アン・ヘッシュ(Anne Heche)は米国の女優、監督、脚本家。映画『ドニー・ダーコ』や『シックス・デイズ/セブン・ナイツ』で知られ、エミー賞受賞歴もある。波乱の人生と大胆な演技で注目された。
プロフィール
- 名前:アン・ヘッシュ(Anne Heche)
- 本名:Anne Celeste Heche
- 生年月日:1969年5月25日
- 没年月日:2022年8月11日(享年53歳)
- 出生地:アメリカ合衆国オハイオ州オーロラ
- 国籍:アメリカ合衆国
- 職業:女優
- 活動期間:1987年 – 2022年
- 配偶者:コリー・ラフーン(2001年 – 2009年)
生い立ち・教育
アン・ヘッシュは、1969年5月25日、オハイオ州オーロラで生まれた。5人兄弟の末っ子として育ち、父親ドナルド・ヘッシュは教会オルガニストや合唱指揮者、母親ナンシーは主婦だった。家族は経済的に不安定で、頻繁に引っ越しを繰り返した。ヘッシュの父親は後にエイズで亡くなり、彼女が13歳の時にその事実が明らかになった。この家庭環境は、ヘッシュの幼少期に深い影響を与えた。彼女は後に自伝『Call Me Crazy』で、父親からの虐待を告白し、複雑な家庭環境での葛藤を綴っている。
ヘッシュはニュージャージー州オーシャンシティで育ち、地元の高校に通ったが、演技への情熱を早くから示していた。12歳の頃、地元のディナーテアターで舞台に立ち、才能を見出された。シカゴのフランシス・W・パーカー・スクールに進学し、ここで演技の基礎を学んだ。この学校は進歩的な教育方針で知られ、ヘッシュの創造性を育む場となった。高校卒業後、彼女は大学には進まず、すぐに女優としてのキャリアを追求することを決意した。
経歴
ヘッシュのキャリアは、1987年にソープオペラ『Another World』で双子の姉妹役を演じたことから始まった。この役で1991年にデイタイム・エミー賞を受賞し、一躍注目を集めた。その後、1990年代中盤から映画界に進出し、『ドニー・ダーコ』(2001年)、『シックス・デイズ/セブン・ナイツ』(1998年)、『ボルケーノ』(1997年)などに出演。彼女の演技は、感情の機微を表現する力と大胆さで評価された。特に『ドニー・ダーコ』では、ジェイク・ギレンホール演じる主人公の母親役で印象的な演技を見せ、カルト的な人気を博した作品に貢献した。
1997年の『ラストサマー』では、メリッサ・”ミッシー”・イーガン役を演じてサスペンス映画での存在感を示し、同年の『ワグ・ザ・ドッグ』ではロバート・デ・ニーロやダスティン・ホフマンと共演し、批評家から高い評価を受けた。2000年代以降も『Birth』(2004年)や『Cedar Rapids』(2011年)など、多様なジャンルの映画に出演し、幅広い役柄をこなした。また、TV番組『Men in Trees』(2006-2008年)では主演を務め、コミカルな演技で新たなファンを獲得した。
ヘッシュは女優業だけでなく、監督や脚本家としても活動した。2001年にTV映画『On the Edge』を監督し、女性監督としての才能も発揮。舞台にも積極的に参加し、ブロードウェイの『Proof』(2002年)でトニー賞にノミネートされた。彼女のキャリアは、商業的成功と芸術的挑戦の両方を追求する姿勢で特徴づけられる。
私生活
ヘッシュの私生活は、メディアの注目を集めることが多かった。1997年から2000年まで、彼女はコメディアンのエレン・デジェネレスと交際し、当時としては珍しい公の同性愛関係として話題となった。この関係は、彼女のキャリアに影響を与えたとされ、一部の保守的な業界関係者から反発を受けた。2000年に破局後、ヘッシュは精神的な困難を経験し、奇行や公の場での混乱が報じられた。彼女は後に、これが幼少期のトラウマや精神的なストレスに起因すると説明している。
2001年にカメラマンのコールマン・ラフォン(Coley Laffoon)と結婚し、2002年に長男ホーマー(Homer)を出産したが、2007年に離婚。その後、俳優ジェームズ・タッパー(James Tupper)と交際し、2009年に次男アトラス(Atlas)を出産した。タッパーとは2018年まで長期的な関係を続けた。ヘッシュは私生活での挑戦を公に語り、精神健康問題や自己発見の旅について率直に話すことで、多くの人々に影響を与えた。
2022年8月5日、ヘッシュはロサンゼルスで交通事故を起こし、重度の脳損傷を負った。8月11日、生命維持装置の停止後、53歳で死去。彼女の死は、ファンや同僚に大きな衝撃を与え、多くの追悼が寄せられた。
出演作品
- Another World(1987-1991年、テレビシリーズ、ヴィッキー・ハドソン/マーリー・ラブ役)
- ボルケーノ(1997年、映画、エイミー・バーンズ博士役)
- ラストサマー(1997年、映画、メリッサ・イーガン役)
- ワグ・ザ・ドッグ(1997年、映画、ウィノナ・ライダー役)
- シックス・デイズ/セブン・ナイツ(1998年、映画、ロビン・モンロー役)
- サイコ(1998年、映画、マリオン・クレーン役)
- ドニー・ダーコ(2001年、映画、Mrs.ポメロイ役)
- Birth(2004年、映画、クララ役)
- Men in Trees(2006-2008年、テレビシリーズ、マリン・フリック役)
- Cedar Rapids(2011年、映画、ジョーン・オストロウスキー役)
- The Brave(2017年、テレビシリーズ、パトリシア・キャンベル役)
- Chicago P.D.(2018-2019年、テレビシリーズ、キャサリン・ブレナン役)
最後に
アン・ヘッシュは、その才能と個性でハリウッドに独自の足跡を残した。彼女の演技は、観客に深い感情を呼び起こし、複雑な役柄に命を吹き込んだ。私生活での試練にもかかわらず、彼女は常に前を向き、芸術を通じて自己表現を続けた。彼女の遺産は、映画、テレビ、舞台、そして彼女の率直な人生の物語を通じて、今も多くの人々に影響を与えている。
レビュー 作品の感想や女優への思い