『アンカーウーマン』(1996年)は米国のTV業界でアンカーを目指す女性の成長と恋を描くロマンチックなドラマ。主演女優ミシェル・ファイファーがタリー・アタウォーター役で圧倒的な存在感を発揮。主題歌はセリーヌ・ディオンの「Because You Loved Me」。
基本情報
- 邦題:アンカーウーマン
- 原題:UP CLOSE & PERSONAL
- 公開年:1996年
- 製作国:米国
- 上映時間:125分
- ジャンル:ドラマ
あらすじ
サリー・アタウォーター(ミシェル・ファイファー)は、フロリダの小さな町で育ち、ニュースキャスターになる夢を抱く若い女性です。彼女は「タリー」と名乗り、マイアミのローカルテレビ局に応募し、採用されます。そこで、かつて全国ネットで名を馳せた敏腕ニュースディレクター、ウォーレン・ジャスティス(ロバート・レッドフォード)と出会います。ウォーレンはタリーの才能を見抜き、厳しくも情熱的に彼女を指導。報道記者としての技術や姿勢を叩き込みます。タリーは彼の指導のもと、政治家への鋭い質問や現場でのリポートを通じて視聴者の人気を集め、徐々に頭角を現します。
やがて二人は互いに惹かれ合い、恋愛関係に発展。しかし、タリーにフィラデルフィアの大きなテレビ局からオファーが舞い込み、キャリアの飛躍と引き換えにウォーレンとの別れを迫られます。彼女は葛藤しながらも新たな挑戦を選び、アンカーウーマンとして成功を収めます。一方、ウォーレンは危険な取材先であるパナマへ赴き、そこで命を落とします。タリーは彼の死を乗り越え、ウォーレンから学んだ「伝えること」の意義を胸に、全国ネットのニュース番組のアンカーとして堂々と活躍する姿で物語は幕を閉じます。
女優の活躍
本作の主演女優ミシェル・ファイファーは、タリー・アタウォーター役で圧倒的な存在感を発揮しています。彼女は、田舎育ちで野心に燃えるが未熟な女性から、自信に満ちたプロのアンカーウーマンへと成長する過程を繊細かつ力強く演じました。
特に、感情の機微を表現するシーンでは、恋愛の喜びや悲しみ、キャリアへの情熱をリアルに伝え、観客の共感を誘います。ファイファーの演技は、物語の中心であるタリーの内面的な変化を際立たせ、批評家からも高い評価を受けました。彼女の自然体でありながらも洗練された演技は、本作のロマンチックなドラマとしての魅力を大きく高めています。
また、脇を固めるストッカード・チャニング(マーシャ役)やケイト・ネリガン(ジョアンナ役)も重要な役割を果たしています。チャニングは、タリーの上司として厳格ながらも人間味のあるキャラクターを演じ、物語に深みを加えました。ネリガンは、テレビ業界の現実を体現するベテランキャスター役で、プロフェッショナルな姿勢と微妙な嫉妬心を巧みに表現しています。これらの女優の活躍が、タリーの成長物語をよりリアルで魅力的なものにしています。
女優の衣装・化粧・髪型
ミシェル・ファイファー演じるタリーの衣装は、彼女のキャラクターの成長を視覚的に表現する重要な要素です。映画の序盤では、地方出身の素朴な女性として、カジュアルで少し野暮ったい服装が登場します。例えば、明るい色のブラウスやシンプルなスカートが、彼女の未熟さと純粋さを象徴しています。しかし、ウォーレンの指導を受け、キャリアが進むにつれて、衣装は徐々に洗練されていきます。フィラデルフィアのテレビ局に移ってからは、シャープなスーツやエレガントなドレスが中心となり、プロフェッショナルなアンカーウーマンとしての自信を反映。衣装デザインは、アルバート・ウォルスキーによるもので、彼の過去の作品(「トイズ」など)でも見られる色彩とシルエットの巧妙な使い方が本作でも際立っています。
化粧もタリーの変貌を強調する要素です。初期のシーンでは、ナチュラルメイクで若々しく素朴な印象を与えますが、キャリアが進むにつれて、鮮やかなリップやアイメイクが施され、洗練された美しさが強調されます。特に、全国ネットのアンカーとして登場するシーンでは、控えめながらも存在感のあるメイクが、彼女の知性と魅力を引き立てています。
髪型も同様に、タリーの成長を象徴しています。物語の冒頭では、ゆるいウェーブのロングヘアで、親しみやすい雰囲気を演出。マイアミのテレビ局で働くようになると、髪はより整ったスタイルになり、フィラデルフィア以降はショートカットやアップスタイルが登場し、プロフェッショナルな印象を強めます。これらの変化は、タリーが自信と地位を獲得していく過程を視覚的に補強し、観客に彼女の成長を強く印象づけます。
解説
『アンカーウーマン』(原題:Up Close & Personal)は、1988年に出版されたアランナ・ナッシュのノンフィクション『Golden Girl: The Story of Jessica Savitch』を基にした作品です。実在のニュースキャスター、ジェシカ・サヴィッチの人生をモデルにしていますが、映画は商業的な判断により、彼女の波乱に満ちた私生活(薬物問題や恋人の自殺など)を大幅に省略し、ロマンチックなサクセスストーリーに再構築されました。このため、原作の暗い側面はほとんど描かれておらず、代わりに希望と愛をテーマにした感動的な物語が展開します。
監督のジョン・アヴネットは、テレビ業界の裏側を描きつつ、恋愛とキャリアの両立という普遍的なテーマを丁寧に掘り下げました。脚本は、ジョーン・ディディオンとジョン・グレゴリー・ダンの夫婦によるもので、彼らの8年にわたる改稿作業は、後にダンの著書『Monster: Living Off the Big Screen』で詳細に語られています。映画は、テレビ業界の競争の厳しさや、報道の倫理を扱いつつも、観客に感情的な共鳴を呼び起こすロマンス要素を強調。セリーヌ・ディオンの主題歌「Because You Loved Me」は、物語の感動的なトーンを象徴し、アカデミー賞の最優秀歌曲賞にノミネートされました。
本作は、1990年代の「チックムービー」(女性向けロマンス映画)の典型とも言える作品で、恋愛と成功を両立させる女性像を描き、観客に夢と希望を与えます。特に、ミシェル・ファイファーの華麗なイメージチェンジや、ロバート・レッドフォードの円熟した魅力は、物語のファンタジー性を高め、視覚的にも楽しめる要素となっています。批評家の間では、原作からの改変が議論の的となりましたが、商業的には成功し、幅広い観客から愛されました。
キャスト
- ミシェル・ファイファー(タリー・アタウォーター):野心的な女性アンカー志望者。地方局から全国ネットへ成長。
- ロバート・レッドフォード(ウォーレン・ジャスティス):経験豊富なニュースディレクターで、タリーの指導者兼恋人。
- ストッカード・チャニング(マーシャ):タリーの上司で、厳格ながらも支える存在。
- ジョー・マンティーニャ(バッキー):テレビ局のスタッフで、タリーをサポート。
- ケイト・ネリガン(ジョアンナ):ベテランキャスターで、タリーのライバル。
- グレン・プラマー(ネッド):タリーの同僚で、報道の現場を共にする。
- ジェームズ・レブホーン(ジョン):テレビ局の幹部。
- デディー・ファイファー(ケイト):タリーの友人役で、ミシェルの実妹。
スタッフ
- 監督:ジョン・アヴネット(「フライド・グリーン・トマト」「8月のメモワール」)
- 脚本:ジョーン・ディディオン、ジョン・グレゴリー・ダン
- 製作:ジョン・アヴネット、デイヴィッド・ニックセイ、ジョーダン・カーナー
- 製作総指揮:エド・フックストラッテン、ジョン・フォアマン
- 撮影:カール・ウォルター・リンデンローブ(「ロブ・ロイ」)
- 音楽:トーマス・ニューマン(「キルトに綴る愛」)
- 主題歌:セリーヌ・ディオン「Because You Loved Me」(作詞:ダイアン・ウォーレン)
- 美術:ジェレミー・コンウェイ(「サブリナ」)
- 編集:デブラ・ニール=フィッシャー
- 衣装:アルバート・ウォルスキー(「トイズ」)
レビュー 作品の感想や女優への思い