2019年のホラー映画『ミッドサマー』は、フローレンス・ピュー演じるダニーが、恋人や友人たちとスウェーデンの孤立した村で行われる夏至祭を訪れ、異教的儀式に巻き込まれる物語。美しく不穏な映像と心理的恐怖が特徴。
基本情報
- 邦題:ミッドサマー
- 原題:Midsommar
- 公開年:2019年
- 製作国:米国、スウェーデン
- 上映時間:147分
- ジャンル:ホラー、ミステリー
- 配給:ファントム・フィルム
見どころ
『ヘレディタリー 継承』が世界中で絶賛されたアリ・アスター監督が、見る者を圧倒する世界観で人間の内面を容赦なく暴き出す。全シーンが伏線となる緻密な脚本にも注目。
フローレンス・ピューの活躍
フローレンス・ピューは本作で主人公ダニ・アーダー役を演じ、その卓越した演技力で観客と批評家から高い評価を受けました。ダニは家族の悲劇による深いトラウマを抱え、恋人クリスチャン(ジャック・レイナー)との関係にも不安定さを抱える複雑なキャラクターです。ピューはダニの感情の起伏を繊細かつ力強く表現し、特に恐怖と悲しみが交錯する場面での叫び声や表情は圧倒的で、彼女のキャリアにおけるブレイクアウト・パフォーマンスと称されました。本作での演技は、後に『リトル・ウーマン』(2019)や『ブラック・ウィドウ』(2021)での活躍につながる重要な一歩となりました。ピューはダニの心理的葛藤をリアルに描き出し、ホラー映画の枠を超えた人間ドラマの深みを加えています。
衣装・メイクアップ・ヘアスタイル
衣装
ダニの衣装は、物語の進行とともに変化し、彼女の心理状態や村の文化への同化を象徴しています。序盤ではカジュアルなTシャツやジーンズといった現代的な服装が中心で、都会の若者らしいスタイルが強調されます。しかし、村に到着後は、ホルガの伝統的な白いリネンのドレスや刺繍入りの民族衣装を着用する場面が増え、特にクライマックスの「メイクイーン」の花冠と花で覆われた豪華なドレスは、視覚的に強烈な印象を与えます。この衣装は、ダニが村の儀式に取り込まれていく過程を象徴しています。
メイクアップ
ピューのメイクは、ダニの感情の変化を反映するよう計算されています。序盤はナチュラルなメイクで、疲弊した表情や赤く泣きはらした目元が強調され、彼女の悲しみを際立たせます。後半では、村の儀式に参加するにつれて顔に施される白いペイントや花の装飾が、彼女の変容と異教的な美しさを表現。メイクはホラーの不気味さと神聖さを融合させる役割を果たしています。
ヘアスタイル
ダニの髪は、最初はラフに下ろした自然なブロンドヘアで、日常的な雰囲気を演出。物語が進むにつれ、髪は伝統的な編み込みや花で飾られたスタイルに変わり、特にメイクイーンのシーンでは、華やかな花冠と編み込みが彼女を神聖な存在として際立たせます。このヘアスタイルは、村の文化とダニの精神的変容を視覚的に結びつけます。
あらすじ
大学生のダニは、家族を悲劇的な事故で失い、深い悲しみに暮れています。恋人のクリスチャンやその友人たち(マーク、ジョシュ、ペレ)とともに、スウェーデンの僻地にあるホルガという村の夏至祭に参加するため旅行に出かけます。この村は、ペレの故郷であり、90年に一度の特別な儀式が行われる場所です。美しい自然と明るい陽光に包まれた村は、最初は平和で歓迎的な雰囲気に満ちています。しかし、祭りが進むにつれ、異教的な儀式や不穏な慣習が明らかになり、ダニたちは次第に恐怖と混乱に飲み込まれていきます。ダニは自らのトラウマと向き合いながら、村の儀式に深く関与していくことになり、物語は予想外の結末へと突き進みます。
解説
『ミッドサマー』は、アリ・アスター監督の2作目であり、彼のデビュー作『ヘレディタリー/継承』(2018)に続く心理ホラー映画です。明るい日中の設定と美しい田園風景は、従来のホラー映画の暗い雰囲気とは対照的で、この「明るい恐怖」が本作の独特な不気味さを生み出しています。映画は、喪失やトラウマ、カルト的なコミュニティの魅力と危険性をテーマに探求し、特にダニの視点を通じて、悲しみからの解放と新たな所属意識の獲得を描きます。
アスター監督は、スウェーデンの民間伝承や異教文化に着想を得て、ホルガの儀式を詳細に再現。色彩豊かなビジュアルと細部までこだわったセットデザインが、観客を異世界に引き込みます。音楽も重要な役割を果たし、ボビー・クルリックの不協和音を交えたスコアが緊張感を高めます。本作は、ホラーとしての恐怖だけでなく、心理的な深みや人間関係の複雑さを描いた作品として、批評家から高い評価を受けました。一方で、過激な描写や儀式の残酷さは観客に強い印象を与え、賛否両論を呼びました。
キャスト
- ダニ・アーダー:フローレンス・ピュー(主人公。トラウマを抱える大学生)
- クリスチャン・ヒューズ:ジャック・レイナー(ダニの恋人で、優柔不断な性格)
- マーク:ウィル・ポールター(クリスチャンの友人で、軽薄な性格)
- ジョシュ:ウィリアム・ジャクソン・ハーパー(人類学を研究する真面目な友人)
- ペレ:ヴィルヘルム・ブロングレン(ホルガ出身の友人で、グループを村に誘う)
- シヴ:グンネル・フレッド(ホルガの長老の一人)
- マヤ:イザベル・グリル(ホルガの若い女性)
スタッフ
- 監督・脚本:アリ・アスター(独特なホラー感覚で注目される新進気鋭の監督)
- 製作:パット・リック・ベックマン、ラース・クヌードセン
- 撮影:パウェウ・ポゴジェルスキ(美しい田園風景と不穏な雰囲気を巧みに撮影)
- 音楽:ボビー・クルリック(不気味で神聖なスコアで作品の雰囲気を強化)
- 編集:ルシアン・ジョンストン
- 美術:ヘンリック・スヴェンソン(ホルガの村の詳細なセットデザインを担当)
- 製作会社:A24、Square Peg
- 配給:A24(北米)、ギャガ(日本)
まとめ
『ミッドサマー』は、フローレンス・ピューの圧倒的な演技力とアリ・アスターの独自のビジョンが融合した、視覚的かつ心理的に強烈なホラー映画。ダニの衣装やメイクは物語のテーマを象徴し、異教的な儀式と美しい映像が織りなす独特の世界観は観客を引き込みます。喪失やコミュニティのテーマを深く掘り下げ、ホラーの枠を超えた作品として高い評価を受けています。
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