映画『恋曲尘封』は吴有音監督・脚本による愛と時代を描く2014年の中国映画。1993年の上海を舞台に、18歳の少年が1975年の恋愛日記を発見し、36歳の女性との禁断の関係が始まる。蒋雯丽、黄轩、黄小蕾らが出演し、情熱と葛藤を繊細に表現。
基本情報
- 原題：恋曲尘封
- 英題：Wandering Days / Shanghai Shanghai
- 公開年：2014年（2025年に全国芸術連合専用オンラインで上映）
- 製作国：中国
- 公開年：95分
女優の活躍
『恋曲尘封』では、蒋雯丽、黄小蕾、そして特別出演の馬思純が重要な役割を果たしています。蒋雯丽は、主人公・轩が恋心を抱く36歳の女性・岚を演じ、複雑な感情と大人の女性の魅力を深く表現しました。彼女の演技は、過去と現在の間で揺れる心の機微を見事に捉え、観客に強い印象を与えます。特に、18年前の青春と現在の成熟した姿を対比させる場面では、蒋雯丽の繊細な表情と仕草が物語の情感を高めています。黄小蕾は、玛利亚役として登場し、1993年の上海の下町の雰囲気を体現。彼女のエネルギッシュで人間味あふれる演技は、物語にリアリティと活気を加え、脇役ながら存在感を発揮しています。馬思純は少年時代の岚を特別出演で演じ、若々しく純粋な姿で物語の過去の部分を鮮やかに彩りました。彼女の短い出演時間にもかかわらず、観客に強い印象を残す演技は、物語の時間軸をつなぐ重要な役割を果たしています。三者三様の女優の活躍により、映画は情感豊かな女性像を描き出しました。
女優の衣装・化粧・髪型
『恋曲尘封』の女優たちの衣装、化粧、髪型は、1993年と1975年の上海の時代背景を反映し、キャラクターの個性や物語のテーマを強調する重要な要素です。蒋雯丽演じる岚は、1993年のシーンで落ち着いた色合いのワンピースやカーディガンを着用し、90年代の上海の都市的な大人の女性像を表現。化粧は控えめでナチュラルな仕上がりですが、目元の繊細なアイラインが彼女の深い内面を際立たせます。髪型は、肩までの長さで軽くウェーブがかかったスタイルで、成熟した女性の柔らかさと知性を表現しています。一方、馬思純が演じる少年時代の岚は、1975年のシーンで当時の流行を反映したシンプルなブラウスとスカートを着用。化粧はほぼ施さず、若さ溢れる素朴な美しさを強調し、髪はストレートのロングヘアで純粋さを演出しています。黄小蕾演じる玛利亚は、労働者階級の女性らしいラフなシャツとパンツスタイルが特徴で、化粧はほとんどなく、髪は無造作に束ねたスタイルで、彼女の奔放な性格を表現。全体的に、衣装とメイクは時代感とキャラクターの背景を丁寧に反映し、視覚的に物語を補強しています。
あらすじ
1993年、上海市の古い石库门の家が取り壊される直前、18歳で学校を中退した轩（黄轩）は、床下に隠されていた1975年の日記を発見します。日記の扉には少女の写真が貼られ、繊細な筆跡で綴られた18年前の恋物語が記されています。轩はその少女に心を奪われ、偶然にも現在36歳の岚（蒋雯丽）と出会います。彼女が日記の少女本人だと知った轩は、青春の情熱と好奇心に駆られ、岚に接近。日記に記された過去の恋を再現するかのように、彼女との関係を深めていきます。しかし、この関係は単なる憧れを超え、禁断の情熱と複雑な感情の渦に巻き込まれていきます。一方、轩の友人である结巴（罗辑）や玛利亚（黄小蕾）も、それぞれの人生の中で愛と葛藤を抱え、1993年の上海の街角で交錯する人間模様が描かれます。時代を超えた愛の物語は、切なさと美しさ、そして人間の欲望の危うさを浮き彫りにします。
解説
『恋曲尘封』は、吴有音監督の初長編作品であり、2013年に撮影されながらも2022年の金鸡影展で初公開、2025年に一般公開された異色の作品です。物語は、1975年と1993年の二つの時代を交錯させ、愛と時間のテーマを探求します。上海の石库门という歴史的な空間を舞台に、時代の変化と個人の感情の揺れを丁寧に描き出しています。映画は、単なるロマンスにとどまらず、青春の衝動、禁断の愛、そして社会の階級差や時代の制約といった複雑な要素を織り交ぜ、観客に深い思索を促します。特に、蒋雯丽と黄轩の演技は、年齢差を超えた関係性の緊張感と情熱を見事に表現し、物語の核心を支えています。吴有音監督は、自身の故郷である上海へのオマージュとしてこの作品を捧げており、90年代の上海の街並みや文化を細やかに再現。音楽や美術も当時の雰囲気を強調し、観客をノスタルジックな世界へと誘います。しかし、一部の批評では、物語の展開がやや強引であるとの指摘もあり、男性視点のロマンスに偏りがちな点が議論を呼んでいます。それでも、独特の映像美と情感豊かなストーリーテリングは、愛と時間の普遍性を描く力作として評価されています。
キャスト
- 蒋雯丽（岚）：36歳の大学教師。過去の恋を秘めた女性で、轩との出会いで心が揺れる。
- 黄轩（轩）：18歳の少年。日記を通じて過去の恋に憧れ、岚との関係を深める。
- 黄小蕾（玛利亚）：轩の友人で、下町の女性。エネルギッシュで人間味あるキャラクター。
- 罗辑（结巴）：轩の友人で、玛利亚に思いを寄せるが、自身の葛藤に苦しむ。
- 林栋甫：上海の文化を体現する脇役として登場。
- 馬思純（少年時代の岚、特別出演）：1975年の若き岚を演じ、物語の過去を彩る。
スタッフ
- 監督・脚本：吴有音（故郷上海への愛を込めた初長編作品を監督・脚本）。
- 撮影：王博学（90年代上海の街並みを鮮やかに捉えた映像美）。
- 音楽：黄艾伦（ノスタルジックで情感豊かなスコアを提供）。
- 美術：李淼（石库门の家や当時の上海を忠実に再現）。
- 編集：张一凡（二つの時代を滑らかに繋ぐ編集技術）。
- 製作：上海海上影业有限公司（吴有音監督のビジョンを実現した製作会社）。
レビュー 作品の感想や女優への思い