンとなり、『トレイン・ミッション』ではミステリアスな役柄で存在感を示しました。家族を大切にする私生活や、ウクライナ文化への強い結びつきも彼女の魅力の一部です。今後も、女優、プロデューサー、監督として多才なキャリアを築き続けることでしょう。