映画『セバーグ 素顔の彼女』はフランス・ニューウェーブのアイコンである女優ジーン・セバーグの人生を基にした政治スリラー。1960年代後半、彼女が公民権運動を支援したことでFBIの標的にされ、監視と中傷に苦しむ姿を描写。クリステン・スチュワートがセバーグを演じ、彼女の内面的な葛藤と強さを表現しています。監督はベネディクト・アンドリュースで、96分の伝記映画。
基本情報
- 邦題:セバーグ 素顔の彼女
- 原題:Seberg
- 公開年:2019年
- 製作国・地域:アメリカ、イギリス
- 上映時間:96分
- ジャンル:伝記、スリラー
セバーグ 予告編 #1(2019年)|Movieclips Trailers
ジーン・セバーグの活躍
ジーン・セバーグは、1938年にアメリカ合衆国アイオワ州で生まれ、1957年にオットー・プレミンジャー監督の『ジャンヌ・ダーク』でデビューします。この作品でジョーン・オブ・アークを演じましたが、批評家から厳しい評価を受けました。しかし、彼女の才能はすぐに認められ、1958年の『悲しみよこんにちは』に出演します。この頃、彼女のキャリアは低迷しかけましたが、1959年の『ねずみが月を飲み込んだ』で復活します。
1960年、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』でパトリシア役を演じ、フランス・ニューウェーブの象徴となります。この役で彼女はヨーロッパで絶賛され、フランソワ・トリュフォーから「ヨーロッパ最高の女優」と称賛されます。以降、フランスで数多くの作品に出演し、『愛の休暇』(1961年)、『5日間の恋人』(1962年)、『フランス風スタイルで』(1963年)など、洗練された演技で人気を博します。
ハリウッドに戻った1964年の『リリス』では、ウォーレン・ビーティと共演し、ゴールデングローブ賞にノミネートされます。1965年の『モーメント・トゥ・モーメント』、1966年の『優雅なる狂気』ではショーン・コネリーと共演します。フランスでも『境界線』(1966年)、『コリントへの道』(1967年)に出演し、多忙を極めます。
1960年代後半、彼女は公民権運動に積極的に関与します。NAACP(全米有色人種地位向上協会)に寄付し、ブラックパンサー党に約10,500ドルを支援します。この活動がFBIのCOINTELPROプログラムの標的にされ、監視と中傷を受けます。1970年、妊娠中の彼女に対してFBIがブラックパンサー党員の子を妊娠したという偽情報を流し、早産を引き起こし、娘を失います。この出来事で彼女は自殺未遂を起こし、精神的に苦しみます。
1970年代に入り、『エアポート』(1970年)、『マッチョ・キャラハン』(1970年)、『キル!キル!キル!キル!』(1971年)などに出演しますが、FBIの影響でキャリアは低迷します。ヨーロッパで『ナポリのギャング戦争』(1972年)、『夏の白い馬たち』(1975年)、『大いなる幻』(1975年)、『野鴨』(1976年)に出演します。最後のアメリカ映画は1974年のテレビ映画『ねずみ』です。彼女の生涯は1979年にパリで自殺と見なされる死で終わりますが、FBIの嫌がらせが原因とされています。
セバーグの活躍は、演技だけでなく、社会正義への献身で記憶されます。彼女の支援はブラックパンサー党の教育プログラムなどに使われ、彼女自身もメスクワキ族のバスケットボールチームにユニフォームを寄付します。こうした行動が彼女の人生を複雑にし、映画『セバーグ』で描かれます。
ジーン・セバーグの衣装・化粧・髪型
ジーン・セバーグのスタイルは、1960年代のフランス・ニューウェーブを象徴します。特に『勝手にしやがれ』でのピクシーカットは有名で、短くカットされたブロンドヘアが彼女のガミンな魅力を引き立てます。この髪型は、自由奔放で現代的なイメージを与え、後世のファッションに影響を与えます。マドンナの「パパ・ドント・プリーチ」のMVでも再現されます。
衣装では、フランスのストライプ柄のジャージーシャツと黒いカプリパンツが代表的です。これらはカジュアルで洗練され、ハリウッドの華やかなドレスとは対照的です。彼女はアメリカのブルージーンズやミルクシェイクを恋しがるほど、フランスのシンプルなファッションに馴染みます。1960年代の映画では、モッドスタイルのミニスカートやタイトなトップを着用し、若々しいエネルギーを表現します。
化粧はナチュラル志向で、薄いファンデーションに軽いアイラインとマスカラが中心です。リップは淡いピンクやヌードカラーを使い、彼女の自然な美しさを強調します。1970年代に入ると、髪型は少し長めに変化し、ウェーブを加えることが増えます。衣装もドラマチックな役柄に合わせて、ヨーロッパ風のワンピースやコートを着用します。
映画『セバーグ』では、クリステン・スチュワートがこのスタイルを再現します。ピクシーカットのブロンドヘア、ストライプシャツ、1960年代のスカートやブラウスを着用し、セバーグのエレガントな雰囲気を体現します。化粧もナチュラルで、彼女の内面的な強さを引き出すメイクが施されます。この再現は、セバーグのアイコン性を現代に蘇らせます。
あらすじ
1968年、パリで夫のロマン・ゲイリーと息子に別れを告げ、ジーン・セバーグはロサンゼルスに向かいます。ファーストクラスでブラックパンサー党の活動家ハキム・ジャマルと出会い、彼の主張に共感します。空港で抗議する活動家たちにブラックパワー・サリュートを挙げ、FBIの監視対象となります。ジャック・ソロモン捜査官が彼女の電話を盗聴します。
セバーグはジャマルと親密になり、性的関係を結びますが、彼は既婚者です。FBIのCOINTELPROプログラムが彼女を標的にし、ジャマルとの親密な場面を録音して彼の妻ドロシーに送ります。これで関係は破綻します。セバーグは監視を感じ、ソロモンから匿名で警告を受けますが、公民権運動から離れません。
妊娠したセバーグに対し、FBIはブラックパンサー党員の子という噂を流します。これがメディアで報じられ、彼女は自殺未遂を起こし、娘を流産します。絶望した彼女は、噂を流した出版物を訴えます。ソロモンは良心の呵責からFBIファイルを彼女に渡します。セバーグはパリに戻り、ブラックパンサー党を支援し続けますが、1979年に自殺します。
解説
映画『セバーグ 素顔の彼女』は、ジーン・セバーグの伝記を基に、FBIの監視と中傷を描きます。1960年代後半、アメリカの公民権運動が高まり、セバーグのような有名人が支援したことで、政府の弾圧が激化します。COINTELPROは、ブラックパンサー党を崩壊させるための秘密プログラムで、セバーグを「中和」対象にします。
映画は二つの視点から描かれます。セバーグの苦悩と、ソロモン捜査官の葛藤です。セバーグの支援は金銭的・精神的ですが、FBIの偽情報で彼女のイメージを汚します。これが彼女の精神崩壊を招き、映画は政府の権力乱用を批判します。監督のベネディクト・アンドリュースは、緊張感あるスリラー要素を加え、セバーグの強さと脆弱さを表現します。
クリステン・スチュワートの演技は高く評価され、セバーグの内面的な苦痛を体現します。映画は史実に基づき、セバーグの死をFBIの影響と関連付けます。テーマはプライバシー侵害と人権で、現代の監視社会を想起させます。96分の短さで、緊迫したストーリーを展開します。
製作背景として、脚本のジョー・シュラプネルとアンナ・ウォーターハウスはセバーグのFBIファイルを基にします。撮影はロサンゼルスで行われ、1960年代の雰囲気を再現します。音楽のジェド・カーゼルが緊張を高めます。本作は、セバーグの遺産を再評価し、彼女の勇気を讃えます。
キャスト
- クリステン・スチュワート:ジーン・セバーグ
- ジャック・オコンネル:ジャック・ソロモン
- アンソニー・マッキー:ハキム・ジャマル
- マーガレット・クアリー:リネット・ソロモン
- ザジー・ビーツ:ドロシー・ジャマル
- ヴィンス・ヴォーン:カール・コワルスキー
- イヴァン・アタル:ロマン・ゲイリー
- スティーブン・ルート:ウォルト・ブレックマン
- コルム・ミーニイ:フランク・エルロイ
- グランサム・コールマン:ボビー・シール
- コーネリアス・スミス・ジュニア:レイ・ロバートソン
- ジェイド・ペティジョン:ジェニー・コワルスキー
- セーダリアス・ブレイン:ルイス・ルイス
- ジェームズ・ジョーダン:ロイ・マドー
スタッフ
- 監督:ベネディクト・アンドリュース
- 脚本:ジョー・シュラプネル、アンナ・ウォーターハウス
- 製作:マリナ・アクトン、フレッド・バーガー、ケイト・ガーウッド、スティーブン・ホプキンス、ブライアン・カヴァナ=ジョーンズ、ブラッドリー・ピルツ、アラン・リッチソン
- 製作総指揮:ナイマ・アベド、エミリー・ジョルジュ、フィリップ・W・シャルツ、ジョー・シュラプネル、スティーブン・スペンス、ダン・スピロ、マーシャ・L・スウィントン、ピーター・トゥーシュ、アンナ・ウォーターハウス
- 撮影:レイチェル・モリソン
- 編集:パメラ・マーティン
- 音楽:ジェド・カーゼル
- 美術:ジャー・バーンズ
- 衣装デザイン:マイケル・ウィルキンソン
- メイクアップ部門ヘッド:ティナ・ロースラー・カーウィン
- ヘアスタイリスト:サラ・スタンプ(クリステン・スチュワート担当)
- 特殊効果コーディネーター:クリス・ブレンチェスキー
- 視覚効果スーパーバイザー:ジョシュア・ラクロス
- スタントコーディネーター:ロバート・アロンゾ
- キャスティング:ビル・ダンス



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