『紅夜夢』は1983年の日本映画で、実在の人物、高橋お伝の波乱に富んだ人生を描写。愛する男のために体を売り、金貸しの男を殺して首斬りの刑に処せられた女の物語で、日活ロマンポルノの一作として製作されました。監督は西村昭五郎、主演は親王塚貴子。
基本情報
- 原題:紅夜夢
- 公開年:1983年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:76分
- 公式ページ:nikkatsu.com
女優の活躍
映画『紅夜夢』の主演を務める親王塚貴子は、高橋お伝役で鮮烈な印象を残します。彼女は1962年生まれの女優で、ロマンポルノ作品を中心に活躍し、美しい容姿と大胆な演技で注目を集めました。この映画では、病気の夫を支えるために体を捧げる女性の苦悩を体現し、情念深い役柄を熱演しています。レビューでは、演技の拙さを感じさせる部分もあるものの、透き通るような白い肌と一途な表情が役にぴったり合っていると評価されています。
親王塚貴子は本作を通じて、明治時代の毒婦として知られるお伝の内面的な葛藤を表現します。夫への献身と、愛する男との出会いがもたらす運命の変化を、身体的な表現を交えながら描き出しています。彼女の活躍は、単なるエロティックな要素を超えて、女性の強さと脆さを強調するものとなっています。また、同時代の他の作品でも同様の役柄を演じ、女優としての独自の魅力を発揮しました。
さらに、親王塚貴子の演技は、共演者との化学反応によって際立ちます。小林稔侍演じる市太郎との情愛シーンでは、彼女の繊細な感情表現が光り、物語の核心を支えています。この映画での活躍は、彼女のキャリアにおいて重要な位置を占め、後年の作品にも影響を与えました。全体として、親王塚貴子の存在感が本作の魅力を高めていると言えます。
女優の衣装・化粧・髪型
親王塚貴子演じる高橋お伝の衣装は、明治時代を舞台とした設定に合わせ、伝統的な和服が中心です。物語の序盤では、貧しい生活を反映した質素な着物が多く、袖口や裾の擦り切れが彼女の苦労を象徴します。夜逃げのシーンでは、動きやすい着流しの衣装が用いられ、体を強調するようなデザインがロマンポルノの特色を表しています。後半の横浜での場面では、夜鷹として働く姿で、より華やかな帯や小袖が登場し、色合いも赤や黒を基調とした妖艶なものが目立ちます。
化粧については、時代劇らしい白粉を厚く塗った顔立ちが特徴です。お伝の美しい白い肌を活かし、薄い紅を差した唇と、細く引かれた眉が、彼女の儚さと強さを表現しています。牢獄のシーンでは、化粧が崩れた様子が描かれ、絶望的な心情を視覚的に強調します。全体的に、化粧は自然光の下で透き通るような肌を際立たせ、女優の魅力を最大限に引き出す工夫がされています。
髪型は、日本髪を基調としたもので、物語の進行に合わせて変化します。序盤の村娘時代はシンプルな髷にまとめ、夫婦の貧困生活を表しています。横浜に移ってからは、夜鷹らしい華やかな島田髷や散らし髪が用いられ、乱れた髪が情念のシーンで効果的に使われています。最後の刑場シーンでは、髪を下ろした状態が登場し、死への覚悟を象徴します。これらの髪型は、女優の表情を引き立て、時代背景を忠実に再現しています。
あらすじ
明治九年八月、東京市ヶ谷監獄に高橋お伝という若い女が投獄されます。お伝は上州利根郡下牧村の生まれで、十六歳のときに婿養子の波之助を迎えます。しかし、波之助は重い病で手足が痺れ、酒に溺れる体となってしまいます。医者の費用に苦しむお伝は、金貸しの田中甚三郎から金を借りるものの、美しい体を弄ばれてしまいます。横浜に良い医者がいると聞き、お伝は甚三郎の金を持って波之助とともに夜逃げを決意します。二人は互いの体を弄り合いながら将来を語り合い、三年後の横浜へと移ります。
横浜で縄張りを荒らしたとして夜鷹たちに暴行を受けるお伝は、着流しの遊び人・小川市太郎に助けられます。それが運命的な出会いとなり、二人はその夜に結ばれます。甚三郎が金を請求しにやってくると、市太郎は悪知恵を働かせ、お伝が甚三郎に無理やり体を奪われたときにできた子供だと偽って大金を手に入れます。お伝と市太郎は離れられなくなり、波之助は喀血して息絶えます。その後、お伝は大金を持つ後藤吉蔵を客に取りますが、彼は市太郎の昔の仲間でした。
市太郎はいかさま博打がばれてやくざに追われ、お伝はその金のために吉蔵に抱かれます。吉蔵のサディスティックな責めを受け、翌朝お伝は吉蔵の喉を剃刀で切りつけます。奪った金で借金を返し、市太郎の女房となりますが、殺しを打ち明けて激しく泣きます。牢の中でお伝は血文字で市太郎に助けを求める手紙を書きますが、彼は見張りがついてどうすることもできません。お伝は人を謀殺した罪で斬首の刑に処せられ、「市太郎さま……生きたい……」と絶叫します。
解説
『紅夜夢』は、実在の人物である高橋お伝の生涯を基にした実録物語です。お伝は明治時代の毒婦として知られ、愛する男のために体を売り、殺人を犯して刑に処せられた女性です。この映画は、そんな彼女の波乱に満ちた人生を、日活ロマンポルノの枠組みで描いています。監督の西村昭五郎は、情念とエロティシズムを融合させた演出で知られ、本作でも女性の内面的な苦悩を強調します。脚本の山之上二郎は、お伝の行動を歴史的事実に基づきながら、ドラマチックに再構築しています。
撮影を担当した森勝は、暗く陰鬱な照明を活用し、明治時代の貧困と欲望を視覚的に表現します。音楽の伊藤晴康は、緊張感のある曲調で物語の展開を支え、牢獄や刑場のシーンで効果を発揮します。本作は、単なるエロティック映画ではなく、女性の献身と運命の残酷さをテーマに据えています。お伝のキャラクターは、男社会での犠牲者として描かれ、観客に深い感動を与えます。また、にっかつとアマチフィルムの合作として、商業性と芸術性を両立させた点が特徴です。
解説として、本作は1983年の社会背景を反映し、女性の地位や愛の形を問いかけます。親王塚貴子の演技は、役の複雑さを体現し、共演者の名和宏や小林稔侍との対比が物語を豊かにします。全体的に、歴史的事実を基にしながらも、フィクションの要素を加え、娯楽性を高めています。この映画は、ロマンポルノのジャンルを超えて、人間ドラマとして評価されています。
キャスト
- 高橋お伝: 親王塚貴子
- 小川市太郎: 小林稔侍
- 後藤吉蔵: 名和宏
- 田中甚三郎: 岡部正純
- 波之助: 山本伸吾
- おつね: 江崎和代
- おはつ: 森村陽子
- 新田巡査: 北町嘉明
- やくざA: 伊達弘
- やくざB: 杉山孝
- やくざC: 立川良一
- 女: 青山恭子
- 牢名主: 藤ひろ子
- 邏卒: 黒沢拓
- 甚三郎の女中: 藤崎淳子
スタッフ
- 監督: 西村昭五郎
- 脚本: 山之上二郎
- 企画: 進藤貴美男
- 製作: 荒川泰子
- 撮影: 森勝
- 美術: 野尻均
- 音楽: 伊藤晴康
- 録音: 高橋三郎
- 照明: 嶋田宣代士
- 編集: 阿良木佳弘
- 選曲: 小原孝司
- 助監督: 小野多美雄
- スチル: 勝村勲



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