『男と女』（2016年）は、雪のフィンランドで出会った既婚者の男女が禁断の恋に落ちる韓国製ラブストーリー。チョン・ドヨンとコン・ユが主演し、孤独と情熱を繊細に描く。イ・ユンギ監督の情感豊かな演出と美しい映像が、愛の切なさを際立たせる。PG12。以下、女優の活躍、衣装・化粧・髪型、あらすじ、解説、キャスト、スタッフをまとめます。
基本情報
- 邦題：男と女
- 原題：남과 여
- 英題：A Man and a Woman
- 公開年：2016年
- 製作国：韓国
- 上映時間：115分
- ジャンル：ドラマ、恋愛
見どころ
『マルティニークからの祈り』のチョン・ドヨンと「トガニ 幼き瞳の告発」のコン・ユが恋心に揺れる男女を切なく演じる。大人のメロドラマを上品なタッチで描いている。
あらすじ
フィンランドのヘルシンキ。サンミン（チョン・ドヨン）は自閉症の息子を国際学校に通わせており、キャンプ遠足の見送りで同じく子を持つギホン（コン・ユ）と出会う。息子を心配するサンミンは、ギホンの好意でキャンプ場近くまで同行するが、帰路で大雪に見舞われ、森の小屋で一夜を過ごす。名前も知らぬまま体を重ねた二人は、一夜の出来事を夢と割り切り別れる。しかし、8か月後のソウルで偶然再会した二人は、抑えきれぬ情熱に突き動かされ、激しい恋に落ちる。それぞれ家庭を持ち、日常の孤独を抱える二人の愛は、許されざるものとして葛藤と切なさを生む。
女優の活躍
本作の主演女優チョン・ドヨンは、サンミン役で圧倒的な演技力を発揮し、観客の心を掴みました。彼女は2007年の『シークレット・サンシャイン』で第60回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞した実力派であり、本作でもその評価を裏切らない演技を見せています。サンミンは、息子への深い愛と夫との関係性に悩みながら、ギホンとの出会いで内なる情熱と孤独を露わにする複雑な女性です。チョン・ドヨンは、抑制された表情や繊細な仕草でサンミンの感情の揺れを表現。特に、ギホンとの再会シーンでは、言葉少なに目と体の動きだけで激しい恋心を伝え、観る者に深い共感を呼び起こします。彼女の演技は、物語の情感を増幅し、禁断の愛のリアルさを際立たせました。また、脇役として登場するイ・ミソやパク・ミンジも、それぞれの役で物語に深みを加えていますが、チョン・ドヨンの存在感が本作の核であることは間違いありません。
女優の衣装・化粧・髪型
チョン・ドヨン演じるサンミンの衣装は、物語の舞台であるフィンランドとソウルの対比を反映し、彼女の心情を象徴しています。フィンランドのシーンでは、雪深い環境に合わせた厚手のコートやマフラー、ブーツといった防寒具が中心。ダークグレーやネイビーといった落ち着いた色調の衣装は、サンミンの孤独と抑圧された感情を表現しています。特に、森の小屋でのシーンでは、シンプルなニットとコートが彼女の素朴さと脆弱さを強調。一方、ソウルに戻ると、サンミンは自身のブティックを経営する設定を反映し、洗練されたワンピースやテーラードジャケットなど、都会的でエレガントな装いに変化。これらの衣装は、彼女の日常への回帰と、ギホンへの情熱が再燃する心情を視覚的に示します。
化粧は、フィンランドではほぼすっぴんに近いナチュラルメイクで、冷たく澄んだ空気感と調和。ソウルでは、控えめながらもリップやアイラインで女性らしさを際立たせ、恋の昂揚感を表現しています。髪型は、フィンランドでは緩くまとめたポニーテールやダウンヘアが中心で、自然体な印象。ソウルでは、柔らかなウェーブのかかったミディアムヘアが登場し、女性としての魅力と内面の変化をさりげなく示しています。これらのスタイリングは、サンミンのキャラクター造形に深みを与え、チョン・ドヨンの演技を一層引き立てました。
解説
『男と女』は、既婚者同士の不倫というタブーをテーマにしながら、単なる恋愛映画を超えた人間ドラマとして高い評価を受けています。監督のイ・ユンギは、『愛してる、愛してない』などで知られるように、感情の機微を丁寧に描くスタイルが特徴。本作でも、フィンランドの雪景色とソウルの都会という対照的な舞台を用い、主人公たちの心の揺れを視覚的に表現しています。フィンランドの白い雪原は、純粋でありながら冷たく、許されざる愛の象徴として機能。対してソウルの雑踏は、日常の重圧と葛藤を強調します。
物語の核心は、孤独と愛の間で揺れるサンミンとギホンの心理描写にあります。サンミンは、自閉症の息子への愛と夫との関係に悩み、ギホンは海外赴任中の孤独を抱える。二人の出会いは、偶然から始まるが、互いの欠けた心を埋め合う必然性を感じさせます。しかし、不倫という選択は、道徳的・社会的な制約と向き合うことを強います。映画は、安易な結末を避け、愛の喜びと痛みを等しく描くことで、観客に深い余韻を残します。
音楽も本作の情感を高める要素です。静かでメランコリックなピアノ曲が、シーンごとの感情を繊細に彩り、特にフィンランドの雪の中でのシーンでは、静寂と調和して切なさを増幅。撮影監督のキム・ドンヨンは、雪の反射光やソウルの夜景を活かし、視覚的な美しさで物語を支えています。
本作は、チョン・ドヨンとコン・ユのケミストリーが大きな魅力。二人とも抑制された演技で感情を表現し、言葉よりも視線や仕草で愛を語るシーンは圧巻です。特に、チョン・ドヨンのサンミンは、母親としての責任と女性としての欲望の間で揺れる姿がリアルで、観客に共感と葛藤を同時に呼び起こします。
キャスト
- サンミン：チョン・ドヨン。『シークレット・サンシャイン』でカンヌ女優賞受賞。深い感情表現が本作の中心。
- ギホン：コン・ユ。『トガニ 幼き瞳の告発』や『新感染 ファイナル・エクスプレス』で知られる人気俳優。静かな魅力でサンミンを引き寄せる。
その他、イ・ミソ、パク・ビョンウン、パク・ミンジ、ユン・セアらが脇役として物語に厚みを加える。
スタッフ
- 監督・脚本：イ・ユンギ（『愛してる、愛してない』『素晴らしい一日』などで知られる感情描写の名手）
- 撮影：キム・ドンヨン（フィンランドの雪景色の美しさを捉えた映像が印象的）
- 音楽：パン・ジュンソク（静かで情感豊かなスコアで物語を支える）
- 製作：Showbox、Bom Film Productions
- 配給：クロックワークス（日本公開）
総括
『男と女』（2016年）は、禁断の愛をテーマに、孤独と情熱の間で揺れる男女の心を丁寧に描いた作品です。チョン・ドヨンの卓越した演技、フィンランドとソウルの対比を活かした映像美、イ・ユンギ監督の繊細な演出が融合し、観客に深い感動と問いを投げかけます。衣装や化粧、髪型もサンミンの心情を反映し、物語にリアリティを与えています。愛とは何か、幸せとは何かを考えさせる本作は、ラブストーリーの枠を超えた普遍的な魅力を放ちます。
レビュー 作品の感想や女優への思い