韓国映画「青い塩」(2011年)は、イ・ヒョンスン監督によるラブストーリー。元ヤクザのドゥホン(ソン・ガンホ)と暗殺者の少女セビン(シン・セギョン)が料理教室で出会い、惹かれ合うが、運命に翻弄される。美しい塩田の映像と切ない愛が魅力。122分。
基本情報
- 邦題:青い塩
- 原題:푸른 소금
- 英題:BLUE SALT/Hindsight
- 公開年:2011年
- 製作国:韓国
- 上映時間:122分
- ジャンル:サスペンス、ドラマ
概要
「青い塩」(原題:푸른 소금)は、2011年に韓国で製作されたロマンティック・サスペンス映画です。監督は「イルマーレ」で知られるイ・ヒョンスンが務め、約11年ぶりの長編作品として注目を集めました。主演は韓国を代表する実力派俳優ソン・ガンホと、若手女優シン・セギョン。年齢や境遇の異なる二人が料理を通じて心を通わせる姿と、裏社会のしがらみに翻弄される悲恋を描きます。青を基調としたスタイリッシュな映像美と、塩田や海をモチーフにした象徴的なシーンが特徴で、韓国映画の抒情性とアクション要素が融合した作品です。公開は日本で2012年3月17日、配給はCJ Entertainment Japan。上映時間は122分です。
見どころ
ソン・ガンホにしては珍しいラブストーリーだが、実力派スターだけに恋する男の心の機微を巧みに表現。ハリウッドリメイクされた「イルマーレ」の監督による映像美も秀逸。
女優の活躍
本作のヒロイン、セビンを演じたシン・セギョンは、1990年7月29日生まれの若手女優で、この作品で大きな飛躍を遂げました。子役として1998年にデビューし、2009年のドラマ「善徳女王」や「明日に向かってハイキック」でブレイク。清純なイメージが強かった彼女ですが、「青い塩」では孤独で影のある暗殺者を演じ、新境地を開きました。セビンは元射撃選手という過去を持ち、冷酷な任務と内なる葛藤を抱える複雑なキャラクターです。シン・セギョンは、感情を抑えた表情や繊細な仕草でセビンの心理を表現。特に、ソン・ガンホ演じるドゥホンとの対話シーンでは、言葉以上に目や体の動きで心の揺れを伝え、観客を引き込みます。批評家からは、ソン・ガンホとの20歳以上の年齢差を越えたケミストリーが高く評価され、アクションシーンでのキレのある動きも話題に。本作以降、彼女は映画やドラマで多様な役柄に挑戦し、韓国エンタメ界の主要女優として地位を確立しました。
女優の衣装・化粧・髪型
シン・セギョンの衣装、化粧、髪型は、セビンのキャラクター性を強調し、物語のトーンに調和するよう計算されています。衣装は、都会的なソウルと自然豊かな釜山の塩田という対照的な舞台を反映。料理教室ではカジュアルなシャツやエプロン姿で親しみやすさを演出し、暗殺者としての場面では黒やダークグレーのタイトな服装でクールさを強調。終盤の塩田シーンでは、白いワンピースが登場し、純粋さと儚さを象徴します。化粧は、セビンの内面の葛藤を反映して控えめ。ナチュラルメイクで、薄いリップと軽いアイラインが中心ですが、任務中は鋭い目元を強調するダークなシャドウが加わり、冷徹な印象を強めます。髪型は、ショートカットに近いミディアムヘアで、動きやすさと現代的な雰囲気を両立。アクションシーンでは髪を束ね、日常シーンでは自然に下ろすことで、セビンの二面性を表現。全体的に、シン・セギョンのビジュアルは「青い塩」の青を基調とした映像美と調和し、観客に強い印象を与えました。
あらすじ
ソウルの闇組織の伝説的ボスだったドゥホン(ソン・ガンホ)は、ヤクザの世界から足を洗い、母の故郷・釜山でレストランを開く夢を抱きます。その第一歩として料理教室に通い始め、そこで少女セビン(シン・セギョン)と出会います。一見普通の女性に見えるセビンですが、実は闇組織の便利屋で、かつて優秀な射撃選手だった過去を持ち、ある事件をきっかけに裏社会に足を踏み入れた人物。彼女はドゥホンの動向を探るため組織から派遣され、料理教室に潜入していました。料理を通じて心を通わせ、距離を縮める二人。しかし、セビンにドゥホン暗殺の命令が下されます。ドゥホンは彼女の正体を知りながらも、セビンを裏社会から救おうと決意。ソウルと釜山の塩田を舞台に、二人の運命が交錯し、切ない結末へと向かいます。
解説
「青い塩」は、韓国映画特有の情感とサスペンスが融合した作品です。タイトルの「青い塩」は、塩田の青い風景や海のイメージを象徴し、純粋さと苦しみを表します。物語は、裏社会の非情さと人間的な温かさの対比を描き、ドゥホンとセビンの関係を通じて愛と救済のテーマを探求。イ・ヒョンスン監督の特徴である映像美は、青を基調とした色調で、ソウルの冷たい都市と釜山の塩田の自然を対比的に捉えます。特に、終盤の塩田シーンは、空と塩田の青が溶け合うビジュアルで、二人の感情の合一を象徴し、観客に強い印象を残します。
ソン・ガンホの演技は、元ヤクザの渋さと人間的な優しさを兼ね備え、セビンとの微妙な関係性を深く表現。シン・セギョンは、孤独な暗殺者の内面を繊細に演じ、観客に共感を呼びます。料理教室という設定は、日常と非日常の交差点として機能し、料理を作る行為が二人の心の交流を象徴。アクションシーンは控えめながら、緊張感ある演出で物語を引き締めます。批評では、ストーリーのベタさや結末の曖昧さを指摘する声もありますが、映像美と俳優の演技力で補い、韓国ノワールの新たな一面を示したと評価されています。
キャスト
- ドゥホン:ソン・ガンホ(『殺人の追憶』『パラサイト』)
- セビン:シン・セギョン(『善徳女王』『明日に向かってハイキック』)
- エック:チョン・ジョンミョン(『栄光のジェイン』)
- ギョンミン:イ・ジョンヒョク(『紳士の品格』)
- 殺し屋K:キム・ミンジュン(『花より男子』)
- カン女史:ユン・ヨジョン(『ミナリ』)
- ギチョル:キム・レハ(『優雅な世界』)
- ユク:オ・ダルス(『国際市場で逢いましょう』)
助演陣も豪華で、特にユン・ヨジョンの冷徹な組織幹部役や、チョン・ジョンミョンの情に厚い元部下役が物語に深みを加えます。料理教室の先生役にチャン・ヨンナム。デビュー直後のイ・ソムも
出演。
スタッフ
- 監督・脚本:イ・ヒョンスン(『イルマーレ』)
- 脚本協力:ユ・サンホン、シン・スウォン
- 撮影:キム・ビョンソ
- 照明:キム・ギョンマン
- 美術:イ・ハジュン
- 武術監督:チョン・ドゥホン
- 音楽:3rd COAST
イ・ヒョンスンの繊細な演出と、キム・ビョンソの撮影による青を基調とした映像が作品のトーンを決定。チョン・ドゥホンのアクション演出も効果的です。
総括
「青い塩」は、ソン・ガンホとシン・セギョンの演技力、イ・ヒョンスン監督の映像美が織りなす切ないラブストーリーです。料理教室や塩田といった舞台設定、青を基調としたビジュアルが物語の情感を高め、韓国映画の多面性を示します。シン・セギョンの新たな魅力と、衣装やメイクの細やかな演出も見どころ。愛と運命の間で揺れる二人の姿は、観客に深い余韻を残します。
レビュー 作品の感想や女優への思い