ジョン・ファンテの小説『バンディーニ家よ、春を待て』は、1938年に発表された作品。アメリカ合衆国コロラド州の小さな町で暮らすイタリア系移民のバンディーニ一家が、厳しい冬の寒さと貧困に苦しむ様子を描いています。失業中の父親スヴェーヴォ、信仰深い母親マリア、少年アルトゥーロとその弟たち。家族の葛藤や希望を、詩的な筆致で綴ったバンディーニ4部作の第一作です。
基本情報
- 邦題:バンディーニ家よ、春を待て
- 訳者:栗原俊秀訳
- 出版社:未知谷
- 出版年:2015年
- ISBN:978-4-89642-470-6
- 原題:Wait Until Spring, Bandini
出版状況
原作『Wait Until Spring, Bandini』はジョン・ファンテのデビュー長編として1938年にアメリカ合衆国で出版されました。以降、さまざまな出版社から再版され、ブラック・スパロー・プレスなどの版が知られています。日本では栗原俊秀訳により2015年に未知谷から『バンディーニ家よ、春を待て』として刊行されました。。この訳書はファンテの自伝的要素を丁寧に伝え、読者に高い評価を受けています。バンディーニ四部作の他の作品も次第に日本語訳が進んでいます。
女性の活躍
小説『バンディーニ家よ、春を待て』では女性キャラクターが家族の絆と葛藤の中心を担っています。
母親マリアは敬虔なカトリック信者として一家を支えます。貧困と夫の不在の中でロザリオを握りしめ祈り続け、子供たちを守る忍耐強い強さを発揮します。彼女の信仰は家族の精神的支柱となり、暗い冬の日々の中で希望の象徴となります。
義母ドンナ・トスカーナは厳しく批判的な存在として描かれ、夫スヴェーヴォが家を離れるきっかけを作ります。彼女の登場は家族の緊張を高め、女性間の複雑な関係を示します。また、富裕な未亡人ヒルデガルド夫人はスヴェーヴォを誘惑する役割を果たし、夫の弱さと家族の危機を強調します。これらの女性たちは受動的な耐え忍びだけでなく、家族の運命に積極的に影響を与える存在です。ファンテは女性の内面的な苦悩と強さをリアルに表現しています。
あらすじ
物語はコロラド州の寒い冬から始まります。煉瓦職人のスヴェーヴォ・バンディーニは失業し、家族は貧困と寒さに苦しんでいます。妻マリアはカトリックの信仰にすがり、息子アルトゥーロ、フェデリコ、オーガストの3人を育てます。アルトゥーロは14歳の少年で、作家になりたい夢を抱きながら父親の粗暴さと貧しさに苛立っています。
マリアの母親ドンナ・トスカーナが訪ねてくることが決まり、スヴェーヴォは義母の軽蔑を恐れて家を出てしまいます。スヴェーヴォは近隣の町でギャンブルに興じ、富裕な未亡人ヒルデガルド夫人と関係を持ちます。一方、家に残されたマリアと子供たちは石炭もなく飢えと寒さに耐え、祈りと喧嘩の日々を送ります。アルトゥーロは学校でトラブルを起こしたり、バスケットボールに熱中したり、初恋の少女に思いを寄せたりします。
10日後、スヴェーヴォは少しの金を持って帰宅します。家族は再会を喜びますが、葛藤は残ります。春の訪れとともに一家は再び希望を見出そうとします。この物語は貧困の中の家族愛と人間の弱さを丁寧に描いています。
解説
小説『バンディーニ家よ、春を待て』はジョン・ファンテの自伝的要素が色濃く、自身のイタリア系移民の少年時代を基にしています。貧困、信仰、家族の絆、青春の葛藤が主なテーマです。ファンテの文体は率直で詩的、ユーモアと悲哀が交錯します。第三人称ながらアルトゥーロの内面に深く入り込み、読者に強い共感を呼びます。
大恐慌期のアメリカでイタリア系移民が直面した差別や経済的苦境が背景にあります。父親スヴェーヴォのプライドと弱さ、母親マリアの無言の犠牲、少年アルトゥーロの成長が対比的に描かれます。カトリック信仰は救いであり重荷でもあり、家族の心理を深く掘り下げています。ファンテは後の作品でロサンゼルスを舞台にアルトゥーロの物語を続けますが、本作は家族の原点として重要です。全体として、希望の春を待つ人間の姿が感動的に表現されています。
関連情報
小説『バンディーニ家よ、春を待て』はバンディーニ4部作の第一作です。他の作品は以下の通りです。『ロサンゼルスへの道』(書かれたのは最早だが出版は1985年)、『塵に訊け』(1939年)、『バンカー・ヒルの夢』(1982年)。これらはアルトゥーロ・バンディーニの成長物語を連作で描いています。
映画化として『ウィンター・テイル』(1989年、監督ドミニク・デルデュデール)があります。出演はジョー・マンテーニャ(スヴェーヴォ・バンディーニ)、オルネラ・ムーティ(マリア・バンディーニ)、フェイ・ダナウェイ(ヒルデガルド夫人)、マイケル・バコール(アルトゥーロ・バンディーニ)、ダニエル・ウィルソン(オーガスト・バンディーニ)、アレックス・ヴィンセント(フェデリコ・バンディーニ)、レナータ・ヴァンニ(ドンナ・トスカーナ)です。原作の家族ドラマを忠実に再現しています。
ジョン・ファンテは1909年コロラド州デンバー生まれのイタリア系移民の息子で、1983年に亡くなりました。晩年は視力を失いながらも執筆を続けました。本作は移民文学の古典として、現在も多くの読者に愛されています。




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