『ニュー・ミュータント』は2020年8月28日公開のアメリカのスーパーヒーローホラー映画。X-MENシリーズのスピンオフで、若きミュータントが隔離施設で恐怖と闘う青春ホラー。監督はジョシュ・ブーン。若手女優たちが物語の中心を担い、鮮烈な印象を残す。
基本情報
- 邦題:ニュー・ミュータント
- 原題:The New Mutants/X-Men: The New Mutants
- 公開年:2020年
- 製作国:米国
- 上映時間:94分
- ジャンル:ホラー、SF
あらすじ
ネイティブ・アメリカンの保留地に住む少女ダニエル・ムーンスター(ダニー)は、突如竜巻に襲われ、父親を失います。意識を取り戻したダニーは、ベッドに拘束された状態で目を覚まし、セシリア・レイエス博士から自分がミュータントであり、能力を制御できない若者を育成する隔離施設にいることを告げられます。
施設には、テレポーテーションとソウルソードを使うイリアナ・ラスプーチン、狼人間に変身するレイン・シンクレア、高速移動のサム・ガスリー、太陽エネルギーを操るロベルト・ダ・コスタが収容されています。彼らはそれぞれ過去のトラウマを抱え、能力の制御に苦しんでいます。ダニーはイリアナと対立しつつ、レインと親密な関係を築きますが、施設内で「スマイリーマン」と呼ばれる謎の怪物が現れ、恐怖が広がります。これはダニーの潜在能力「他人に幻覚を見せる力」が覚醒した結果でした。
レイエス博士は、ダニーの能力が危険と判断したエセックス・コーポレーションの指令を受け、ダニーを安楽死させようとしますが、レインに阻止されます。施設の真の目的がX-MENとは無関係で、ミュータントを殺人兵器として育成することだったと判明。ダニーの能力が暴走し、巨大な熊の怪物「デーモン・ベア」が現れ、レイエスを殺害します。イリアナはソウルソードとドラゴン「ロッキード」で応戦し、ダニーは亡魂の父の助言を受け、恐怖を克服してデーモン・ベアを制御。施設は廃墟となり、5人の若者は新たな未来へ旅立ちます。
解説
『ニュー・ミュータント』は、マーベル・コミックの「X-MEN」シリーズの13作目にして、20世紀フォックス製作の最終作です。従来のX-MEN映画が大規模なアクションや世界を救う物語に焦点を当てていたのに対し、本作は青春ホラーという新境地を開拓しました。監督のジョシュ・ブーンは、『きっと、星のせいじゃない。』で培った青春ドラマの経験を活かし、思春期の不安やトラウマを強調。ホラー要素は、グロテスクさよりも心理的な恐怖や幻覚に重点を置き、若者たちの内面的な葛藤を描いています。ダニーの能力が引き起こす幻覚は、登場人物の過去を掘り下げる巧妙な手法として機能し、物語に深みを加えています。
ただし、公開延期やディズニーによる20世紀フォックスの買収の影響で、追加撮影は行われず、初期バージョンで公開されました。日本では劇場公開されず、2021年3月31日からデジタル配信が開始されました。批評家からは賛否両論で、Rotten Tomatoesでは35%の支持率(2021年6月時点)、Metacriticでは43/100点を記録。女性ミュータントの活躍やLGBT要素(ダニーとレインの恋愛)は新鮮と評価された一方、ストーリーの独自性やアクションの地味さに批判も。原作者ボブ・マクロードは、キャストの肌の色やクレジットの誤りにも不満を表明しました。それでも、若手俳優の演技とホラーの融合は、X-MENシリーズの新たな可能性を示しました。
女優の活躍
本作では、若手女優たちが物語の中心を担い、鮮烈な印象を残しました。以下に主要な女優の活躍を紹介します。
ブルー・ハント(ダニエル・ムーンスター / ミラージュ)
主人公ダニーを演じたブルー・ハントは、ネイティブアメリカンのラコタ族の子孫で、本作がスクリーンデビュー作。ダニーの感情の揺れやトラウマを繊細に表現し、特に父親との霊的な対話シーンでは感動的な演技を見せました。自身のルーツと役柄の共通点から、強い思い入れを持って演じたことが伝わります。控えめながらも物語の鍵を握る存在感が光ります。
アニャ・テイラー=ジョイ(イリアナ・ラスプーチン / マジック)
イリアナ役のアニャ・テイラー=ジョイは、『ウィッチ』や『クイーンズ・ギャンビット』で知られる実力派。攻撃的で自信家なイリアナを魅力的に演じ、ソウルソードを振るうアクションシーンでは圧倒的なカリスマ性を発揮。ダニーとの対立や過去のトラウマを表現する繊細さも見せ、批評家から高い評価を受けました。彼女の存在感は本作の大きな見どころです。
メイジー・ウィリアムズ(レイン・シンクレア / ウルフスベーン)
『ゲーム・オブ・スローンズ』のアリア役で知られるメイジー・ウィリアムズは、狼人間のレインを演じ、優しさと強さを兼ね備えたキャラクターを体現。ダニーとの恋愛要素は、LGBT描写として本作に新たな深みを加え、彼女の自然体な演技が感動を呼びます。アクションシーンでの狼人間への変身も見事でした。
アリシー・ブラガ(セシリア・レイエス)
ベテラン女優のアリシー・ブラガは、施設の責任者セシリアを冷徹かつ知的に演じました。『シティ・オブ・ゴッド』や『アイ・アム・レジェンド』での経験を活かし、複雑な動機を持つキャラクターに説得力を持たせました。終盤のヴィランとしての迫力も印象的です。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装、化粧、髪型は、青春ホラーの雰囲気と各キャラクターの個性を反映しています。衣装デザインはリーサ・エバンスが担当し、思春期の不安定さや施設の閉鎖的な環境を表現しました。
ブルー・ハント(ダニー)
ダニーの衣装は、ネイティブアメリカンのルーツを反映したシンプルなカジュアルスタイル。デニムや無地のシャツ、ブーツが中心で、飾り気のない自然体な印象。髪はロングでナチュラルなストレート、化粧はほぼせず、素朴さを強調。終盤の戦闘シーンでは、力強さを示すダークトーンの衣装が登場。
アニャ・テイラー=ジョイ(イリアナ)
イリアナの衣装は、攻撃的な性格を反映した大胆なデザイン。タイトなトップスやレザー風のジャケット、ダークカラーのパンツが特徴。髪はブロンドのロングヘアで、緩やかなウェーブやポニーテールが戦闘時の動きやすさを表現。化粧は鋭いアイラインと赤いリップで、自信家な雰囲気を強調。ソウルソードを振るうシーンでは、衣装が戦士らしさを際立たせます。
メイジー・ウィリアムズ(レイン)
レインの衣装は、優しく控えめな性格を反映した柔らかい色合いのセーターやカーディガン。スコットランド出身を意識したチェック柄のスカートも登場。髪はショートカットのダークブラウンで、ナチュラルなスタイル。化粧は控えめで、優しい表情を引き立てます。狼人間への変身シーンでは、衣装が破れ、ワイルドな一面が強調されます。
アリシー・ブラガ(セシリア)
セシリアの衣装は、博士としての知性を強調する白衣やシンプルなブラウス、スラックス。髪は黒のタイトなアップスタイルで、厳格さを表現。化粧は薄く、プロフェッショナルな印象を与えます。終盤の戦闘では、バリア能力を反映したダークカラーの衣装が登場し、ヴィランとしての威圧感を高めます。
キャスト
- ブルー・ハント:ダニエル・ムーンスター / ミラージュ
- アニャ・テイラー=ジョイ:イリアナ・ラスプーチン / マジック
- メイジー・ウィリアムズ:レイン・シンクレア / ウルフスベーン
- チャーリー・ヒートン:サム・ガスリー / キャノンボール
- ヘンリー・ザガ:ロベルト・ダ・コスタ / サンスポット
- アリシー・ブラガ:セシリア・レイエス
- アダム・ビーチ:ウィリアム・ローンスター(ダニーの父)
- ハッピー・アンダーソン:クレイグ神父
- マリリン・マンソン:スマイリーマンの声
スタッフ
- 監督:ジョシュ・ブーン
- 脚本:ジョシュ・ブーン、クネイト・リー
- 製作:サイモン・キンバーグ、ローレン・シュラー・ドナー、カレン・ローゼンフェルト
- 製作総指揮:スタン・リー、ミシェル・インペラート・スタービル
- 原作:クリス・クレアモント、ボブ・マクロード、ビル・シェンキェヴィチ
- 撮影:ピーター・デミング
- 美術:モリー・ヒューズ
- 衣装:リーサ・エバンス
- 編集:ロブ・サリバン、マシュー・ランデル、アンドリュー・バックランド
- 音楽:マーク・スノウ
- 音楽監修:シーズン・ケント
- 視覚効果監修:オリバー・デュモント
レビュー 作品の感想や女優への思い