『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』は2011年の英国映画。マドンナ監督による、エドワード8世とウォリス・シンプソンの歴史的ロマンスと、現代の女性ウォリーの物語を交錯させ、愛と犠牲を描く。豪華な衣装と映像美が特徴。アビー・コーニッシュとアンドレア・ライズボローが主演、ナタリー・ドーマーとケイティ・マクグラスが脇を固める。
基本情報
- 邦題:ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋
- 原題:W.E.
- 公開年:2011年
- 製作国:英国
- 上映時間:119分
見どころ
英国王室を揺るがしたエドワード8世と離婚歴を持つ人妻ウォリスのロマンスを、悩める現代の女性の視点を交えて映画化。世界的ミュージシャン、マドンナの監督第2作。
あらすじ
本作は、1930年代の英国王エドワード8世とアメリカ人女性ウォリス・シンプソンの「王冠をかけた恋」と、1998年のニューヨークに生きる女性ウォリー・ウィンスロップの物語を並行して描きます。
1936年、エドワード8世(ジェームズ・ダーシー)は、離婚歴のあるウォリス(アンドレア・ライズボロー)と恋に落ち、彼女との結婚を望みますが、王室や政府の反対に直面し、ついに王位を退位します。
一方、現代のウォリー(アビー・コーニッシュ)は、子供を望むが夫ウィリアム(リチャード・コイル)との関係に悩み、ウィンザー公爵夫妻の遺品オークションを通じてウォリスの人生に共感を覚えます。ウォリーは警備員エフゲニ(オスカー・アイザック)と出会い、彼との交流を通じて新たな希望を見出します。
ウォリスとエドワードの情熱的な愛と犠牲、ウォリーの自己発見の旅が交差しながら、愛の本質が浮かび上がります。
解説
『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』(原題:W.E.)は、世界的アーティストのマドンナが監督・脚本を務めた2011年のイギリス映画で、彼女の監督2作目にあたります。この作品は、20世紀初頭の英国王室を震撼させたエドワード8世とウォリス・シンプソンのスキャンダラスな恋愛を、女性の視点から描いた点でユニークです。歴史的事件を単なるロマンスとしてではなく、ウォリスの内面的な葛藤や社会的な圧力に焦点を当て、現代の女性ウォリーの物語と交錯させることで、時代を超えた愛と自由のテーマを探求しています。映画は、華やかな衣装、精緻な美術、情感豊かな音楽を通じて視覚的・聴覚的な美しさを追求し、特に衣装デザインは第84回アカデミー賞にノミネートされました。また、マドンナ自身が手掛けた主題歌「マスターピース」は第69回ゴールデングローブ賞で最優秀主題歌賞を受賞しました。しかし、批評家の評価は分かれ、ストーリーの複雑さや二つの時代を行き来する構成が一部で批判される一方、映像美や女優陣の演技は高く評価されました。本作は、歴史的ロマンスと現代の人間ドラマを融合させた意欲作として、マドンナの芸術的挑戦を象徴しています。
女優の活躍
本作では、アビー・コーニッシュとアンドレア・ライズボローが主演女優として際立った活躍を見せています。
アビー・コーニッシュ演じるウォリー・ウィンスロップは、現代のニューヨークに生きる女性として、結婚生活の不和や自己実現の葛藤を繊細に表現しました。コーニッシュは、ウォリーの感情の起伏を抑制しつつも深みのある演技で、観客に共感を呼び起こします。特に、ウォリスの遺品に触れるシーンでは、過去と現在のつながりを静かな情熱で体現し、物語の中心的な役割を果たしました。
一方、アンドレア・ライズボロー演じるウォリス・シンプソンは、歴史上の人物としての複雑な魅力を鮮やかに描き出しました。ライズボローは、ウォリスの知性、自信、そして社会的な非難に耐える強さを絶妙にバランスさせ、単なる「悪女」ではない人間的な一面を浮き彫りにします。彼女の演技は、ウォリスの華やかさと同時に、孤独や犠牲を伴う恋愛の重さを表現し、批評家からも高い評価を受けました。
また、脇役としてナタリー・ドーマー(エリザベス妃)やケイティ・マクグラス(テルマ・ファーネス子爵夫人)も印象的な演技を見せ、物語に深みを加えています。
女優陣のアンサンブルは、異なる時代背景の中で女性の内面を丁寧に描き出し、本作の感情的な核を形成しました。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装デザインは、アリアンヌ・フィリップスによるもので、第84回アカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされるほどの完成度を誇ります。
1930年代のウォリス・シンプソンを演じるアンドレア・ライズボローの衣装は、当時のファッションを忠実に再現しつつ、彼女の個性と魅力を強調するものでした。ウォリスの衣装は、エレガントなシルクのドレス、フィット感のあるテーラードスーツ、豪華な毛皮のコートなど、1930年代の上流階級の洗練されたスタイルを反映しています。特に、社交界でのシーンでは、宝石をちりばめたガウンや帽子が彼女の存在感を際立たせ、視覚的に観客を引き込みます。化粧は、鮮やかな赤い口紅と繊細なアイラインで、ウォリスの大胆さと女性らしさを表現。髪型は、滑らかなウェーブのかかったショートヘアやエレガントなアップスタイルで、時代感と気品を両立させました。
一方、アビー・コーニッシュ演じる現代のウォリーの衣装は、1990年代後半のニューヨークのセレブリティを意識したモダンなデザインが特徴です。シンプルながら洗練されたワンピースやコート、モノトーンのカラーパレットが、彼女の内面的な不安定さを反映しつつ、都会的な雰囲気を醸し出します。ウォリーの化粧はナチュラルで控えめ、髪型はルーズなウェーブやポニーテールで、現代女性の日常的な美しさを表現しました。両者の衣装とメイクは、時代背景の違いを明確にしつつ、共通するテーマである「女性としての自己表現」を視覚的に結びつけています。ヘア・メイクアップデザインのジェニー・シャーコアも、細部までこだわった仕事で、キャラクターの個性を引き立てました。
キャスト
- ウォリー・ウィンスロップ:アビー・コーニッシュ – 1998年のニューヨークに住む女性。元学芸員で、ウォリスに憧れる。
- ウォリス・シンプソン:アンドレア・ライズボロー – エドワード8世の恋人で、離婚歴のあるアメリカ人女性。
- エドワード8世(デイヴィッド):ジェームズ・ダーシー – 英国王で、ウォリスとの愛のために退位。
- エフゲニ・コルパコフ:オスカー・アイザック – 亡命ロシア人の警備員。ウォリーに惹かれる。
- ウィリアム・ウィンスロップ:リチャード・コイル – ウォリーの夫。一流分析医。
- アーネスト・シンプソン:デヴィッド・ハーバー – ウォリスの2番目の夫。実業家。
- ジョージ5世:ジェームズ・フォックス – エドワードの父。英国王。
- メアリー王妃:ジュディ・パーフィット – エドワードの母。
- バーティ(ジョージ6世):ローレンス・フォックス – エドワードの弟。後の国王。
- エリザベス妃:ナタリー・ドーマー – バーティの妻。
- テルマ・ファーネス子爵夫人:ケイティ・マクグラス – ウォリスの友人でエドワードの愛人。
- モハメド・アルファイド:ハルク・ビルギナー – 実業家。ウォリスの手紙を所有。
- スタンリー・ボールドウィン:ジェフリー・パーマー – 英国首相。
レビュー 作品の感想や女優への思い