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大河のうた

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「大河のうた」は、1956年に公開されたインドのドラマ映画。原題は「APARAJITO」で、サタジット・レイ監督によるアプー三部作の第2部に位置づけられます。

少年アプーが家族とともにベナレスに移住し、成長していく過程を描きます。家族の貧困、別離、そして母と子の絆がテーマです。伝統的なインドの生活様式と近代化の狭間で揺れる人間模様が、詩的な映像で表現されています。

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基本情報

  • 邦題:大河のうた
  • 原題:APARAJITO
  • 公開年:1956年
  • 製作国・地域:インド
  • 上映時間:110分
  • ジャンル:ドラマ

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女優の活躍

「大河のうた」で主な女優として活躍するのは、カルナ・バネルジーです。彼女はアプーの母親であるサルボジャヤ役を演じ、前作「大地のうた」から引き続きその役柄を深めています。カルナ・バネルジーの演技は、貧困に苦しむ母親の内面的な葛藤を繊細に表現しており、観客の心を強く揺さぶります。特に、家族の喪失と孤独感を体現するシーンでは、彼女の表情と仕草が圧倒的な説得力を発揮します。

カルナ・バネルジーは、ベンガル映画界で知られる女優ですが、本作でのパフォーマンスは国際的に高く評価されました。彼女の演技は、リアリズムを基調としたレイ監督のスタイルにぴったりと合い、物語の情感を豊かにしています。母親としての献身と苦悩を、言葉少なく伝える能力が際立っています。また、他の女優として、少女期のアプーの周囲に登場する脇役の女性たちもいますが、カルナの存在感が全体を支配しています。

彼女の活躍は、映画のテーマである家族の崩壊と再生を象徴的に支えています。カルナ・バネルジーは、役柄を通じてインドの女性の強さと脆弱さを体現し、観る者に深い感動を与えます。この役で彼女は、ベネチア国際映画祭の金獅子賞受賞に貢献したと言えます。全体として、女優の活躍は物語の核心を形成する重要な要素です。

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女優の衣装・化粧・髪型

カルナ・バネルジーの衣装は、伝統的なベンガル風のサリーが中心です。貧困層の母親を表すため、シンプルで質素な綿のサリーを着用しており、色調は淡い白や灰色が基調となっています。これにより、彼女のキャラクターの苦労が視覚的に強調されます。サリーの巻き方は日常的で、自然な皺や汚れがリアリティを加えています。

化粧については、ほとんど施されていません。自然な肌色を活かし、わずかなパウダーや軽いアイラインのみで、疲労や加齢を表現しています。このミニマリズムなアプローチは、レイ監督のネオリアリズムの影響を反映しており、女優の素顔の美しさを引き立てます。化粧の薄さは、物語の貧困と現実味を高めています。

髪型は、長い髪を後ろで束ねたシンプルなスタイルです。時には緩く結んだり、乱れ髪で表現されることがあり、母親の忙しさや悲しみを象徴します。アクセサリーは最小限で、伝統的なビンドゥー(額の赤い点)のみが施され、インドの文化的な要素をさりげなく取り入れています。この髪型は、女優の表情をより鮮明にし、感情のニュアンスを伝えやすくしています。

全体として、衣装・化粧・髪型は、時代背景の1920年代のベンガル地方を忠実に再現しています。これにより、女優の活躍がより本物らしく感じられ、観客の没入感を深めます。こうした細部への配慮が、本作の芸術性を高めています。

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あらすじ

物語は、1920年代のベナレス(現在のヴァーラーナシー)から始まります。アプー一家は、前作で故郷を離れ、この聖なる都市に移住してきました。父親のハリハルは、寺院で祈祷師として生計を立てていますが、家族は貧しい生活を強いられています。アプー(ピナキ・セン・グプタ)は、好奇心旺盛な少年として街を探索し、新しい環境に適応していきます。

しかし、家族に不幸が訪れます。ハリハルが病に倒れ、亡くなってしまいます。残された母親のサルボジャヤ(カルナ・バネルジー)とアプーは、さらなる苦難に直面します。サルボジャヤは、親戚の家で使用人として働き始め、アプーを養うために必死になります。アプーは学校に通い、学業に励みますが、母親の犠牲を痛感します。

アプーが成長し、青年(スマラン・ゴーシャル)になると、彼は奨学金を得てカルカッタの大学に進学します。母親をベナレスに残し、都会での生活を始めますが、母親の健康が悪化します。アプーは学業と母親の介護の間で葛藤し、ついに母親を失います。この別離を通じて、アプーは自立への道を歩み始めます。

物語の終盤、アプーはカルカッタでの生活を続け、未来への希望を抱きます。家族の絆と別れが、詩的に描かれています。このあらすじは、アプーの成長とインド社会の変容を象徴的に示しています。全体として、人生の無常と希望が交錯する内容です。

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解説

「大河のうた」は、サタジット・レイの代表作であり、アプー三部作の中心部です。この作品は、ビブティブション・バンデョーパードヤーイの小説「アパラジト」を基にしています。レイ監督は、インドの現実をネオリアリズム的手法で描き、国際的に注目を集めました。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した点が、その芸術性を証明しています。

テーマとしては、家族の崩壊と個人の成長が挙げられます。アプーの視点から、貧困、死別、教育の重要性が語られます。特に、母と子の関係が深く探求されており、伝統的なインドの家族観と近代化の衝突を象徴します。ガンジス川の風景が、人生の流れを比喩的に表現しています。

映像美も特筆すべきです。モノクロの画面に、ベナレスの街並みや川の情景が詩的に映し出されます。音楽はラヴィ・シャンカルが担当し、シタールの音色が情感を高めます。この作品は、インド映画の黄金期を代表し、後の監督たちに影響を与えました。

文化的文脈では、植民地後のインド社会を反映しています。アプーの教育への渇望は、独立後の希望を表します。一方、母親の犠牲は、女性の立場を問いかけます。全体として、人間性の普遍性を描き、観客に深い洞察を与えます。この解説を通じて、本作の多層的な魅力を理解していただけます。

さらに、レイの監督手法は、素人俳優の起用と自然光の活用が特徴です。これにより、ドキュメンタリーのようなリアリティが生まれます。三部作全体の文脈で、本作は転換点として重要です。視覚と感情の融合が、永遠の名作たる理由です。

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キャスト

  • ピナキ・セン・グプタ(少年期のアプー)
  • スマラン・ゴーシャル(青年期のアプー)
  • カルナ・バネルジー(サルボジャヤ:アプーの母親)
  • カヌ・バネルジー(ハリハル:アプーの父親)
  • ラムニ・チョードリー(ビマラ:親戚)
  • カリ・バネルジー(オノルノ:親戚)
  • ラニ・バーラ(ドゥルガの友人)
  • サティエンドラ・ナート・タゴール(教師)
  • スディ・バネルジー(近所の女性)
  • アジット・チャッテルジー(ニルマル)

スタッフ

  • 監督:サタジット・レイ
  • 脚本:サタジット・レイ
  • 原作:ビブティブション・バンデョーパードヤーイ
  • 撮影:スブラタ・ミットラ
  • 音楽:ラヴィ・シャンカル
  • 編集:ドゥル・ドゥッタ
  • 美術:バンシ・チャンドラグプタ
  • 製作:サタジット・レイ
  • 録音:ドゥルガダス・ミットラ
  • 助監督:スレン・チョードリー

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