『夜に生きる』は、禁酒法時代のボストンを舞台に、ギャングの世界に足を踏み入れるジョー・コフリンの運命を描くクライム・サスペンス。ベン・アフレックが監督・主演を務め、デニス・ルヘインの小説を原作に、愛と裏切りが織りなす壮大な物語を展開。エル・ファニング、シエナ・ミラーら豪華女優が共演。
基本情報
- 邦題：夜に生きる
- 原題：Live by Night
- 公開年：2015年
- 製作国：米国
- 上映時間：129分
- ジャンル：アクション
- 配給：ワーナー・ブラザース映画
見どころ
「ミスティック・リバー」などで知られるデニス・ルヘインのクライム小説を映画化したピカレスクロマン。ハードボイルドな世界をタイプの違う3人の女優が華やかに彩る。
女優の活躍
『夜に生きる』には、エル・ファニング、シエナ・ミラー、ゾーイ・サルダナという3人の実力派女優が出演し、それぞれの役柄で物語に深みを与えています。
エル・ファニング（ロレッタ・フィギス役）
エル・ファニングは、宗教活動家ロレッタ・フィギスを演じ、禁酒法時代にタンパで影響力を発揮する複雑なキャラクターを表現しました。彼女の演技は、純粋さと脆さを兼ね備えた女性像を見事に体現。物語後半でジョーとの対話シーンでは、信仰と現実の間で揺れる心情を繊細に演じ、観客に強い印象を残します。特に、宗教的信念に突き動かされる姿は、映画のテーマである「個人のルールと社会の規範の衝突」を象徴しており、批評家からも注目されました。ファニングは、若手女優としての存在感を示し、ベン・アフレックの重厚な演出に華を添えました。
シエナ・ミラー（エマ・グールド役）
シエナ・ミラーは、ジョーが恋に落ちるエマ・グールドを演じ、物語の序盤で重要な役割を果たします。エマはギャングのボス、アルバート・ホワイトの情婦でありながら、ジョーと禁断の愛に落ちる危険な女性です。ミラーは、魅惑的かつ計算高い女性像を巧みに演じ、ジョーの運命を狂わせるきっかけを作ります。彼女の登場シーンは短いながらも強烈で、ジョーの心を掴む妖艶な魅力が物語の緊張感を高めます。ミラーの演技は、観客にエマの裏切りと悲劇性を同時に感じさせ、クライム映画における「ファム・ファタール」の典型を現代的に再解釈したと評価されています。
ゾーイ・サルダナ（グラシエラ・スアレス役）
ゾーイ・サルダナは、タンパでジョーと出会うキューバ系女性グラシエラ・スアレスを演じます。グラシエラは、地元の有力なスアレス家の出身で、ジョーのビジネスパートナーであり恋人となるキャラクターです。サルダナは、知性と情熱を併せ持つ女性を演じ、ジョーの人生に新たな希望を与える存在として物語に温かみを加えます。彼女の演技は、特にジョーとのロマンスや家族との葛藤を描くシーンで光り、映画の後半で感情的な重みを増す展開に貢献しています。サルダナの自然体な演技は、禁酒法時代の多文化的背景を反映し、物語にリアリティをもたらしました。
女優の衣装・化粧・髪型
『夜に生きる』は、1920年代から1930年代初頭の禁酒法時代を舞台にしており、女優たちの衣装、化粧、髪型は当時のファッションを忠実に再現しつつ、キャラクターの個性を際立たせています。
エル・ファニング（ロレッタ・フィギス）
ロレッタの衣装は、宗教活動家としての清純さを強調するシンプルで控えめなデザインが特徴です。淡い色のドレスやスカート、首元を覆うハイネックのブラウスが多用され、禁欲的な雰囲気を醸し出します。化粧はほとんど施さず、ナチュラルな肌と薄いリップで純粋さを表現。髪型は、緩やかなウェーブのかかったショートボブで、1920年代後半の流行を取り入れつつ、彼女の若さと脆さを強調しています。宗教的なシーンでは、髪を後ろでまとめた厳粛なスタイルが登場し、キャラクターの内面的変化を視覚的に示します。
シエナ・ミラー（エマ・グールド）
エマの衣装は、ギャングの情婦らしい華やかさとセクシーさが際立つデザインです。光沢のあるサテンのドレスや、肩を露出したイブニングガウンが彼女の魅力を引き立てます。特に、賭博場でのシーンでは、深紅のドレスが彼女の危険な魅力を象徴。化粧は、濃いアイラインと赤いリップで妖艶さを強調し、1920年代のフラッパースタイルを彷彿とさせます。髪型は、短めのボブにきついウェーブを施したスタイルで、時代感とエマの奔放な性格を表現。アクセサリーとして、長いパールのネックレスや羽飾りが使用され、豪華さを加えています。
ゾーイ・サルダナ（グラシエラ・スアレス）
グラシエラの衣装は、キューバの文化とタンパの温暖な気候を反映したエレガントなスタイルです。花柄のドレスや、軽やかな生地のスカートが多用され、彼女の温かみと情熱を表現。色使いは、クリーム色やパステルカラーが中心で、ジョーとのロマンスシーンでは柔らかさを強調します。化粧は、ナチュラルなベースにブラウンのアイシャドウとコーラル系のリップで、健康的で親しみやすい印象を与えます。髪型は、長い黒髪を緩やかなウェーブで下ろすか、アップスタイルにまとめることが多く、キューバ系女性の伝統的な美しさを反映。物語の進行に伴い、ビジネスシーンではより洗練されたスタイルが採用され、彼女の成長を視覚的に示します。
あらすじ
『夜に生きる』は、禁酒法時代のボストンを舞台に、ジョー・コフリン（ベン・アフレック）の波乱に満ちた人生を描くクライム・サスペンスです。警視正の息子であるジョーは、厳格な家庭に反発し、強盗を繰り返すアウトローとして生きています。ある日、賭博場でエマ・グールド（シエナ・ミラー）と出会い恋に落ちますが、彼女がギャングのボス、アルバート・ホワイトの情婦であったため、ジョーは罠にはめられ刑務所に収監されます。出所後、復讐を誓ったジョーは、ホワイトのライバルであるペスカトーレに身を寄せ、フロリダのタンパで酒の密造ビジネスを任されます。そこでスアレス家のグラシエラ（ゾーイ・サルダナ）と出会い、新たな愛を見つけますが、宗教活動家ロレッタ・フィギス（エル・ファニング）や地元の勢力との対立により、ジョーの運命は再び揺れ動きます。愛と裏切り、復讐と贖罪の間で葛藤するジョーの人生は、夜の闇の中で終焉を迎えます。
解説
『夜に生きる』は、デニス・ルヘインの2012年刊行の同名小説（原題：*Live by Night*）を原作とし、ベン・アフレックが監督、脚本、主演を務めた作品です。ルヘインの小説は、2013年にエドガー賞最優秀長編賞を受賞し、禁酒法時代のアメリカ裏社会をリアルに描いた傑作として評価されています。アフレックは、ルヘイン原作の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』（2007）に続く2度目の映画化に挑戦し、ボストン出身のルヘインとの強い繋がりを反映した作品に仕上げました。
本作は、1920年代の禁酒法時代を背景に、個人の自由と社会の規範、愛と復讐の葛藤を描くノワール映画です。ジョー・コフリンは、第一次世界大戦でのトラウマから「誰かのルールに従わない」と決意し、自分の道を切り開くアウトローとして生きるキャラクターです。しかし、彼の選択は愛する女性たちとの関係や、ギャング間の抗争を通じて悲劇的な結末へと導かれます。映画は、ボストンの寒々とした街並みからタンパの陽気な雰囲気まで、時代と場所のコントラストを巧みに描き、視覚的なスタイルが批評家から高く評価されました。
一方で、批評家の反応は賛否両論で、Rotten Tomatoesでは支持率35%、Metacriticでは49/100と平凡な評価に留まっています。批判の主な理由は、物語の焦点が分散し、ジョーの感情的な旅が十分に掘り下げられていない点や、既存のギャング映画のテーマを繰り返している点です。しかし、キャストの演技や、撮影監督ロバート・リチャードソンの映像美、衣装デザインの再現度は高く評価されており、禁酒法時代の雰囲気を楽しみたい観客には魅力的な作品です。
キャスト
- ジョー・コフリン：ベン・アフレック（主人公、ギャングとして生きるアウトロー）
- ロレッタ・フィギス：エル・ファニング（宗教活動家、ジョーの運命に影響を与える）
- エマ・グールド：シエナ・ミラー（ジョーの初恋、ギャングの情婦）
- グラシエラ・スアレス：ゾーイ・サルダナ（ジョーの新たな恋人、スアレス家の女性）
- トーマス・コフリン：ブレンダン・グリーソン（ジョーの父、警視正）
- ディオン・バルトロ：クリス・メッシーナ（ジョーの親友でビジネスパートナー）
- アーヴィング・フィギス：クリス・クーパー（ロレッタの父、警察署長）
- アルバート・ホワイト：ロバート・グレニスター（ギャングのボス、エマの愛人）
スタッフ
- 監督・脚本：ベン・アフレック
- 原作：デニス・ルヘイン（小説『夜に生きる』）
- 製作：レオナルド・ディカプリオ、ベン・アフレックほか
- 撮影：ロバート・リチャードソン
- 音楽：ハリー・グレッグソン＝ウィリアムズ
- 編集：ウィリアム・ゴールデンバーグ
- 美術：ジェス・ゴンコール
- 衣装デザイン：ジャクリーン・ウェスト
- 配給：ワーナー・ブラザース映画
総括
『夜に生きる』は、禁酒法時代の裏社会を舞台に、愛と復讐に翻弄される男の物語を描くクライム・サスペンスです。エル・ファニング、シエナ・ミラー、ゾーイ・サルダナの女優陣は、それぞれの役柄で魅力的な演技を披露し、1920年代のファッションを再現した衣装や化粧、髪型が時代感を強調します。ベン・アフレックの監督としての力量は、映像美やキャストの引き出し方に発揮されていますが、物語の焦点の分散が惜しまれます。それでも、ルヘインの原作の重厚な世界観や、ノワール映画の雰囲気を愛する観客には見応えのある作品です。
レビュー 作品の感想や女優への思い