『星の消えた空に』（2021年）は、産後うつと不安障害に苦しむ絵本作家ジュリーの物語。過去のトラウマが蘇り、家族愛と葛藤を描く感動的なドラマ。アマンダ・セイフライド主演。
基本情報
- 邦題：星の消えた空に
- 原題：A Mouthful of Air
- 公開年：2021年
- 製作国：米国
- 上映時間：105分
- ジャンル：ドラマ
- 配給：ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
- レンタル・購入：Amazon
あらすじ
ジュリー・デイヴィスは、子供向けの絵本作家として成功を収め、優しい夫イーサンと愛らしい息子テディと共に、ニューヨークで一見幸福な生活を送っています。彼女の作品は、子供時代に誰もが抱く恐怖の克服をテーマにしており、子どもたちに希望を与えています。しかし、ジュリー自身は幼少期に経験した暗い秘密を抱え、それを乗り越えられずにいます。この秘密は、彼女の心に深い傷を残し、日常の中で不安や強迫観念として現れます。第1子の出産後、彼女は自殺未遂を経験し、精神科医の治療を受けながらも、抗うつ剤への依存や断薬による不安定な精神状態に苦しみます。第2子レイチェルの妊娠・出産をきっかけに、過去のトラウマがさらに強く蘇り、ジュリーは自分や家族を守るための葛藤に直面します。彼女の心の闇と愛する家族への深い愛情が交錯する中、物語は感動的かつ悲劇的な結末へと進みます。ジュリーの最後の絵本に込められたメッセージは、彼女の娘レイチェルに受け継がれ、希望の光を残します。
解説
『星の消えた空に』は、エイミー・コッペルマンが自身の同名小説を原作に、初監督として手掛けた作品です。本作は、産後うつや不安障害、心的外傷後ストレス障害（PTSD）といった精神的な課題を繊細に描き、現代社会におけるメンタルヘルスの重要性を訴えます。物語は、1995年頃のアメリカを舞台に、表面的には完璧に見える家庭が抱える深い葛藤を浮き彫りにします。ジュリーのトラウマは、父親からの虐待（性的虐待の可能性が示唆される）と、母親の無関心や共依存的な関係に起因すると推測されますが、具体的な描写は控えめで、観客に想像の余地を残しています。この曖昧さが、ジュリーの内面的な混乱を強調し、観る者に感情的な共感を呼び起こします。映画は、精神疾患に対する誤解や偏見を払拭し、治療や支援の必要性を訴えるとともに、家族愛や自己犠牲の複雑さを描いています。ラストシーンでは、ジュリーの娘レイチェルが母の遺した絵本を受け取り、家族の絆と希望が静かに示されます。映像美や音楽も、物語の情感を高める要素として効果的に機能しています。
女優の活躍
本作の主演を務めるアマンダ・セイフライドは、ジュリー・デイヴィス役として圧倒的な演技力を発揮しています。彼女は、ジュリーの繊細で壊れやすい精神状態を、表情や仕草を通じて見事に表現。穏やかな笑顔の裏に潜む不安や恐怖を、微妙な目の動きや声のトーンで伝えます。特に、子どもたちへの深い愛情と、自身を責める強迫観念が交錯するシーンでは、観客の心を強く打ちます。アマンダ・セイフライドは、過去の作品『ミーン・ガールズ』（2004年）や『マンマ・ミーア！』（2008年）で愛らしい魅力を発揮しましたが、本作では一転して深刻な役柄に挑戦。彼女のナチュラルで感情豊かな演技は、批評家からも高く評価され、Rotten Tomatoesで67%の支持率を得る一因となりました。
共演のジェニファー・カーペンターも、イーサンの姉ルーシー役として、家族を支えつつもジュリーに厳しい視線を向ける複雑なキャラクターを巧みに演じています。エイミー・アーヴィングは、ジュリーの母ボビー役で、過去の無関心と現在の過度な愛情をバランスよく表現し、物語に深みを加えています。
ブリット・ロバートソンは、成長した娘レイチェル役で、短い出番ながら母の遺産を受け継ぐ姿を感動的に演じました。
女優の衣装・化粧・髪型
アマンダ・セイフライド演じるジュリーの衣装は、1990年代のアメリカ郊外の家庭を反映した、シンプルかつ実用的なスタイルが特徴です。彼女の衣装は、カジュアルなニットセーター、柔らかい色調のブラウス、ゆったりとしたスカートやジーンズで構成され、母親としての温かさと親しみやすさを強調。淡いパステルカラーやアースカラーが多く、ジュリーの優しい性格を表現しつつ、彼女の内面の不安定さを暗示するややくすんだ色合いが選ばれています。化粧は非常にナチュラルで、薄いファンデーションと淡いリップカラーが中心。産後うつのシーンでは、目の下のクマや青白い肌が強調され、ジュリーの疲弊した精神状態を視覚的に表現しています。髪型は、普段は緩くウェーブのかかったロングヘアを自然に下ろし、家庭的な雰囲気を演出。一方、精神的に不安定な場面では、髪が乱れ、束ねることもなく、彼女の混乱した内面を象徴しています。
ジェニファー・カーペンターのルーシーは、より都会的でシャープな印象の衣装（タイトなトップスやダークカラーのパンツ）を着用し、ジュリーとの対比を際立たせます。
エイミー・アーヴィングのボビーは、年齢相応のエレガントなワンピースやカーディガンをまとい、過剰なアクセサリーで母親としての複雑な心理を表現。
全体的に、衣装やメイクは物語の感情的なトーンを補強し、キャラクターの心理を視覚的に伝える役割を果たしています。
キャスト
- ジュリー・デイヴィス：アマンダ・セイフライド
- イーサン・デイヴィス（ジュリーの夫）：フィン・ウィットロック
- ボビー・デイヴィス（ジュリーの母）：エイミー・アーヴィング
- ルーシー（イーサンの姉）：ジェニファー・カーペンター
- シルヴェスター医師（精神科医）：ポール・ジアマッティ
- レイチェル・デイヴィス（ジュリーの娘、成長後）：ブリット・ロバートソン
- ロン（ジュリーの父）：マイケル・ガストン
- ケヴィン（ルーシーの夫）：ダーレン・ゴールドスタイン
- サルツマン医師（産婦人科医）：ジョシュ・ハミルトン
- ドーナッツ：エリオット・サムナー
- パム：アリシア・ライナー
- 幼少期のジュリー：ケイト・エレファンテ
スタッフ
- 監督・脚本・原作：エイミー・コッペルマン
- 製作：エイミー・コッペルマン、マイク・ハロップ、アマンダ・サイフリッド、セリーヌ・ラトレイ、トルーディ・スタイラー
- 製作総指揮：ジェイソン・アームストロング、リンドン・バルドック、サンディープ・ダリワル、他
- 撮影：フランク・デマルコ
- 編集：キース・フラース
- 音楽：ジョン・ギュルトラー、ヤン・ミゼッレ
- 美術：フランキー・ディアーゴ
- 衣装：ハンナ・キッテル
- 音楽監修：ローレン・ミカス
- 配給：ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント（日本ではデジタル配信）
総括
『星の消えた空に』は、精神疾患と家族愛をテーマにした重厚なドラマであり、アマンダ・セイフライドの繊細な演技とエイミー・コッペルマンの丁寧な演出が光る作品です。衣装やメイク、髪型はキャラクターの心理を効果的に反映し、物語の情感を高めています。メンタルヘルスの問題に光を当て、観客に深い思索を促す本作は、家族や個人の内面に焦点を当てた映画として、心に残る一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い